TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

コンコンコン。コンコンコン。ドアのノックの音で目を覚ます。

「おぉ〜。起きた起きた。おはよう」

アファノホがドアに寄りかかり立っていた。

「まさか星縁陣(せえじ)がジャイバーズと同じとはね。ま、とりま起きて。リビングへ。お昼だから」

アファノホはジェイバーズを起こしに行った。窓がないので窓から陽の光は入らないが

アファノホが扉を開けたことによって、廊下から差し込む光でわずかに部屋が見える。

見慣れない部屋、綺麗な天上に綺麗な照明。部屋の隅には間接照明。大きなテレビに各種ゲーム機。


あぁ。そっか。みんなの家に泊まったんだ


と思い起き上がる。手をついたベッドのマットレスはふかふかで

かけている布団もふかふか、ベッドのサイズも

星縁陣の家に入れたらそれだけで部屋が狭く見えてしまうほどの大きさ。


なるほど。このベッドにやられて、気持ち良くて寝過ぎたんだな


と思いながら立ち上がる。背筋を伸ばす。バッグから歯ブラシと歯磨き粉を持って洗面所へ行った。

歯を磨いていると綺麗なピンク髪に寝癖をつけ

ダボダボの服にダボダボのパンツで裾を引きずりながら洗面所へ来たジェイバーズ。

「あぁ〜。せえちゃぁ〜ん。おはよぉ〜」

ダボダボの袖の右手を挙げる。すると袖が落ちていき、白くて綺麗なジェイバーズの手が現れた。

その手で自分のピンク色の歯ブラシを持って、ポシェットモンスターというアニメ、ゲームに出てくる

モンスターポールというポール状のものをモチーフにした歯磨き粉入れをプッシュし

歯ブラシに歯磨き粉を出すジェイバーズ。

シャカシャカしているとジェイバーズのほうからいちごの香りが漂ってきた。

星縁陣(せえじ)は懐かしい気持ちになった。


あぁ〜。小学生のときに使ってた歯磨き粉の匂いだ


と思うのと同時に


え。ジェイバーズくん、いちご味の歯磨き粉使ってんの?


と歯磨き粉のボトルを覗き込む。

「しぇえやんおいいおあいのふぁみあいおうあうぅ〜?(訳:せえちゃんもいちご味の歯磨き粉使うぅ〜?)」

それを聞き、なんとなく理解した星縁陣は歯ブラシを口から出し

口の中の泡などがこぼれないように少し上を向いて

「いあ、あいおーゔ。ひょっおいえああえ。(訳:いや、だいじょーぶ。ちょっと見てただけ)」

と返した。するとジャイバーズはニコーっと笑う。その可愛い笑顔に


可愛いな


と少しドキッっとする星縁陣。2人で口をゆすいで、顔を洗いリビングへ。

「おぉ。来た来た」

リビングのダイニングテーブルにはすでにジェイバーズ以外の天使と悪魔3人が座っていた。

「ごめんごめん」

「遅れたぁ〜」

「いいのだよぉ〜ジェイバーズたん〜」

相変わらずジェイバーズの可愛さにメロメロなルボ。

ダイニングテーブルの上には綺麗に焼かれたトーストが。しかし星縁陣の食パンだけ焼かれていない。

「あ、星縁陣のパン焼いてないのは、どのくらいが好みかわかんなかったから」

よく見ればそれぞれ焼き加減が違う。

「星縁陣はどのくらいが理想?」

と聞くアファノホに

「うぅ〜ん。理想か。考えたことないけど

食べたいと思うのは焦げる手間?香ばしさマックスのを食べてみたいんだよね」

「やったことないの?」

「いや、チャレンジしてみたことはあると思うんだけど、1回?かな?成功に近いの。

それも成功!とまでじゃなくて。あとはだいたい黒焦げになって

包丁でガリガリ焦げを削って食べてた気がするんだよね」

「なるほどねぇ〜?じゃあ、うちのアファノホシェフに任せなさい?」

「貸して」

というアファノホにお皿ごと食パンを渡す。アファノホは自分の目の前に食パンをお皿ごと置き

右手で音を出さない指パッチンをして人差し指の先に炎を出す。

「おぉ」

何度見ても、その魔法のような光景に感動し、驚く星縁陣(せえじ)。

その後アファノホは全指をくっつけるように寄せる。

すると今までゆらゆら揺れる炎だったものが、バーナーのように直線状で強い炎の柱となった。

「おぉ」

またも驚く星縁陣。そのバーナーのような炎の柱を食パンにあてる。

すると見る見るうちに食パンの表面が焼けていく。しばらくしたら

「ほい。こんなもんで、いかかでしょう」

アファノホが寄せていた指を開く。すると5本の指先すべてに揺らめく炎が宿っていた。

その炎を消すように右手を軽く振りながら、左手で食パンの乗ったお皿を星縁陣に差し出した。

「ありがとう」

手に気を取られていて気づかなかったが

お皿に乗った食パンは焦げるギリギリ手間、まさに星縁陣が思い描いていた通りの焼き加減。

「おぉ!これこれ!」

「ね?うちのシェフはすごいんだから。炎の魔術師よ」

「そのファンタジーもののキャラクターの二つ名みたいなのやめろ」

「でも事実じゃん」

「…まあな」

「食べよぉ〜」

というジェイバーズの声で

「んじゃ、いただきます」

「「いただきまーす!!」」

と全員で昼ご飯を食べた。

「んん!完璧」

パンのザクザク感、香ばしさ、すべてが星縁陣の思い描いた通りだった。

「料理の悪魔ぁ〜」

「いや、合ってるけど。言い方やめろ」

「食器洗いの天使ぃ〜」

「やめてください」

「僕恋愛の天使ぃ〜!」

「うんん〜ジェイバーズたんは恋のキューピッドだおぉ〜。可愛いのぉ〜。あ、ジャムついてる」

まるでカップルのように口についたいちごジャムをティッシュで拭いてあげるルボ。

「お。オレトラ(オレとトランプしよ?の略称)じゃん。あんまテレビで取り上げないでほしいわぁ〜」

「オレトラじゃん〜。いいよねぇ〜。オレもやってる」

「ジョーカー攻略できた?」

「できたぁ〜。一枚絵全部コンプ」

「うちよりゲーマーじゃね?」

「な訳」

と笑いながら話すゴージェとビガードン。そんな天使と悪魔が一堂に会し、天使と悪魔が仲良さそうに

和気藹々と話している不思議な食卓にも慣れつつあった星縁陣。

しかし、よくよく考えれば、エルフのように尖った耳に、悪魔に至っては黒目が縦長

人とかけ離れた可愛さ、美しさ、スタイルが良く容姿も良い。その状況でもテレビを見ながら


へぇ〜。オレトラ。乙女ゲー(乙女ゲームの略称)か


と呑気に思う星縁陣。

「星縁陣ー。乙女ゲーってやる?」

「やったことないなぁ〜」

「おもしろいーよー?MyPipeでもできるし、オレも持ってるんで、やってみーる?」

「タメ語ぎこちなっ」

「うるせぇ」

「ちょっと触ってみようかな。いい?」

「いいっすよ!あ」

「敬語ー」

「うるさ」

とめちゃくちゃ普通に楽しみながら朝ご飯を食べた。またミウォールが食器を洗いにキッチンに立って

ビガードンが乙女ゲームをさせてくれるということで、リビングのテレビで乙女ゲームをしてみることにした。

「「オレと」「「トランプ」」「しよ?」」

とテレビからは言葉毎に区切って、声優さんであろう人たちの良い声でタイトルが読み上げられた。

「あ。そっか。メンズ攻略なのか」

「乙女ゲーだからねぇ〜」

「ちなみにハーレムエンドはないよ」

「ないんだ?ギャルゲーとか乙女ゲーってハーレムエンドあるイメージだったけど」

「まあ、ある作品も多いけど、これはないっす」

「名前なににするー?」

「星縁陣だからぁ〜」

「「せえこ?」」

アファノホとミウォールがハモる。

「じゃあ、せえこで」

ヒロイン、もとい自分のキャラクターの名前を入れる。

ピロン!ピロンピロンピロン!文字を選択していざゲームスタート。

乙女ゲームをし続け、傍らにはビガードンとアファノホとルボ。ダイニングテーブルにはミウォール。

お昼ご飯を食べ終わってすぐにジェイバーズが眠ってしまったため

アファノホがジェイバーズの部屋に寝かせに行った。ゴージェも途中まで一緒にリビングにいたが

ゲーム実況を撮るということで部屋に戻ってゲーム実況を撮って、動画の編集をしていた。

気づけばベランダに出るための大きなスライドドアから差し込む陽の光が

オレンジ色になっていたので、星縁陣はスマホを出して画面をつける。時間は18時27分。

「マジか」

と呟き、コントローラーを置く。

「どしたん?」

「バイトバイト」

「あぁ」

「コンビニでバイトしてるんだっけ?」

「そうそう。すぐそこの」

バイト先は天使や悪魔の住むマンションのすぐ目の前。

道路を挟んですぐ向かい。なので別に急ぐことはないのだが、なぜか少し焦り出す星縁陣。

「えぇ〜と。荷物まとめて、荷物持って、1回帰るか?」

と言っているとアファノホが

「ご飯どうする?食べる時間ある?」

「あ、いや、たぶんない。ごめんありがとう」

「いや、全然。謝らなくてもいいけどさ」

「あ、どうしようかな」

「じゃあ、ま、泊まらないにしても、うちに荷物置いといて、バイト終わってから取りにくるとか」

「なるほど。いいじゃん。そうしなよ」

「んで。ご飯も食べてけばいいよ。作っとくから」

と天使と悪魔がめちゃくちゃ優しい。

「じゃあ、お言葉に甘えようかな」

「じゃあ、もうちょい出来ますね。どうです?乙女ゲー。おもしろいでしょ?」

「ビガードン、敬語になってるぅ〜」

「あ。う、うるせぇ。デトンルボがナチュラルにタメ語すぎんだよ」

「えぇ〜?仲良くなろうとしてたしぃ〜?」

「乙女ゲー。おもしろいね。MyPipeでもできるって言ってた?」

「あ、はいぃ〜うん!元はMyPipeから始まったんだよね。このシリーズ」

「へぇ〜。やってみよ」

ということで普段着に着替えてから、出勤時間ギリギリまで乙女ゲームをして

「じゃ、いってきます」

と玄関まで迎えに来てくれたアファノホ、ミウォール、ルボ、ビガードンに言って家を出た。

バイト先のコンビニに行った。いつも通りバイトを始め、いつもなら


長いなぁ〜


とか、始まったばかりなのに


まだ終わらんかぁ〜


と思う星縁陣(せえじ)だが、慣れたとはいえ、あまりにも非現実的で

星縁陣にとっては、人とあまり関わらない日常がガラリと変わった非日常で

熱に浮かされたように、バイトがすぐに終わったように感じた。後任の方に

「お疲れ様でしたぁ〜」

と言ってコンビニを出る。最上階の部屋番組を押し、呼び出しボタンを押す。

ピロリロリロリロ。呼び出し音が鳴ってすぐにガラス製のスライドドアのロックが外れ開く。

1人で入るのは初。なぜかドキドキした。ここの住人になったような、でも、違うので、忍び込んでいるような

側から見たら万引きをする前のような挙動不審さでエレベーターに乗り込む。

最上階について、エレベーターの扉が開き

1フロアに部屋に入るドアが1つしかない異様な空間に出てインターフォンを鳴らす。すぐにドアが開く。

「おかえりなさい!」

ビガードンが出迎えてくれた。

「おぉ。た、だいまでいいのかな?」

「鍵かけてないからドア引いたら入れたのに」

というビガードンに対して

「え。鍵かけてないの?」

と驚く星縁陣。

「かけてないーよ?」

「危なくない?こんなお金持ちなんだし」

「我々がなんだと?」

「あぁ」

悪魔だということを思い出させられる。

「でも、悪魔でも強いのとそうじゃないのとかいないの?悪魔って全員強いの?」

「まあ、僕も格闘技ーとかそういうのやったことないんで、たぶん弱いと思いますけど

悪魔の姿になって目の前に現れたらそれだけで気絶ものでしょ」

と笑うビガードン。そんなビガードンを見ながら


そうか。言われてみれば角、羽は見たけど、本来の姿は見てないのか


と改めて「人間」ではないことを思い知る。

「おかえりぃ〜。早速だけどご飯食べる?」

とキッチンに立っていたアファノホが言う。

「あ、じゃあ。お言葉に甘えまして」

「オーケー」

「せえちゃんん〜おかえりぃ〜」

「おかえりなさい」

リビングで寛いでいたみんなに迎えられる。

「た、だいま」

どこか照れ臭く、でも嬉しくなる星縁陣。キッチンではアファノホが料理を温めてくれて

リビングではアファノホ以外の天使と悪魔のみんなが仲良く、楽しく接してくれる。

料理が温まり、ミウォールだけが座っているダイニングテーブルのイスに座る。

「ほいぃ〜。どおぞぉ〜」

出してくれたのはサラダと麻婆豆腐とチキンと白米。

「おぉ〜」

「今日は中華にしてみました」

「なんか、いつぶりだろ。麻婆豆腐食べんの」

「そんな?」

と笑うアファノホ。

「じゃ、いただきます」

「どぞぉ〜」

スプーンで麻婆豆腐を掬って口に運ぶ。

ピリリと辛くも濃厚な甘さ、豆腐が崩れ、大豆の香りがして、ネギなどのアクセントも効いて

「…うまぁ〜…」

美味しかった。チキンも食べてみる。お箸で挟み口へ運ぶ。

白髪ネギのシャキシャキさ、そして辛さと香り、柔らかいチキン。

そしてガツンとした味付けかと思いきや、さっぱりした酢がベースの味付けで

「うまっ」

美味しかった。チキンだけで食べてもさっぱり美味しいし、チキンに麻婆豆腐をかけても美味しい。

アファノホがおすすめの食べ方としてチキンを2切れほど残してサラダに。

アファノホお手製のドレッシングがかかっており、そこにチキンを乗せて食べる。

チキンも酢ベースのさっぱりした味付けのため、サラダのドレッシングと合い、サラダ単体でも非常に

「美味し」

美味しかったが、チキンと一緒に食べると

チキンのジューシーさ、サラダに比べると濃厚な味があっさりしたサラダに加わって

「うまっ」

美味しかった。ペロリと平らげ

「ご馳走様でした」

とお皿を下げて、洗った。

「せえちゃんおすすめホラ〜ぁ〜!」

というジェイバーズに

「イエーイ!」

と乗るゴージェ。乗り気ではない他の4人。

「じゃあぁ〜」

ということでまたホラー鑑賞会をすることにした。

また朝の5時まで星縁陣(せえじ)が見て怖かった、面白かったホラー映画を鑑賞した。

「また今日も泊まってけば?」

と言うアファノホだったが

「いや、今日は帰るわ。着替えも1日分しか持ってきてないし」

ということで帰ることにした。荷物を持って玄関へ。するとみんながお見送りしてくれた。

「んじゃ。お邪魔しました」

「またおいで」

「せえちゃんまたぁ〜」

「あんまゲームしたことないなら、初見リアクションゲーム実況でも撮りますか」

「ま、今度はあまり怖くないもの、お願いします」

「ちょいちょいコンビニ行くから割り引いて?ね?」

「じゃ、星縁陣。また!」

「うん」

みんなに見送られ、玄関のドアを開き、6人に手を振ってドアを閉めた。

エレベーターに乗り1階へ。早朝のこの香り。いつぶりだろうか。

陽が昇りかけ、うっすらと明るい、東京なのに澄んだ空気のように錯覚させるこの香り。

横断歩道の信号を待つ。大通りだが、朝5時。

行き交う車も少ない。信号が青になり、渡る人も星縁陣以外には1人くらい。

自転車も1台ほどの横断歩道を渡る。自宅に向かって歩く。

家賃の安いアパートが見え、セキュリティーなんて

先程までいたマンションと比べるとないようなもの。そんなドアを開き、部屋に帰ってきた。

星縁陣が泊まっていた天使と悪魔の住むマンションの1部屋よりも狭い部屋。

そんな部屋に帰ってきて、部屋着に着替え、普段着のTシャツを洗濯機に放り込む。

ついさっきまで6人の天使や悪魔と和気藹々と楽しく話し

ホラー映画を見て、怖がって、そんな賑やかな時を過ごしていたので

いつもの一人暮らしの部屋に帰ってきて

いつも通りの誰もいない環境に戻っただけなのに、どこか部屋に寂しさを感じていた。

どことなくいつもと香りが違う。冬の朝のような、澄んでいるような、少し冷たく感じる匂い。

ベッドで寝ることに。ベッドに腰を下ろす。ギィ。安いフレームが悲鳴を上げる。

マットレスもふかふかとは程遠い。

寝転がり掛け布団をかけるが、掛け布団もふかふかとは程遠い。

静かな部屋。徐々に車の行き交う音や雨で錆びた自転車のブレーキ音などが聞こえてくる。

「…ホラー。怖いの見つけとかなきゃな」

と呟き、眠りについた。

この作品はいかがでしたか?

37

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚