全身の痛みで目が覚めた俺は、ダルい腕を持ち上げて枕元に置いてあったスマホを開いた。時間は朝の8時。昨夜なんだかだるくてベッドに入ったのが24時過ぎだから7時間は寝られている。とはいえ、頭が重たくて節々が痛い……これは嫌な予感しかしなかった。 動かすのも辛い体を起こして、飲み物を取りに冷蔵庫へと向かう。体を支えるのもつらいので、壁伝いのような格好になってしまうが仕方なかった。なんとかたどり着いた冷蔵庫から炭酸水を取り出して1口、口に含んだ。喉を通る少しの刺激がいつもより強く感じて、むせそうになる。それでも何もないよりはマシなので、そのままペットボトルを片手にベッドに戻る。
ドサッ
ベッドまでいくと、足の力が抜け倒れ込むように寝転んだ。片手を額に乗せ、しばらく目を閉じると目の裏がジンジンと痛み、結構熱が高いであろうことを伝えてくる。
「体温計……どこだっけ…………あ、あった」
ベッドサイドの机の上を漁り、体温計を手に取ると脇の下に挟み込み、再び額に腕を乗せて目を瞑った。
ピピピピピピ
単調な機械音が鳴り、額から腕を取り体温計を取りだしてみると「38.5」。どうりで節々が痛いし、まぶたの裏が痛いほど暑いわけだ……と呟いて、俺は布団の中に体を詰め込むように移動した。正直少しの移動でも辛くて動きたくない。
「今日はなんも出来なさそうだな……寝るか……」
そのまま、俺は再びまぶたを閉じると深い深い眠りの中へと落ちていった。
それからどれくらいの時間が経っただろうか……スマホの呼出音が聞こえた気がして瞼を開くと、あたりはすっかり暗くなっていて、体の痛みもいくらか減っていた。そして、枕元でなり続けるスマホを手に取り表示された名前を見ると、俺の最愛の恋人でもあり唯一無二な相棒の名前だった。
「……はぁい」
「あ!やっとでた! どうしたん?撮影の時間やで?」
「あ……あぁ……そうか、今日はキルちゃんの撮影か」
「……お前、声どうした?」
「ん?」
撮影の約束を忘れていたことを思い出し、まだ軋む体を起こして起き上がろうと腕に力を入れた時、スマホの向こうから少し低めの声が聞こえた。なんのことかと思っていると、再びいつもよりワントーン低めの声で問いかけられる。
「やから……その声どうしたんや?カスカスやぞ?」
「ん?あー……そう……かな?」
「まさかお前……浮気か?」
「え?そっち?wwwww」
まさかの見当違いな質問に、俺は思わずら笑ってしまった。しかし、笑うとかわいた喉が刺激されてしまって、噎せるように咳き込んでしまう。慌てて枕元に置いてあったぬるくなった炭酸水を飲み込むと、スマホを持ち直した。
「俺が浮気なんてする訳ないじゃんw引きこもりだよ?」
「お前……自分のことわかっとらんな……」
「とりあえず、撮影だよね? キルちゃん怒ってる?」
「いや、ニトちゃんも遅れてるからまだ……」
「あーなら今からdiscordはいるわ……」
「あ……ちょっ……」
まだなにかをいいかけていたボビーを無視して、体を起こしてPCの前に座った。そしてdiscordを立ち上げると、遅れたことを枠主のキルちゃんに謝った。
「キルちゃんごめん」
「いいけどさ…ニキくん、体調悪いんじゃない?」
「え?」
「そうだよね!!俺も思った!!ニキニキ声やぁばい!」
「そんなやばい?」
「やばいよ! カスカスだし、なんか辛そう」
「熱とかあるんじゃないの?」
「熱……そういや、起きてから計ってないな」
「お前、熱あったん?なんで言わんかったんや?」
キルちゃんやりぃちょの心配そうな言葉で、勘違い気味だったボビーもやっとその可能性に考えが至ったようで、慌てたような言葉をかけられた。俺はまだ上手く働かない頭を緩く振って、体温計を脇に挟んだ。
ピピピピピピ
電子音の合図で体温計を抜き、現在の体温を確認すると「37.5」。随分下がっていてホッとした。
「あー下がってるよ。37.5だから」
「え?それで下がってるの?いくつあったのさ!」
「朝は38.5あったから、だいぶ楽」
「いやいや…ニキくん、今日はもうリスケにしよう」
「そうだよ!! また別日にしようよ」
「いやでも……」
「……ニキ。お前ちょぉ、おとなしくしとれよ?」
「「「え?」」」
そういうと、discordからボビーが落ちて、俺らの間には少しの沈黙の時間が流れた。しばらくしてから、キルちゃんが小さく息を吸って、静かに話し始めた。
「とりあえず、せんせーそっちいったみたいだし……」
「あぁ……やっぱそうだよねあれ……」
「また別日にしようや」
「そ……だね……。ごめん2人とも」
言葉を選ぶように話す、りぃちょとキルちゃんに謝罪の言葉を述べると、俺もdiscordから落ちた。少しの時間座ってただけなのに、腰やら頭やら少し痛くなってきてそのままベッドへと移動した。ボビーが来るとか言ってたけど、どうせそんなすぐには来ないだろうと高を括っていると、玄関の方で鍵の開く音がした。
「ニキ!!!」
「ん?ボビー?……はやかったねw」
「早かったねwちゃうわ! なんで言わんのや」
「 んー?寝てたら治るかなぁってww」
入ってきたボビーは、怒ってるのか泣きそうなのか分からない表情をしてて、俺は少し笑ってしまった。そしておもむろに額に乗せられた手が、何故か冷たくてその感覚が気持ちよくて目を閉じた。
「ホンマや……まだ熱いな」
「これでもだいぶ楽になったんだよ?」
「そうはいっても……お前なんか食ったか?」
「あーいや、ずっと寝てたから」
「そんなことやろうと思ったわ。ちょおまっとれ」
それだけ言うと、キッチンの方へ消えていった。あんなに汗だくになって走ってきてくれるほど心配してくれたのかと思うと、俺はなんだか嬉しくて口元が緩んでしまった。それになんだろう……熱のせいで弱気になっているのか、甘えたい気持ちが湧き上がってきていた。
「ニキ、お粥できたで。レトルトやけど……」
「ん、ありがと」
「自分で食べられるか?」
皿とスプーンを持って戻ってきたボビーは、すっかり眉毛が下がってしまっていて、心配なのが全身から溢れ出してきていた。その姿がなんだか愛おしくて、嬉しくて……俺はちょっとだけ悪戯心が湧き上がって、緩く頭を左右に振った。
「起きるの辛いけん、食べられんかも……」
「……そうか……ほら、手伝ったるから」
背中に回した手で俺を支えながら横に座ったボビーは、スプーンに一口分乗せて少し冷ましてから俺の口元へと持ってきてくれた。
「ほら……あーん」
「あーん……おいし…」
「そらよかった…ほら、飲み込んだらもう一口、あーん」
「あーん」
それを何度か繰り返していると、少しだけ口の端から溢れてしまった。すぐに拭こうと思ったが、一瞬考えたあと、ボビーの方を少し誘うような目で見つめて、舌先で舐めとった。その瞬間、ボビーの目が見開き、喉仏が大きく嚥下したのを見逃さなかった。
「ホビー……もっと……あーん」
「っ……ニキ」
調子に乗った俺は、少しだけ身を乗り出して甘えるような声を出した。それに、ボビーはビクッと身体を震わせて反応し、苦しそうな表情になった。それはそうだろう、ただ口を開けているのではなく、誘うように少しだけ舌を出しているし、熱のせいで瞳もすっかり潤んでしまっている。俺がボビーの立場でも、グッと湧き上がる情欲と葛藤していただろう。
「ねぇ……くれない……の?」
「お前っ……分かっててやっとるやろ……」
「ふふふ……なにが?」
さらに誘うように言うと、ボビーは苦しそうな顔で俺の肩に手を置いてきた。その声はもうすっかり興奮で掠れていて、下の方もズボンを押し上げ始めているのにも気づいていた。
「ボビー……ほら……あーん」
「っ……んっ……チュクッチュクチュククチュクチュレロレロ」
「んぁっ……ぁん」
緩く開けていた唇をいきなり強く吸われて、一瞬息をするのを忘れた。俺の舌よりも熱く火照った舌で、俺のソレを吸いながら絡ませられ、呼吸すらも吸い上げられそうなほど貪られた。ゆっくりと歯列をなぞられ、上顎の敏感な所をチロチロと刺激され、俺は小さく喘ぎながらその甘くて苦しい蹂躙を受け入れていた。
「はぁ……ニキ……」
「ぁっ……ほびっ……ねぇ、ココ……苦しい」
「っ……お前は……」
名残惜しげに離された濡れた唇を見つめながら、ボビーの手を俺自身へと導くと、ボビーはより苦しそうに眉をひそめて呟いた。きっと俺の身体を心配してくれてるんだろうけれど、それでも疼き出した俺の身体が収まることを知らず、どんどん溢れ出して来る。きっと今、すごく物欲しそうな顔になってしまっているだろう…。それを見ていたボビーは、小さくため息をついて俺の額に優しい口付けを落とした。
「そうやな…こんなになってたら痛いわな……」
「んっ……触って欲し……」
「ふぅ……抜いたる……」
そう言って俺のズボンを下ろしたボビーは、すっかり限界まで立ち上がってしまっていた俺自身を口に含み、舌で弄び始めた。
チュプッ……グプッジュプジュプジュプ……ジュッ
「んっぁぁあぁ……ぁん……んんん」
痺れるような快感に、目の前がチカチカとしながらボビーの頭を掴んで緩く腰を振った。それに、ボビーは小さく笑いながら敏感なところを刺激するのを続けていた。
「ふっ……ひもちよさそうやな……」
「んぁっ……しゃべんなっ……ぁん」
ヂュグッ……ヂュプヂュプヂュプ……ジュッジュッ……
一際大きく吸われ、大きな快感の波に襲われた俺は、つま先までピンッと強ばらせながらボビーの頭を抱え込み、全身を震わせた。ただでさえ少し溜まっていたから、思いっきり大量の白濁が勢いよくボビーの口の中へと吐き出された。
「んっぁっ……ァァァァァァァァ」
「んっ……チュゥチュゥ…………ゴクンッ」
「ぁっ……ぁっ……ぁぁ……」
ボビーが飲み込んでいくのを感じながら、俺はあまりの快感に意識を手放した。意識が遠のく瞬間、優しく微笑んだボビーが俺の頭を撫でてくれていたような気がしたが、ハッキリとはしなかった。
翌朝俺が目を覚ますと、俺のPCの前にはボビーが座っていてなにやら作業をしていた。ほぼ1日寝ていたからか、俺の体はすっかり良くなっていてだいぶ動きやすくなっていた。
「ボビー?ずっといてくれたん?」
「お、起きたんか? 体はどうや?」
「だいぶ楽。そんなことより、もしかして寝てない?」
「そんなことよりってww 俺は心配してたんやぞ?」
作業の手を止め、俺の横に座ったボビーは額に手を当てながら困ったような笑顔を向けてきた。その優しい顔が、なぜだか直視出来なくて俺は思わず俯いた。
そんな俺に小さく笑いながら頭を撫でてきたボビーは、そっと俺の顔をのぞき込みながら意地悪な顔をしてきた。
「ニキ?昨日のこと……覚えとるか?」
「昨日のこと?」
「せや、ものすごい甘えてきて我慢するん大変やったわ」
「ぁっ……」
そう言われて昨日のことを鮮明に思い出す。冷静になって思い出すとものすごく恥ずかしい。ものすごい甘えたし、強請ったりもした。普段なら言わないような事を言った気もする……。真っ赤になって俯く俺に、追い打ちをかけるようにボビーが囁く。
「もう大丈夫なら、我慢しやんくてええよな?」
「え?」
「覚悟せぇよ?今日は泣いてもやめてやらんからな」
「え?まっ……」
言うが早いか俺はベッドへと押し倒され、深い深いキスをされた。昨日の俺が悪いとはいえ、今日のボビーは本当に泣いても喚いても満足するまでは解放してくれ無さそうだ。俺は目を閉じながら、自分の腰へと別れを告げた……。
コメント
6件
( ˇωˇ )(尊死)
せんせーが走ってニキニキの家に行くのめっちゃいい! 今回も神作ありがとう!!
ニキさんが熱出ても撮影休もうとしないの解釈一致すぎて……😭💕 せんせーが我慢できなくなっちゃってキスしちゃったり口でしちゃうのとかもう本当に好きでした…🤦♀️💕 ご馳走様でした🥰