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一方、彩の地の部隊もまた、魔獣の居場所を掴んでいた。
鷲尾は國光より早く到着しようと焦り、部隊に準備を急かせていた。
「あの忌々しい國光め、総帥の息子だからといって自由にやりやがって。
魔獣を討伐すると同時に、あの部隊も打ち砕いてやろうか」と鷲尾は内心で毒づく。
その時、メイを襲った隊員が呼ばれ、鷲尾の前に現れた。鷲尾は怒りに満ちた表情で隊員を殴りつけた。
「この俺に恥をかかせたな」と鷲尾が言うと、隊員は「申し訳ございません」と震えながら答える。
「貴様、魔獣がいたのになぜ戦わなかった!?」
「そ、それは、その...」
「貴様ら、本当に武蔵帝都の隊員を襲っていたのか?」
「...は、はい」
鷲尾はさらに怒りを募らせ、隊員を蹴り飛ばした。
隊員は苦痛に顔を歪めながらも、
「司令官、待ってください。あの時、あの魔獣は武蔵帝都の隊員だけは襲いませんでした。
一人を殺してから武蔵帝都の隊員を見て、動きが止まったんです。
そして俺の方を見て近づいてきました」と言い訳を続けた。
「それがなんだというんだ」と鷲尾は冷たく返す。
彩の地部隊副司令官の大和がそのやり取りに耳を傾け、「襲わなかっただと?それは確かか?」と問いかける。
「はい、確かです。あいつがやられている隙に逃げようと後ろに下がっていました。
しかし、なぜか俺の方を見たんです」と隊員は必死に説明する。
大和は考え込み、「司令官、直ぐに出発しましょう。國光部隊より先に到着し、討伐いたします」と提案した。
鷲尾は疑念を抱きながらも、「何か作戦でもあるのか?」と大和に問いかけた。
大和、「はい、私にお任せください」
「よし、出発するぞ!」と鷲尾は号令をかけ、彩の地部隊は出発した。
大和はメイが本当に襲われないというなら
メイを魔獣の前に突き出だし、その隙に魔獣を討伐する作戦を考えていた。
武蔵帝都の宿舎では静けさが漂っていた。メイを除く全員が魔獣退治に出かけており、
メイは一人で広いグラウンドで剣術の練習をしていた。
穏やかな風が吹く中で、メイの剣は一心不乱に振り続けている。
その頃、武蔵帝都を見張っていた鷲尾の部下たちに指令が下った。
数人の影が無音で忍び寄り、グラウンドへと潜入する。
メイが何も気づく間もなく、彼らは迅速かつ無情に動いた。
メイが剣を振り終え、息を整えている瞬間に、突然後ろから冷たい手が彼女に口枷(くちかせ)を押し付け、
視界が暗くなる。頭には黒布がぶせられた「!!!」目隠しをされたメイは、必死にもがこうとしたが、
部下たちはメイの腕を後ろで縛り、そのロープを引っ張る形でメイを立たせた
「静かにしていれば、安全でいられる」と一人の部下が冷ややかな声で囁く。
メイの心に恐怖が走り、下手に動けば命の危険があることを悟った。
無言のまま、メイは強引に引っ張られ、誰も助けてくれる人がいないことを痛感していた。
宿舎から遠ざかる彼女の足音だけが無情な現実を刻んでいく。
部下たちは一切の情けを示さず、彩の地の部隊の待つ場所へ連れ去って行った。
メイの心は恐怖と絶望に包まれ、この状況がどうなってしまうのか、想像するだけで震えが止まらなかった。
自分が助かる望みは薄いと悟りながらも、メイは心の中で「絶対に諦めない、自分を信じるしかない」と強く念じ続けた。
その強い意志だけが、彼女の心をかろうじて支えていた。
一方、國光の部隊は緊迫した状況の中で進むべき道を見失い、足止めを食らっていた。
彩の地部隊が至るところを爆破し、木々や岩を使って道を塞いでいたからだ。
煙と破片が舞い上がり、進軍を阻む障害物が次々と現れていた。
「考えることが幼稚だな」と蓮は静かに言った。
國光は苦笑いを浮かべながら、「僕、そんなに嫌われてるのかな?」と軽く肩をすくめた。
凌は眉をひそめ、「部隊を全滅させると言われたら、誰でも怒るでしょう」と返した。
その瞬間、東の山の方から爆発音が響き渡った。地面が揺れ、空気が震える。
その音に國光は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにその顔を引き締めた。
「始まったみたいだね」と國光はつぶやいた。
凌は鋭い目で周囲を見回し、「急ぎましょう」と短く指示を出した。
彩の地部隊が魔獣と戦い始める、戦場は混沌としていた。太陽が沈みかける中、
彩の地部隊は圧倒的な魔獣の力に歯が立たず、次々と倒れていった。血と土が入り混じる中、
彼らの叫び声がこだました。
巨大な魔獣は黒い鱗に覆われ、その鋭い牙と鋭利な爪で容赦なく兵士たちを切り裂いていく。
その威勢に圧倒され、彩の地部隊の兵士たちは一歩後退しながらも必死に応戦していた。
大和は瞳に鋭い光を宿し、その瞬間を待ち続けている。
「一瞬でいい、魔獣の動きを止めろ!」彼の叫びは響き渡り、
隊員たちは一斉に鎖でつながれた杭を放った。それは、弱った魔獣を生け捕りにするための道具だが、
大和の狙いはただ一瞬、魔獣の圧倒的な力を封じることだった。
杭は唸りを上げ、見事に魔獣の背部と手足に突き刺さった。
しかし、魔獣は怒りに満ちて咆哮し、鎖を引きちぎるかのように動き始めた。
「副司令官!ダメです、もう持ちません!」絶望的な叫びが上がる。
「後退だ、一旦後退しろ!」大和の声は冷静かつ的確だった。隊員たちは命令に従い、
銃口から炎を放ちながら、一歩一歩退き始めた。煙が立ち込める中、彼の目は一瞬たりとも魔獣から離れなかった。
「奴を連れてこい!」その合図で隊員が動き出し、メイの頭を覆う黒布を剥がし、
緊迫した空気の中で彼女を魔獣の前へと放り出した。全員が息を呑む瞬間、
大和は次の一手を心中で計算していた。
メイは地面に転がり、泥と血にまみれた顔を上げると、眼前の魔獣と対峙することになった。
大きな魔獣の瞳が冷たく光り、その巨大な体躯が影を落とした。
メイは、痛みと恐怖で身動きが取れなかった。しかし、驚くべきことに、その瞬間、
魔獣の動きが止まった。巨大な魔獣はじっとメイを見つめ、その目には何か神聖な光が宿っているようだった。
メイの心に不思議な声が響く。
「呪いを解け…」
「の、呪いを解く...?」メイは戸惑いの中でその言葉を口にした。
再び心に響く声。「導かれし者よ、我らの呪いを解いて解放してくれ。」
一方大和は魔獣が動きを止めたのを確認し
冷笑しながら司令官鷲尾に向かって言った。「司令官ご命令を」
鷲尾はにやりと笑い「撃て!」と命令した
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