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3日目
翌日、若井は藤澤に呼び出された。館の庭、雨に濡れたテラスで藤澤は若井をじっと見つめる。
「まだ大森を信じてるの?あいつは危険だよ、若井」
「何を根拠に言うんだよ」
若井は苛立ちを隠せずにいた。藤澤の執着がかつての恋愛の傷を抉るようでただただ苦痛でしか無かった。
「10年前のことを知ってるのはあいつだけじゃない。俺もだよ」
藤澤は左手の傷痕をさりげなく見せつけ笑う。
「この傷、気になるでしょ?鏡館で起きたことと関係があるかもしれないよ」
若井の心がざわつく。藤澤の傷痕が、地下室の写真と結びつく気がした。
「お前、10年前にここにいたのか?」
藤澤は答えず、ただ微笑んだ。
「大森を調べて。そしたらわかるよ」
その言葉に、若井の疑念はさらに深まった。
大森、藤澤に続き高野の態度も若井の不安を煽る。 高野は綾華の失踪を「ゲームの演出」と笑い飛ばしたが、その目はどこか冷たい印象を与えるものだった。
ゲーム3日目の朝、高野は参加者に新たな課題を課した。
「館の隠し部屋を探せ。そこに犯人の手がかりがある」
若井は高野の言葉に違和感を覚えた。しかしその違和感をうまく言葉にすることが出来ない。
若井と大森は高野の指示に従い、館の2階を探った。部屋では古い書斎で隠された引き出しを見つける。中には、10年前の新聞記事の切り抜きがあった。
「鏡館失踪事件。男女5人行方不明、原因不明」
若井は記事の隅に誰かの手書きで「鏡は嘘をつく」と書かれているのを見つけた。すぐに若井は大森を見る。
「元貴、これ知ってた?」
大森は首を振った。
「初めて見た。でも….この館には、知らない方がいいこともあるよ。」
「また隠す気か?」
若井の声には苛立ちが滲んだ。大森の曖昧な態度が、藤澤の警告を裏付けるようだった。
書斎を出た後若井は綾華の荷物から小さなメモを見つけた。
「鏡の裏を調べて。真実がそこにある。」
綾華の筆跡だった。彼女は失踪前に、何かを知っていたのだ。若井は綾華の鋭い視線を思い出す。
「大森さん、時々おかしくない?」
あの言葉が今になって重みを増していた。
若井は大森にメモを見せる。
「綾華、こんなメモを残してた。どう思う?」
大森の表情が一瞬硬直したのが見えた。
「…彼女、鋭かったんだね。けど危険だよ若井。深入りしない方がいい」
「危険?元貴がずっとそう言うから、余計に気になるんだよ!」
若井は声を荒げた。大森の優しさは本物なのか、それとも何かを隠すための演技なのか。疑心暗鬼が、若井の心を締め付けた。
その日の夜、若井は大森と再び廊下で向き合った。
「元貴、正直に言って。10年前の事件とどう関係してる?藤澤の言う通りなの?」
大森は静かに若井を見つめた。
「俺を信じてよ若井。若井を傷つけるつもりはない」
その言葉に若井は心が揺れた。だが、鏡に映る大森の姿が再び一瞬だけ歪んだ。若井は恐怖と愛の間で立ち尽くした。
この鏡は、この館は、この男は、一体なんなんだ?
コメント
2件
めちゃくちゃ面白いです!!!楽しませてもらっています!!!続きが気になる!!!!!!