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怒涛の一日目を終えた僕は寄り道をせずまっすぐ家に帰った。今日学校でなにがあったとか、クラスメイトの話とかをした。勿論、朝の出来事についてもだ。お父さんは「偉いぞ、さすが俺の子だ!」と誇らしげにしていた。
お母さんは褒めてくれてはいたものの、どこか心配そうな顔をしていた。どうしてだろうと思ったが口には出さなかった。
夕飯を食べ入浴も済ませた僕はベッドに飛び込んだ。一日の疲労がどっときたのだ。
そのときスマホが振動した。誰からだろうと思い見てみると、そこには葉月結羽と書かれていた。メッセージを開き中身を確認した。「明日の放課後空いてる?」お礼の件だと思い、返事に悩んでいると睡魔がフッと訪れた。気づいた時にはもう寝てしまっていた。
───────「光太ー起きなさーい」1階からお母さんの声が聞こえた。眠気が残ってはいるもののベッドから起きた。カーテンを開け眩しい朝日に目を細める。そこでふと思い出す。
「昨日の夜なにしてたっけ、」少し考えて、思い出す。急いでスマホを手に取った。メッセージは取り消されていた。「あっ」と情けない声が漏れた。どうしようと悩んだが時間もなかったので一旦保留にした。朝食を終え、寝癖も直し、まだ慣れない制服に袖を通す。高校生氷川光太の出来上がりだ。
「いってきまーす」昨日ほど時間の余裕はなくあたふたしながら家を出た。
練習通りの最短の道で学校に向かった。
ギリギリ学校には間に合ったのだが、玄関に入るタイミングで横から視線を感じた。そっちの方向を見やると僕のことをじーっとみつめる美少女がいた。そう、葉月結羽だ。
光太の中でその美少女はなかなかに気が強く、冷たい女の子というイメージだ。そして昨日の朝に先輩と知らなかったとはいえ生意気な態度を取り、挙句の果てには昨晩のやらかし具合だ。
合わせる顔がないとはこの事だろう。
何を言われるのだろうと覚悟を決めたが、その美少女は光太に対し罵声を浴びせるどころか、一言も口を聞かなかった。そして光太に背を向けその場を去った。そこでようやく光太は気づいた。「これかなりマズイのでは」と────
教室に入りすぐさま雄一のもとに駆けつけ、一連の出来事を語り、親友から助言を貰おうとした。だが返ってくる答えはひとつ「まあなんとかなるだろ」だ。そう彼は基本的に他人に興味が無いのだ。「けど強いて言うなら、お前から誘えばいいんじゃないか?」「ぼくから?」
自分から聞いておいてその態度かと思うほど気の抜けた返事をする。「そうだ。あっちは、自分と会うのが嫌なのかなとか思って拗ねてるのかもしれないだろ?」そんなこと考えるようなひとでは無さそうだと思いながら「でもどうして急にアドバイスくれたの?」僕が尋ねると、
「おもしろそうだから」と一言で返された。
なにがだろうと思ったが、それ以上の考えは思いつかなかったので、雄一の言うとおりにしてみることにした。
ピコンっ、誰かから連絡が来た音がした。
毛布の中からのそのそと顔を出し、芋虫のようになった美少女、 結羽はそのメッセージが誰からきたのかを恐る恐る確認する。そして、それが望んだひとである事を期待する。そのメッセージは氷川光太、結羽が待ち望んだ人からのものだった。
─────遡ること20時間前..
スマホの画面を見つめ、30分以上悩み、勇気をだして送った一通のメールそれは、光太を遊びに誘うものだった。結羽は異性にそんなメールを送ったことはなく初めての経験だったので、物凄く精神を削ったことだろう。ところがどうだ。既読は付いたものの一向に返事がない。結羽は拗ねた。
嫌われてるのかもと思いかなり拗ねた。そしてメッセージを取り消した。
そうつまり、光太からのメッセージは結羽が一日待ち続けたものであり、もう来ないものだと諦めかけていたものだった。
結羽は光太からのメッセージだと気づくと枕に顔を埋め、ベッドの上で毛布にくるまり芋虫のようになった状態でコロコロ転がりベッドから落ちた。何を隠そう結羽はちょろい。かなりちょろい。高嶺の花扱いをされ続けてきた結羽は異性に免疫がなく、少しでも優しくされるところっと落ちてしまうのだ。
光太からの「明日の放課後空いてますか」というメッセージに結羽はこう返した。
「空いてるけどなに?」
不器用なのだ。意識せずに冷たくなってしまっているのだ。その後明日の放課後駅周辺に最近できたカフェに行くことが決まった。結羽は両手でスマホをぎゅっと握りしめ、上がる口角を抑えようと頬をこわばらせた。一方光太はそんなこと知る由もないないので、「絶対怒ってるよな、明日なんて謝ろう、」とビビり散らかしていた。