テラーノベル
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深夜。
コンビニのレジカウンターに立っていた
**藤井さん(21)**は、あくびを噛み殺していた。 日付が変わるころになると、客もほとんど来ない。さっき裏に入った友人とLINEで“推しの尊さ”を語っていたところだった。
「今日も平和だねー……」
そう呟いた直後、ドアのベルが鳴った。
「いらっしゃいませー……」
(……ん?)
入ってきたのは、ちょっとチャラそうなイケメンと、
その隣に並ぶ、真面目そうで制服を着崩さない、いかにも“優等生”タイプの男の子。
藤井さんはレジからその二人を一瞥し──凍りついた。
(……え、キ、キスマーク多っっっっっ!!!??)
パッと見ただけでも、制服の襟からのぞく赤黒い痕が左右に数個。
しかも、うっすらと首筋に噛まれたような跡まで。
(ちょ、待って、なにこれ、えぐいえぐい、なにこれ……ていうかあれ理央くんじゃん!?)
地元の高校に通う子は顔を見たことがある。何度かこの時間帯に来たこともあった。
名前までは知らなかったが、“成績優秀・潔癖そう・硬派そう”な印象の彼が──
(あんな、モロ事後みたいな顔で、キスマだらけで、XLコンドーム……!?!?)
その瞬間、頭の中に電流が走った。
(ちょ……やばい……これ、公式じゃん!?)
横にいる男の子──ふにゃっとした笑顔で理央くんの腰に手を添えてる。
なんならコンドーム棚から商品取ったの、そいつだ。
(しかもXL……XLて、なに……理央くん泣かされてない?大丈夫???)
二人がレジに来てあまりの近距離大量キスマに思わず顔をそむける。というより、直視できなかった。
(キスマえぐぅ……)と心の中で叫びながら。
ふわふわした雰囲気の理央くんが、レジに出された商品の中、 XLパケを見て「……ッ」と息を飲んで俯いたのも見逃さなかった。
(や、やばい…知らなかったんだ…照れてるしかわい……尊っ……)
震える手で会計を済ませながら、
内心は悲鳴と感動と妄想で大洪水。
「ありがとうございました……(やばい、息できない)」
二人が出ていったあと、裏にすぐ駆け込んだ藤井さんは、 夜勤中の相棒であり同じく腐女子の斉藤ちゃんに言い放った。
「事後でふらふらでキスマエグい優等生がXLのチャラ男に連れてこられたんですけど!!」
「は!? 公式!? 令和のエグ公式じゃん……顔面偏差値どうだった!?」
「余裕で壁! ド壁!!!」
「爆死!!!!」
そのあと30分、店の防犯モニターを巻き戻しながら、二人の腐女子はその夜最大の供給に悶え続けた──
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