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番外編:卒業の日
校門の前。
「……終わったな」
緋八マナがぽつりと呟く。
手には、卒業証書。
見慣れた校舎。
見慣れた景色。
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「マナ!」
振り向く前にわかる声。
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「お疲れ様」
そこにいたのは
伊波ライ。
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「……来てたんか」
「来るよ」
当たり前みたいに言う。
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「今日くらいは、ちゃんと迎えたくて」
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「……そっか」
少しだけ、照れる。
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■終わる実感
「どうだった?」
「んー……」
少し考える。
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「実感、まだないな」
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「そっか」
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「でも」
少しだけ校舎を見る。
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「ここ来ることも、もうないんやなって思うと」
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「うん」
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「……ちょっと寂しい」
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ライは何も言わずに、隣に立つ。
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「でもさ」
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「うん?」
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「終わりっていうより、区切りじゃない?」
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「……区切り?」
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「ここまでが高校で、ここからがその先」
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「……なるほどな」
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■変わるもの
「なあ」
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「うん?」
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「これからさ」
少しだけ、真面目な声。
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「今みたいに毎日会うの、難しくなるかもしれん」
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進学、環境、生活。
変わることは多い。
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「うん」
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「それでも」
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言葉を探して。
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「……変わらんよな」
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小さく聞く。
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■変わらないもの
ライは、すぐに答えた。
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「変わらないよ」
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「……ほんまか」
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「うん」
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一歩近づく。
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「むしろ」
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「うん?」
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「これからの方が、ちゃんと一緒にいられる」
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「……っ」
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それは。
同棲の話も含めて。
全部わかる言葉だった。
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■ちゃんと前に進む
「マナ」
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「なんや」
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「卒業おめでとう」
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「……ありがと」
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少しだけ笑う。
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「なんか、照れるな」
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「なんで?」
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「お前に言われると」
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「失礼だなあ」
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笑い合う。
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■最後の“高校生”の時間
「なあ」
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「うん?」
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「ちょっとだけ寄り道せえへん?」
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「いいよ」
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歩き出す。
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何度も一緒に歩いた道。
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でも。
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「これが最後かもしれんって思うと」
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「うん」
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「ちょっと特別やな」
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「だね」
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■次に進むために
少し人の少ない場所。
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「マナ」
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「ん?」
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「これからもよろしく」
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「……改めてか」
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「大事でしょ」
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「……せやな」
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少しだけ照れて。
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「こっちこそや」
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そのまま。
自然に近づく距離。
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軽く触れるキス。
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「……外やぞ」
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「最後の高校生だから」
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「理由雑やな」
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でも。
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「……まあええか」
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■未来へ
夕焼け。
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「なあ、ライ」
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「うん?」
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「次会う時は」
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「うん」
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「もう“高校生”ちゃうんやな」
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「そうだね」
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少しだけ間があって。
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「でも」
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「うん?」
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「“恋人”なのは変わらない」
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「……当たり前や」
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■歩き出す
そのまま。
並んで歩く。
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「なあ」
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「うん?」
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「これから、もっと会えるんやろ」
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「うん」
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「じゃあ」
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少しだけ笑う。
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「楽しみやな」
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「俺も」
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卒業は終わりじゃない。
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ここからが。
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本当の“二人の時間”の始まりだった。