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学校に向かう道中、優奈は昨夜のオカルト番組の予言がずっと頭を巡っていた。彼女の中にある不安か、それとも恐怖なのか。
その時、優奈の肩に手が置かれた。彼女は目を見開き肩を上げた。
「優奈!おっはー!」
その声は優奈にとって聞き慣れた友人の声だった。優奈が振り向くとそこには、微笑みながら優奈の顔を見る幼なじみで親友の真由がいた。真由は優奈の顔を見て言う。
「どうしたの?優奈…いつもより元気ないけど…」
「あっ…ごめん。少し考え事をしてた…」
真由は首をかしげ、優奈を心配するかのように彼女に寄り添った。
「ほんとに大丈夫?なにかあったんじゃないの?」
「実は…そうなの。昨日見たオカルト番組の占いがさ…」
「あっ!もしかして暴くぜ!真実?」
「そう」
真由は微笑み彼女と歩きながら話を続けた。
「南海トラフがいつ来るかの占いでしょ?確か近日中か今日って占い師の人が言ってたよね?」
優奈は真由の言葉に頷く。
「大丈夫よ!優奈!あんなのただのエンタメとして見なきゃ!本気にしないほうがいいよ。」
「そ、そうだよね…!ありがとう真由。私考えすぎてたかも。」
真由は優奈の言葉に笑みを作った。2人はゆっくり校門をくぐる。2人が生徒玄関に向かうとそこには見慣れた顔の男子2人がいた。
「おっ!蓮と武尊じゃん!おはよ!」
真由は2人の男子の名前を呼びながら手を振る。その2人の男子は優奈のクラスメイトの蓮と武尊だった。
「おっ!!真由!おはよ!」
武尊は微笑み2人に向かって笑みを作った。蓮も2人に向かって軽く手を振った。
「2人とも何話してたの?」
真由が武尊に尋ねた。武尊は数回頷き真由と優奈に蓮と話していた内容を言う。
「ほらー、昨夜のあの胡散臭いオカルト番組の予言だよ!あのヤラセ占い師南海トラフ地震が今日来るって!」
蓮は腕を組み武尊に続いて言う。
「2人とも、今朝のニュースみたか?」
「えっと…フィリピンプレートを震源とする地震…?」
優奈は首をかしげ、言う。蓮はその言葉に頷き、腕を組む。
「あの予言の前兆とも言えないが、フィリピンプレートは南海トラフが通っているプレートだ。だから…武尊ともしかしたら予言はヤラセじゃなかったんじゃないかって話してたんだよ。」
蓮の言葉に、真由と優奈は目を見開く。武尊は首の裏に手を置き、苦笑した。
「き、気にすんなって!2人とも!俺らの考えだから!」
武尊は2人に言う。真由はため息をつき、優奈は武尊に向かって頷いた。4人は生徒玄関から校内に入り教室に向かった。4人が教室に入るとクラスメイトらの話題は予言で持ちきりだった。優奈は窓際の自分の席に向かいカバンを机の横にかけ席に座る。真由も優奈の前の席に荷物を置いていた。優奈は頬杖をつき窓から外を見ていた。窓ガラスに彼女の顔が鏡のように映る。その時
バンっ!
「キャッ!」
優奈は驚き椅子から落ちそうになった。窓ガラスにガラスがぶつかってきたのだ。それと同時に街中にいた鳥たちが一斉に鳴き声を上げながら飛び立っていた。
「おいおいなんだよこれ…空一面鳥ばっかで気持ちわりぃ…」
近くにいた武尊が眉を下げ言う。蓮は外の光景に目を見開き、急いでクラスの皆に向かって叫んだ。
「地震が来るぞ!!早く机の下に!!」
蓮の言葉にみんな焦りを見せていた。予言の気にしすぎだと蓮の言葉を無視するクラスメイトもいた。教室の時計の秒針が9時ぴったりを差したその時、
『プーップーッ!地震です。プーップーッ地震です。』
クラスメイト全員のスマホが鳴り響く。そして、
ドンッ!!!
教室が勢いよく縦に揺れた。教室にあった全ての机、椅子、ロッカー、本棚が空中に飛ばされ、クラスメイトたちも宙に飛ばされた。教室の窓ガラスは一瞬にして粉々に飛び散り、教室中から悲鳴が聞こえる。激しい縦揺れが数回繰り返され、やがてゆっくり収まっていく。
「うぅ……、痛い……」
優奈はゆっくり体を起こす。彼女は周りを見渡した。教室中はめちゃくちゃになり、いたるところから悲鳴が聞こえてくる。優奈は近くに倒れていた真由の肩を揺さぶる。
「真由!真由!!」
「うぅ……ゆ、優奈……?なにが、起こったの…?」
優奈は真由の体を支えながらゆっくり起き上がる。
「大丈夫か!真由!優奈!」
蓮が2人のところに向かって来る。
「えぇ…ねぇ、なにが起こったの…?」
「激しい縦揺れが起こった。おそらく地震だ。とても大きな…。」
俯きながら蓮は2人に言う。優奈はスマホを取り出し、画面をつける。そこには速報通知が何件も入ってきていた。優奈はトップにあった通知を見て顔を青ざめた。
「高知県南部を震源とする震度7の地震…」
「えっ…震度7……?」
隣にいた真由も同様に顔を青ざめた。蓮は一層目を細め、状況を理解しようとしていた。
「もしかして…あの予言は……」
真由が呟く。
「まだ分からない。今はそんな事を考えるより安全確保だ。」
蓮は2人に言う。その時、蓮の肩に手が置かれた。蓮が振り向くとそこには汗を掻く武尊が立っていた。
「小雪が倒れたロッカーの下敷きになってんだよ!手を貸してくれ!!」
「分かった。すぐ行く」
武尊は蓮と優奈、真由を連れ倒れたロッカーまで向かう。そこには掃除用具入れが倒れており、ロッカーと床の間には下敷きになったクラスメイトの小春がいた。
「武尊と俺は右を!優奈と真由は左を頼む!!」
蓮は3人を振り分けた。
「行くぞ!せーのっ!!」
4人はロッカーを持ち上げ、壁に立てかける。蓮は小春に歩み寄り傷の状態を確認した。腕から多少出血しているだけで大きな怪我はしていなかった。蓮は自身のハンカチを小春の出血している腕に押し当て止血をしていた。
「大丈夫か?小雪」
「蓮…くん。ごめんね…。ありがとう。真由や、優奈…武尊くんも」
その時、また床が揺れた。床に散らばるガラス片が音を立て、ヒビの入った壁の表面がはがれ落ちる。
「余震なのか…。」
武尊が呟く。しかし、ガラス片の音ともう一つ、何かが迫ってくる音が聞こえてきた。それは何かを押し壊し、流すような音だ。蓮が割れた窓縁から外を見た時、彼の目に飛び込んできたのは、建物を飲み込み、こちらに迫ってくる津波だった。
「津波だ!!ここの階は飲み込まれる!早く高い場所に!!」
蓮がそう言うと4人は廊下に出た。廊下には逃げ惑う生徒で埋め尽くされ、倒壊した壁から数人の生徒が落下していく。
「どうすんだよ蓮!!」
「落ち着け武尊!こっちだ!!みんなもこっちだ!!」
蓮は周囲の生徒らにも階段に行くよう道を示した。しかしその時、
ガシャーーーーーン!!!!!
津波が校舎に衝突し、窓から水が入ってきた。4人は階段を駆け上りながら揺れに耐えていた。優奈の後ろからは悲鳴が聞こえ、直ぐ側に水が迫っていた。
優奈が揺れに足を崩しそうになった時、優奈の手がつかまれた。優奈が顔を上げるとそこには彼女の手をつかむ武尊がいた。
「優奈!大丈夫か!水が来てるからか早く行こう!!」
武尊は彼女の手を引き、蓮の背後を追うように階段を駆け上がった。
第二章 終