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周杜 side
timeleszのメンバーに加入して1ヶ月が経とうとする頃だった。
身体を起こすと分かる、この重だるさ。
ガンガンと激しく痛む頭。
偏頭痛だ。
ついにきてしまった。
いつかはくると思っていた。
俺は重度の偏頭痛持ちだ。
吐くのはもちろん、歩けない、立てない、動けない。
これには昔から悩まされていた。
かつてアイドル活動をしていたその頃から随分メンバーには迷惑をかけてきた。当時の活動グループではシェアハウスをしていたから、自分の体質のこともよく理解して寄り添ってくれていたけど、今は違う。もう、自分でなんとかするしかない。
自分はまだ、メンバーになったばかりだから、忙しくないほうだ。他のメンバーは、、グループ以外の仕事も沢山こなしている。傍から見ていても忙しさがわかるほどだ。それでも、いつも笑顔で、頼りになる。だから、こんなことで甘えて足を引っ張る訳にはいかない。
薬を飲めば、マシになる確率は高い。
正直、食欲はないが、なにかお腹にいれないと薬も飲めない。だけど、時間がない。体調が悪くて起きるのが遅れた上、動きが鈍くて、いつもの倍時間がかかってしまう。
遅刻なんて絶対に駄目だ。
近くにあったゼリーを流し込んで、鎮痛剤を飲む。こうしているうちに、送迎の時間がきて、荷物を持ち家を出た。
結局、少しだけマネージャーさんを待たせてしまった。メンバーは全員揃っていて、最後に到着したのは俺らしい。申し訳なさを感じながら、メンバーから「周杜!おはよう!」という挨拶と微笑みを受けると自然と笑顔になる。メンバーのおかげで頭の痛みも和らいだ気がする。
寺 「 周杜、寝癖ついてるよ 」
猪 「 え? 」
橋 「 ほんとだ。周杜にしては珍しいね 」
今日は、偏頭痛のせいで鏡を見る余裕なんてなかった。
菊 「 皆、今日も頑張ろうな 」
今日は、新曲の振り入れとダンスレッスンなのだ。最後まで持つだろうか。確かに、頭痛はさっきより治まった。今まで偏頭痛の日は悪化しないように寝込むことが多かったから、長時間激しく動いたことがない。でも、この世界に入ったら、そんな甘えはもう許されない。
俺には秘密がある。
それは、厄介な体質のことだ。
どれくらい踊っただろうか。
落ち着いたと思っていた頭痛だったが、案の定・・・激しく動く内に、無視できないほどの痛みが出現していた。顔色を悟られないようにしてきたマスクが息苦しくて酸素が足りない。そのせいで、頭痛が悪化しているとも知らず。
「 はい、一旦休憩 ~ !水分補給しっかりね 」
そんな振付師の言葉に一気に力を抜くと同時に崩れ落ちる身体。やばい、気づかれると思ったが、皆も同じらしく気づかれていない。
立ち上がった途端、息切れが凄い。
力を振り絞ってトイレに逃げた。
幸い、誰も入っていなかった。
個室に入った途端、倒れ込んだ。
猪 「 うっ…… 」
無理をしたのがダメだったのか、急激に吐き気が込み上げてきた。
吐いてしまったことで、体力を使い果たしてしまったらしい。1歩も動けない。それどころか、視界がチカチカして、だんだん真っ暗になっていく。
ダメだ。戻らなきゃ、いけないのに…