「生年月日は?」
「僕は1991年11月19日」
「羊年のさそり座ですね!」
「君は?」
「私は1998年5月29日生まれの寅年です」
「星座は?」
「ふたご座です」
「血液は何ですか?」
「A型!」
「いかにも!ですね!私は―」
「待って!当てよう!O型だ!」
桜は目を丸くして言った
「すごい!どうしてわかるんですか?」
ハンバーガーの包みを開けて大口を開けて頬張ると、ジンは桜の作成した移民管理局でヒアリングされる質問集印刷したファイルを見ながら笑った、彼女はなんともわかりやすい
御堂筋のざわめきの中、歩道沿いに設置されているファーストフード店のテラス席で、今二人は向かい合って座っていた
とても晴天の休日、風は心地よく、美味しいバーガーにくつろいだ雰囲気、これがデートではないのが二人には残念でならなかった
「私が調査分析した結果、これから行く移民管理局で約50項目の質問がヒヤリングで実施されると推定できます、ですから、あらかじめ、ここに書かれた質問項目は当然の事、結婚する二人であるなら知っておかなければいけない事です」
桜もシェイクを一口啜って言う
「ふむ・・・僕達は二年前から交際をしているんだな・・・そして三か月前に正式に結婚を前提に 付き合う・・・当然お互いの家も行き来する仲だ!君の家は?どこに住んでるの?」
「大国町です!会社から二駅の!」
おおっと目をジンが丸くする
「僕もだよ!僕は自転車通勤だけど」
「私のマンションから見えますよ!あのどでかいタワーマンション」
「そうなのかい?」
「それから35Pですけど、私の好きな色はピンクです!」
ハハッ 「みれば分かるよ、君の着ている服や持ち物はピンク率が高い」
今度はジンがしっかり笑った、真っ白な歯がまぶしい、セクシーな微笑みに桜はドキリとした
今日の彼はよく笑ってくれる、自分の中で何かがほどけていく様だった
困ったことになった、彼の魅力の虜になるのは予想がついていたが、すぐに暗記する頭の良さも、大口で食べるハンバーガーの食べ方が綺麗なのも、口角についたソースを親指で拭う仕草も・・・
みんな想定内だったはずなのに、たった一日、プライベートな彼を見ただけでこんなに好きになってしまうなんて・・・ 桜は再び気を引き締めた、ビジネス、ビジネスよ!桜!
「ジンさんのお好きな色は?」
彼がファイルにペンで書き込みながら言う
「僕は・・・これといって好きな色はないけど・・・良く選ぶのは黒かな?シンプルでスッキリしてるものが好きなんだ・・・あと自分がデカいから派手な色で悪目立ちしたくないって気持ちはいつもあるな、特に日本に来てからは」
「黒ですね!それからご家族の事です!実家にはまだ行ったことがない設定にしています」
「君は一人っ子なんだね?ご両親はお元気なのかい?」
ジンが桜のプロフィールを見ながら言う
「ハイ!そうれはもう!ピンピンしています!山田旅館って淡路で一応三代続く旅館を経営してまして、そこには親戚がわんさかいるんです、父は5人兄弟で、母はなんと7人兄弟で、みんな同じ顔で一族で旅館を経営してるんです、今年80歳になるおじいちゃんもすこぶる元気で毎日乾布摩擦しています!あれって本当に効くんだな~っておじいちゃんを見てたら思いますよ、乾布摩擦は長寿の秘訣です」
ハハッ 「それはそうとう賑やかだね!」
ああ・・・その表情さえも魅力的・・・もっと彼を笑わせたい、それからは桜のワンマンショーになった、奇怪な桜の身内の漫談話にジンは腹を抱えてゲラゲラ笑った
その度えくぼが見え隠れして、知らず知らずにジンの全身を眺めまわしていたが、自覚してからもうやめようと思わなかった、やがてあんまりにもじっと桜に見つめられているのに気付いたジンが、コホンッと小さく咳をして、俯いてしまった
耳がうっすらと赤くなっている
―ああっ!惜しいっ、彼はまた「シャイ」のベールを被ってしまったわ・・・もっと笑わせたいのに ―
「あっ・・・えーっと・・・私の家族の事はこれぐらいにして、ジンさんのご家族の事を効かせてください」
慌てて桜が言った
「僕は一人だよ」
「一人って?・・・」
「家族は日本に来る前に両親と弟がいたんだけど・・・」
「今は韓国にいらっしゃるんですね?」
だとしたらご両親はとてもこの方を誇りに思われていることだわ・・・
桜は思った、単身日本に渡ってこんなにも成功した外国人もめずらしいだろう、いつかジンさんのご家族を見て見たいものだ、たとえ偽装でもご家族には報告するだろうし・・・自分をご家族に紹介してもらえたら、緊張するけど、とっても嬉しいかも・・・
「ご両親はそれはそれはジンさんのことを誇りに思っていらっしゃるでしょうね!弟さんも」
ウキウキして言う桜の言葉にジンは首を軽く振った
「さぁ・・・それはどうかな?」
彼は下を俯いたまま、ハンバーガーの包み紙をいきなり丁寧に四角く折り出した、その態度に桜は気を使って言った
「もしかして・・・ご家族とは仲がよろしくないのですか?」
私とママのように・・・ 親と分かり合えない悩みなら自分にもある、もしかしたら私達は共通の悩み事でもっと親しくなれるかも・・・ もしそうなら、何でも話して欲しいな・・・彼のプライベートの悩みに寄り添ってあげたい・・・ なんでも彼の事が知りたい、一番の理解者になりたい・・・そう考えた時にやっとジンが口を開いた
「僕が大学受験の時に交通事故で全員死んだんだ」
自分が想像していた遥か上のジンの答えに 桜はショックで口がきけなくなった






