こんばんわー、あめです。
ずっと投稿してなくてすみません。
注意書き
『しょぼマダミス 狂気山脈”星降る天辺”』のネタバレを大いに含みます
自己解 釈と妄想の塊です。自分なりの解釈や考察をお持ちの方は、十分にご注意してください(読まない方が良いかもです)
動画本編の前の出来事のお話です
では、本編どうぞー。
um→梅花
兄→梅花 兄
ig→五十嵐教授
sm→染谷記者
nh→野原隊長
um 「は〜あったか! ね、お兄ちゃん!」
兄「ん、あったかいな。」
こたつに潜り込んで、足をバタバタさせる。
テーブルの部分に乗ったミカンと湯のみが小さく揺れた。
お兄ちゃんは苦笑しながら湯のみを抑えて、「暴れないのw」と軽く梅花を叱る。
その空気が心地よくて、思わず頬が緩む。
こたつから履いでると、お兄ちゃんは真剣な顔でスマホとにらめっこしていた。
um「…またどっか登るの?」
兄「ん〜…迷ってるんだよなぁ。」
um「え、なんで。」
お兄ちゃんは自然の調査員。
思い立ったらいつもすぐ行動に移すのに、しぶるなんて珍しい。
兄「今行こうとしてるとこ、危険なんだよ、すごく。」
um「えー、なら梅花も行く!」
兄「お前は絶対ダメだよw行くなら俺1人だ。」
um「なんで!!梅花も行きたい!!前は連れてってくれたじゃん!!」
兄「危険だからだよ。それに、まだ行くって決めた訳じゃないし。」
um「え〜……」
不貞腐れてそっぽを向くと、「ごめんなぁ」と、申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
um「野原さんと行くの?」
兄「行くならな。」
um「…そ。じゃあ大丈夫だね。」
兄「うん。」
野原さんっていうのは、梅花たちの知り合いの探検家。
色々な登山隊の隊長を務めている、結構すごい人。
お兄ちゃんは何回か一緒に山に登ってて、梅花も顔を合わせたことがある。
優しくて面白い人だから、この先もお兄ちゃんと仲良くしてって欲しいなぁっていつも思いながら見ていた。
um「行くって決めたら、梅花にも言ってね。勝手に行かないでね。」
兄「言うよ、当たり前だろw」
um「…お土産待ってるから。」
兄「はいはいw」
お兄ちゃんは梅花の頭を優しく撫でると、部屋から出ていってしまった。
野原さんに電話するのかな。
…梅花も一緒に行きたいな。そのために極地専門調査員の試験受けたのに。
まだ結果は来てないけど、明日には届く予定だ。
もし受かってたら、連れてってくれないかな。
でも、多分お兄ちゃんは連れて行ってくれないだろうとは、密かに思っていた。
お兄ちゃんめっちゃ過保護だし。
残りのミカンを口に突っ込み、こたつから這い出る。
明日も大学があるし、もうそろそろ寝よう。
お兄ちゃんが戻ってくる可能性も考えたが、とりあえず部屋の電気を消し、自室へ向かった。
ig「梅花くーん。」
um「んー?」
大学の授業と授業の間の短い時間。
聞きなれた声に呼ばれて、自然と扉の方に目を向ける。
そこには、大学の教授が立っていた。
この人は五十嵐素敵。変わり者で、生徒からも他の教授や先生からもなんか避けられてる。
でも梅花はこの人の独特な雰囲気好きだから、仲良くなろうと思ってたら相手から擦り寄ってきやがった。
梅花が大学で1番仲良い人。
um「どしたの?教授。」
ig「梅花くんに紹介したい人いるんだよね。」
um「紹介したい人?」
ig「ん。おいでー、染谷くん。」
教授に呼ばれて出てきたのは、小柄な金髪の青年だった。
その人のことを1目見た瞬間、「似てる」と思った。
その人は、お兄ちゃんにそっくりだった。
さらさらの金髪も、大きくてぱっちりした瞳も、優しそうに垂れた眉も。
um「…誰?」
ig「俺の知り合いの記者。」
sm「どうも、染谷凪斗と申します。ほんとは極地専門の記者なんですけど、担当が休んだので代わりに来ました。」
ig「大学の様子撮ってくれるんだってよ。」
um「そーなんだ…。よろしく。私は梅花。」
sm「よろしくー。」
ゆるーい感じの人だった。
um「…てか、教授が頼んだの?写真w」
ig「ちげーよww大学のプロジェクト!誰が”記事書いてください”なんか言うかよw」
sm「えー心外だなぁ。」
ig「いやそういうことじゃなくて!w」
ケラケラ楽しそうに笑う2人を見てると、ほんとに仲良いんだな、と思う。
にしても教授に友達なんて珍しい。
この人1匹狼タイプだからなぁ。
um「2人はどこで知り合ったの?」
ig「俺の論文読んで、取材に来てから。」
sm「かるーく口論みたいのになって、そこから仲良くなった。」
um「口論で仲良く?!馬鹿じゃないのww」
ig「馬鹿じゃねーよ!なぁ、染谷くん!!」
sm「ほんとなぁ!」
um「んだコイツらwww」
3人で顔を見合わせて笑う。
会ったばっかりなのに、ずっと昔から仲良しだったみたいな感じがする。
…お兄ちゃんに似てるからかな?
sm「今度飲みいこーよ。」
ig「え、いいじゃん!」
um「行きたい行きたい!!」
ig「あれ梅花くん酒飲める?」
um「今年で20です〜」
ig「なんで煽り気味なのw」
その時、予鈴がなったため、教授と記者さんは出ていってしまった。
um「ただいまぁ〜」
玄関の扉を開けながら大きな声で叫ぶ。
部屋の中から「おかえりー」と返事が帰ってきたため、急いでリビングへ向かった。
um「お兄ちゃん、今日早かったね。」
兄「あー、早く終わったから、そのまま帰ってきた。」
um「おかえり!」
兄「ww、ただいま。」
お兄ちゃんが夜ご飯を作っている横で、机の上を片付ける。
雑多に散らばったものの中で、それを見つけた。
um「…え、お兄ちゃん、これ……」
兄「ん?」
振り返ってこちらへ向かってくるお兄ちゃんに、それを突きつける。
それは、「狂気山脈登山許可証」と書かれたプリントだった。
日付が今日になっているから、おそらく昨日の夜お兄ちゃんが言っていた”危険な山”のことだろう。
um「狂気山脈…?って何?怖い名前だね。」
兄「あー…俺が昨日言ってた山のことだよ。」
um「やっぱり! じゃあ、登ることにした…ってこと?」
兄「まぁな。…野原さん、一緒に行けないらしいけど、気になるから行ってくるよ。」
um「……ふーん。…あ、そういえば!!」
この流れで言ってしまおう。
カバンの中からスマホを取り出し、あるページを開いてお兄ちゃんに突きつけた。
um「”極地専門調査員試験”!受かったよ!!」
兄「お〜、マジか!良かったなぁ。」
um「頑張ったかいあった〜!」
兄「これで梅花も、俺たちの仲間入りだな。…まぁ、だからと言って狂気山脈には連れてかないけど。」
um「ちぇー、ケチ。」
兄「ww 危ないんだぞ?」
um「お兄ちゃんが居なくなるより良い!お兄ちゃんが死ぬ気なら梅花も一緒に死にたい!」
兄「おいおい、怖いこと言うなよ。」
um「本気だもん…」
兄「そっか、ありがとな。でも、安心しろ。死ぬ気は無いから。」
um「絶対生きて帰ってきてね!!!死んだら許さない!!!」
兄「分かったよ。俺だって死にたくないしな!w」
2人で固く約束した。
絶対生きて帰ってくること。それまでお利口で待ってること。
でも、結局、約束を守ったのは
梅花だけだったの。
その日は、朝から寒気がするくらい、気分が悪かった。
なんだが嫌な予感もしてて、何もしたくなかった梅花は大学を休んだ。
昼過ぎくらいに、電話が鳴った。
野原さんからだった。
その途端、今までで1番強く、心の中で警報がなった。
怖くなって、吐きそうになりながらもなんとか電話に出た。
nh「お兄さんが亡くなられた。」
頭が真っ白になった。
冗談だと思ったし、思いたかった。
遺体の回収は難しい、と聞かされた。
嘘だ、そんなの嘘だ。
だって、お兄ちゃんと約束したもん。
生きて帰ってくるって。
お利口に待ってたのに。
お兄ちゃんが裏切るわけないもん。
嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!
um「信じたくないよ………………」
心にぽっかり穴が空いた。
あれから数ヶ月がたった。
毎日、起きてご飯を食べて大学に行って仕事に行って帰ってきて寝る。
その繰り返し。
気が滅入りそうだった。
そんな毎日に嫌気が差してきた、ある日。
野原さんからまた電話がかかってきた。
um「…はい。」
nh「お兄さんのこと、お悔やみ申し上げます。…突然で申し訳ないのですが、梅花さん。狂気山脈に登りませんか?」
um「…………は??」
言っている意味が、よく分からない。
兄を失った人に、その兄が死んだ山に行こうと誘う。そんな無礼なことがあるだろうか。
怒りすら込み上げてきた梅花に、野原さんは静かに説明してくれた。
どうやら野原さんは、狂気山脈の謎を解明したいらしい。
お兄ちゃんは狂気山脈の第1次登山隊として山に行ったのだが、その隊員の遺体の中には、不自然な遺体があったそうだ。
それを聞きつけた野原さんは、優秀な登山家を数名集めて、秘密裏に狂気山脈に登ろうと計画しているらしい。
それに梅花を同伴させて、兄の遺体に会わせてあげたい、と言うのだ。
um「…お兄ちゃんの遺体は、あるんですか。」
nh「恐らく、通信が途絶えた場所にあるそうです。」
um「……わかりました。行きます。」
nh「承知しました。では、また後ほど。詳しいことが決まり次第、連絡させていただきますね。」
um「はい。」
電話を切る。
誰もいない部屋の中、1人でこたつに潜り込んだ。
もうジタバタしても、湯のみを抑えてくれる人はいない。
せめて、お兄ちゃんの遺体を一目見に行こう。
お別れを伝えに行こう。
そう決心して、準備を始めた。
その後、私は野原さんと何度か顔を合わせ、仲良くなった。
一緒に生きるか死ぬかの瀬戸際まで行くんだから、仲良くないと大変だろうし。
野原さんは私に、「お兄さんの遺品は梅花さんが持って行ってください」と言ってくれた。
それだけ約束して、私たちは当日を迎えた。
登山には、私たちの他に2人、同行した。
なんか、医者と博士?だか研究者?だか言ってた気がする。
覚えてないけど。
um「…野原さん、遺品、なんか残ってるかな…。」
nh「…きっと残っていますよ。」
早く、早くお兄ちゃんのところに行きたい。
早く…………
um「……あ」
1番最初に気づいたのは梅花だった。
次に野原さんが気づいて、二人で思わず駆け出していた。
死体は案外綺麗な状態で残されていた。
……一部、は。
遺体の中の数名は、頭がない状態で発見された。
初めて見る、大量の真っ赤な血。
極寒の中だからか、傷口は凍って腐りはしてなかったけど、それでも気分は最悪だった。
その時。野原さんが、こっちを見て、何やら手招きしているのが見えた。
野原さんの方へ駆け寄って、思わず叫んでいた。
um「……お兄ちゃん、!!」
やっと見つけた。
お兄ちゃん、あのね、…………
足が止まった。
その場から動けなかった。
……お兄ちゃんには、頭がなかった。
um「……そん、な…、」
言葉が詰まる。
喉が痛い。
肺が痛い。
頭が、痛い。
不思議と涙は流れなかった。
頭のないお兄ちゃんに近づいて、その場に座り込む。
um「……ばか。」
すっかり冷たくなって、氷みたいなお兄ちゃんの手に触れる。
その時、初めて涙が出た。
しばらくそうやって座り込んでいたら、背後から「くそ、…」と悔しそうな声が聞こえてきて、それで我に返った。
声の正体は野原さんだった。
野原さんは遺体の荷物とかを漁って、何かを探しているようだった。
探し物が見つからなかったのかな。
我に返ってからお兄ちゃんを見てみたら、不思議なものを見つけた。
それは、お兄ちゃんが握りしめていたんだけど。
不思議な石だった。
キラキラ光ってて、持っているとお兄ちゃんの声が聞こえてくる気がした。
止まったはずの涙がまた溢れてくる。
お兄ちゃんはよく、調査先で手に入れた綺麗なものを私にお土産として持ってきてくれることがあったから、今回はこの石がその対象だったのかもしれない。
石をぎゅっと握りしめる。
持って帰って、大事に保管しよう。
それとも、アクセサリーにしてもらおうかな。
その石をポケットに入れようとした、その時だった。
誰かが梅花の腕を力強く掴んで、引っ張った。
um「い”ッ…?!」
痛かったしびっくりしたしで、困惑しながら引っ張った人を見上げる。
……野原さんだった。
um「な、なに、?」
nh「…その石を渡しなさい。」
um「何で?!これはお兄ちゃんの遺品だよ!梅花のために……」
nh「いいから渡せ!!」
um「…え、」
野原さんが怒鳴っているのを初めて見た気がした。
驚きで固まっている梅花を見て、野原さんは我に返ったみたいだった。
nh「…すいません、癇癪を起こしてしまいました。…ただ、その石だけは渡してくれませんか。大切な資料になるんです。」
um「…やだ。」
nh「梅花さん!」
um「嫌だってば!!」
nh「お願いです!!それがないと、それがないと…っ、また犠牲者が増えることになるかもしれないんですよ?!」
その言葉に、口が動かなくなる。
言葉が出てこない。
犠牲者が増える。それは、梅花と同じ思いをする羽目になる人が増えるってこと。
それは嫌だった。
こんな、わけもわかんないのに大切な人を奪われて、いきなり1人になって。
そんな辛い思いする人は、もう…………
でも、それでも、お兄ちゃんはもういない。
梅花には守るものも、大切なものも何1つ残っていない。
…あぁ、あるとしたら、教授と記者さんかな。あの2人にはずっと……。
だとしてもだ。
um「…嫌だ。渡したくない。」
野原さんを睨みつける。
石を強く握りすぎて、右手が痛くなってくる。
そんな梅花を見て、野原さんは一瞬悲しそうな顔をしたけど、すぐに冷たい目をしてこちらへ近づいて来た。
nh「……梅花さん、残念です。」
um「え……ッ」
次の瞬間。
梅花の体は宙に浮いていた。
落とされた。
そう思った瞬間。ぼふっと、冷たい雪に体が埋まる。
um「ッ……?、」
どうやら、小さい段差から下に落とされたようだ。
全身がズキズキと痛む。
ゆっくりと身を起こし、右手を見ると、石が無くなっていた。
um「ッ…!!」
足音がして、そっちを見上げると、野原さんがこっちを見下ろしていた。
野原さんの手の中には、あの石が光っている。
nh「…梅花さん、できればこんな手は使いたくなかったんですよ?でも、梅花さんが言うことを聞いてくれないから……。」
um「……約束やぶったんだから、分かるよね?」
nh「…おっと、ここで殺し合いをするのはよしませんか?意味もなくどちらかが死ぬだけですよ?」
um「うるさい…っ、それは梅花の大事なものなんだから返してよ!!」
nh「まだ言うのですか?」
野原さんは呆れたようにたずねてくる。
梅花だって、簡単に引き下がる訳には行かないんだよ。
その石を持ってたら、お兄ちゃんの声が聞こえてくるから。
きっと不思議な石なんだろうな。
だから野原さんもそれに執着してるんだ。
……嫌だよ、渡したくない。
でも、きっと野原さんも引き下がることは無いんだろうな。
正面から戦っても、野原さんには絶対勝てない。
どう頑張っても、男と女だし。
um「……分かった、じゃあその石はあげる。」
nh「おや、どうしたんですか、急に?」
um「あげるけど、研究が終わったら返して。一部だけでもいいから。」
nh「ほう。」
um「それだけ。いい? 」
nh「約束できない…と言ったら?」
um「殺す。」
自分の口からあまりにも軽々しく出てきたその言葉に少し驚きながらも、野原さんを睨み続ける。
すると、野原さんは大きくため息をついてから、うなづいてくれた。
nh「仕方ないですね。」
um「じゃ、行こ。」
nh「もういいんですか?」
um「いいよ。遺品はある程度持ったし。」
nh「そうですか。」
まだ何か言いたそうな野原さんに背を向けて、さっさと歩き出す。
これ以上この場にいたら、そのままお兄ちゃんのそばにずっといたいと思ってしまう気がして少し怖かった。
その時。
後ろから肩を捕まれ、思わず立ち止まる。
um「……何。」
nh「お兄さんに会えて良かったですね。」
本心だなぁ、と思った。
なんにも言えなくて、振り返らないままその場に立ち尽くす。
um「……うん。 」
なんとか返事を返して、そのまま歩き出した。
歩きながら、涙が止まらなかった。
山から降りてきたら、教授と記者さんからものすごく心配された。
確かに、何も言わないで1週間の休暇なんて、怪しまれるに決まってる。
だけど、2人にはその事は言わないでおいた。
そういう約束だし。
2人にあった途端、安堵と寂しさで思わず泣いてしまった。
2人にはお兄ちゃんが死んじゃったことは話してたから、すごく優しくしてくれた。
教授がオロオロしてるのなんか初めて見たから、新鮮だったなぁ。
記者さんは、泣いている梅花への対応の仕方までお兄ちゃんにそっくりで、余計に泣いちゃった。
あったかい、あったかいな。
この2人には、ずっと笑ってて欲しい。
辛い思いなんかひとつもしないで、幸せに。
そう思ってたのに。
梅花は最低だ。
野原さんは約束を守ってはくれなかった。
恨みで頭がおかしくなってたのかな。
裏切られてばっかりだったし。
だから、
もう、どうでも良くなってた。
お兄ちゃんさえ、帰ってくれば。
終わりです!
お疲れ様でした。
またまた長く書いてしまった…。
動画見終わってからずっと書きたかったんですよね。
「星降る天辺」大好きです。
「薄明三角点」と「頂上戦争」も早く見ちゃいたい…。
読んでくださり、ありがとうございました!!
では、また次のお話で〜おつあめ。
コメント
6件
👏👏👏良作😭👍星ふる天辺大好きだから😇😇😇 本編では語られなかったこういう裏側がきっとあるんだろうなぁ... 兄と染谷が重なるの...もうほんとに😇