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第12話 届いた手紙
「……あの日のことを、本人たちに伝える時が来ました」
画面に表示された一文。
静佳の母親は、しばらく動かなかった。
「……まだ、早いと思っていたのに」
湊音の母親も、静かに息を吐く。
「私もです」
「でも……」
「ええ」
二人は事務所の中を見る。
そこには、いつものように騒いでいるみんながいた。
「湊音! それ俺の!」
「えー! いいじゃん!」
「ダメだって!」
「静佳ちゃん、こっち!」
「待って!」
笑い声が響いている。
「……あの子たちも、もう12歳です」
「はい」
「そろそろ、知る権利があります」
「……分かっています」
二人は頷いた。
けれど――
その話をするには、あまりにも大きな秘密があった。
***
「ねえ、今日の企画なに?」
ころんがスタッフに尋ねる。
「今日は軽めですよ」
「ほんと!?」
「……たぶん」
「たぶんって何!?」
みんなが笑う。
今日は屋内でのミニゲーム大会。
チームごとに分かれて、ボールを使った競技をするらしい。
「静佳、出る?」
湊音が聞く。
「もちろん」
「じゃあ俺も!」
「湊音は転ばないでね」
「転ばない!」
「昨日転んでたじゃん」
「昨日は昨日!」
「……信用ない」
「ひどい!」
そんな二人を見て、心音が笑う。
「仲良いなぁ」
「幼馴染だから!」
二人の声がまた重なった。
「ほら」
心音が笑う。
「息ぴったり」
「……」
静佳が少し照れる。
「別に普通」
「普通ねぇ?」
さとみがニヤニヤする。
「何?」
「いや、微笑ましいなって」
「……やめて」
静佳は顔を赤くした。
***
ゲームが始まった。
最初はドッジボール。
「静佳、後ろ!」
「分かってる!」
ボールが飛んでくる。
静佳は軽く身をひねって避ける。
「うわっ!」
そのまま落ちたボールを拾い――
「それっ!」
勢いよく投げ返す。
「速っ!!」
ボールは男子の間をすり抜ける。
「え、ちょっと待って!?」
「避けて!」
「無理!!」
「アウト!」
「うそだろ!?」
大歓声。
「静佳ちゃん強すぎ!」
「女子とか関係ないじゃん!」
「そもそも静佳、運動能力がバグってる!」
静佳は少し嬉しそうに笑った。
「……まだいけるよ」
「おお!」
湊音も笑う。
「静佳、頑張れ!」
「湊音もね!」
「任せて!」
二人はハイタッチした。
***
ところが。
次の瞬間。
ボールが別方向から飛んできた。
「静佳!」
湊音が叫ぶ。
「……!」
静佳は反応する。
――けれど。
避けるには少し遅い。
「危ない!」
湊音が飛び込んだ。
ボールは湊音の肩に当たる。
「……っ!」
「湊音!」
静佳が駆け寄る。
「大丈夫!?」
「大丈夫!」
「本当に?」
「うん!」
静佳はじっと湊音を見る。
「……痛いでしょ」
「ちょっとだけ」
「……」
静佳は眉を寄せる。
「私のせいじゃん」
「違うよ」
「でも――」
「静佳」
湊音が笑う。
「昔も同じこと言ってた」
「……!」
静佳が固まる。
「あの日も、静佳が自分のせいだって泣いてた」
「……」
「だから今度は、泣かないで」
静佳はしばらく黙って。
「……泣かない」
「うん」
「でも心配はする」
「それはいいよ」
二人が笑う。
***
その様子を見ていた心音。
そして、おさでい。
「……まただな」
おさでいが呟く。
「うん」
心音も頷く。
「二人とも、本当に昔から変わらない」
その時。
「心音」
後ろから声がした。
二人の母親だった。
「少し、話があります」
「……?」
心音が振り返る。
「湊音と静佳のことです」
「……!」
おさでいも表情を変えた。
「何かあったんですか?」
「今夜、二人に話そうと思っています」
「……何を?」
母親は少し迷った。
そして。
「二人がまだ知らない、あの日のことを」
***
夜。
仕事が終わった事務所。
残っているのは、数人だけだった。
「湊音、静佳」
「ん?」
「なに?」
「お母さんたちが、話したいことがあるって」
二人は顔を見合わせる。
「……俺たち?」
「うん」
「何だろう」
湊音は首を傾げる。
静佳も少し不安そうだった。
「……怖い話じゃないよね?」
「大丈夫」
心音が言う。
「俺も一緒にいるから」
「私も」
おさでいも隣に立つ。
二人の母親が向かいに座る。
「……まず」
静佳の母親が口を開く。
「あなたたちが幼い頃、公園で事故に遭ったことは覚えている?」
「うん」
湊音が頷く。
「俺が静佳を助けたやつ?」
「そう」
「でも……」
湊音の母親が続ける。
「あの日には、あなたたちが知らないことがもう一つあるの」
「……?」
静佳が首を傾げる。
「何?」
母親は一枚の古い写真を取り出した。
「これを見て」
写真には――
幼い湊音。
幼い静佳。
そして。
二人の後ろに、もう一人の子どもが写っていた。
「……え?」
湊音が目を見開く。
「誰?」
静佳も写真を覗き込む。
「……知らない子」
「そうでしょうね」
母親が頷く。
「でも、この子は――」
その瞬間。
事務所のドアが開いた。
「……あれ?」
「……?」
全員が振り返る。
そこに立っていたのは――
心音だった。
「どうしたの?」
「心音……」
静佳の母親が呟く。
「……いや」
心音は写真を見る。
そして。
「……え?」
表情が変わった。
「その写真……」
「知ってるの?」
静佳が聞く。
心音は答えない。
ただ、写真をじっと見つめている。
そして――
「……この子」
震える声で言った。
「俺、知ってる」
「「え……?」」
湊音と静佳が同時に声を漏らす。
心音は写真を指差した。
「この子は――」
そこで言葉が止まる。
おさでいも写真を見る。
「……待て」
「おさでい?」
「この子……」
おさでいの顔から、血の気が引いていく。
「俺も……知ってる」
「え!?」
全員が驚く。
そして。
二人の母親が静かに告げた。
「その子は――」
「あなたたち二人と、昔から関わりがあった子です」
湊音と静佳は顔を見合わせる。
「……誰なの?」
静佳が聞く。
母親は、ゆっくり写真を裏返した。
そこには――
一人の名前が書かれていた。
『――――』
「……っ」
湊音が息を呑む。
静佳も目を見開く。
そして。
その名前を見た心音とおさでいは――
同時に、言葉を失った。
「……嘘だろ」
「……どうして、今……?」
12年前の記憶。
二人だけの約束。
そして、誰も知らなかった第三の存在。
その秘密が――
ついに、動き始めた。
コメント
1件
うわ、この第12話、めっちゃ気になる終わり方ですね…!😳 最初のドッジボールで湊音が静佳をかばうシーン、あの「昔も同じこと言ってた」って台詞にじんわりきました。二人の間にある長い時間と信頼が詰まってる感じがして。で、最後の写真の子…心音もおさでいも知ってるって、どういうこと!? 12年前の約束に第三の存在…もう続きが気になって仕方ないです。丁寧に張られた伏線に、次の話が待ち遠しいです🤍