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錬金術師ギルドの食堂で昼食をとったあと、私たちは急いで大聖堂へ向かった。

急いだこともあり、約束の時間には無事に間に合いそうだ。


「すいません、急がせてしまって。

思いのほか、依頼の受け渡しに時間が掛かりまして……」


「いえいえ、お仕事ご苦労様です! これくらい何ともないですよ!」


エミリアさんは明るく答えてくれる。

実はお茶を飲んでゆっくりしてました……なんて言えないから、ここは黙っておくことにしよう。


「アイナ様、大聖堂のどこで待ち合わせを?」


「えっと、入口の入ったところって聞いているんだけど――」


「ああ、あそこの柱のところにいらっしゃいますね」


エミリアさんの視線の先には、朝に応対してくれた大聖堂の人がいた。

その横には恰幅の良い、身だしなみを整えた男性が立っている。……年齢は40歳くらいかな?


「すいません、お待たせしました」


「いえいえ、とんでもございません。ようこそいらっしゃいました。

早速ですがアイナ様、こちらの方に工房の案内をして頂くことになっております」


「そうでしたか。

初めまして、私はアイナ・バートランド・クリスティアです」


「ご丁寧にありがとうございゴザイマス。

私はピエール・タオ・ラシャスと申しマス。このたび、国王陛下よりアイナ様の工房の手配を命じられた次第でゴザイマス」


「お手数をお掛けします」


「とんでもゴザイマセン。

それにしても、噂の錬金術師サマがこんなに可愛らしい方だったとは、私はとても驚きマシタ」


「いえいえ、ありがとうございます。

ところでこれから、すぐに案内をして頂けるのですか?」


「はい、もちろんでゴザイマス。

馬車を用意させて頂きマスので、外の階段の下でお待ち頂けますデショウカ?」


「分かりました」


私の返事を確認すると、ピエールさんは大聖堂の入口から出て行った。

急いでいる感じはしないが、歩くスピードはとても速い。これがプロの仕事だろうか。

それにしても――


「……個性的な喋り方をする方ですね」


本人がいない間に言っておく。

私はクセのある口調ってむしろ好きなんだけど、さすがに本人の目の前で言うわけにもいかないからね。


「あの方は王都で1、2を争うほどの不動産屋なんです。

アイナ様も今後のために、懇意にしておいた方が良いかと思いますよ」


私のふとした独り言に、反応してくれたのは大聖堂の人だった。

特に他意なく、本当に懇意にしておいた方が良い、といった雰囲気だ。


「なるほど。確かに、頼りになりそうですね」


「ええ、国王陛下から指名されるほどですから。

……さて、それではアイナ様。私はこれで失礼いたします。

何かありましたら、エミリア様を通してご連絡を頂ければと思います」


「はい、ありがとうございました」


挨拶をすると、大聖堂の人は建物の奥へと消えていった。



「それじゃ言われた通り、外で馬車を待ちますか。王都の中での馬車は、私は初めてだなー」


「私は往復で1回ずつ乗ったことがありますが、なかなか良いものでしたよ」


ルークが馬車に乗ったときって、確かオティーリエさんと遭遇したときだったよね。

その辺りのことは記憶から削除しているのか、ルークの表情は明るいままだった。……それなら、敢えて思い出させる必要もないか。


「実は密かに楽しみにしてたんだけど、やっとそれが叶う~♪

では、馬車に向かいますよー」


「「はい!」」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




馬車に揺られながら街並みを楽しんでいると、すぐに目的地に着いてしまった。

場所としては大聖堂と王城の中間くらい、住宅地と商業地の境目あたりの立地のようだ。


馬車から降りると、ピエールさんが満面の笑みを向けてきた。


「どうデスか、アイナ様!

こちらの建物は、錬金術の商品を販売するための店舗としてご使用頂けマス。

他の商業施設からは少し離れておりマスが、むしろその距離が閑静な雰囲気を醸し出しているデショウ?」


ピエールさんの指差す方を見てみれば、緑豊かな道の向こうに、少し大きめの建物が見えた。

割とこじんまりしたものをイメージしていたんだけど、想像よりもかなり大きかった。


少し呆気にとられながら中に入ると、大きめのコンビニが2軒分……くらいの広さをしていた。

内装はどこか安心できる、木やレンガで作られた優しい感じだ。いわゆるファンタジーの雑貨屋さん、みたいな感じかな。


「わぁ、とっても素敵ですね。……ちょっと広いですけど」


「商売を始めてしまえば、これくらいは必要デスヨ。

アイナ様は王族の依頼も多く受けているということデスし、陳列する品物もきっと多くなるデショウ?」


「そうですね。使わなければ、一旦見えないようにしておく……っていうのでも良いかな」


「テーブルや椅子などは最低限だけご用意いたしマシタが、それでも商売をするには足りないデショウ。

私にご連絡頂ければ、可及的速やかに対応させて頂きマスので、お気軽に連絡をお願いいたしマス」


「分かりました、よろしくお願いします」


「さて、それでは次に工房へご案内させて頂きマス」


「え? あ、はい」


そういえば、今回もらうのは工房がメインなんだよね。

そう考えると、お店スペースと居住スペースはむしろオマケになるはずなんだけど……最初から、想定外のオマケを見せられてしまった。


そんなことを思いながら、ピエールさんに付いて行く。

私のあとをルークとエミリアさんも付いてくるが、二人は沈黙を守ったままだ。


不思議に思ってちらっと見てみると、『こっちよりもピエールさんの案内に集中してください!』ばりのジェスチャーをされてしまった。

っていうかむしろ、私の反応を見て楽しんでいるように見えるかも……。



「――ここが工房になりマス。具体的に言いマスと、錬金術の作業場になりマス。

こちらでも、使うだろうと思われるモノは、一通り搬入させて頂きマシタ」


「おお、これは凄い……」


広さは先ほどのお店と同じくらい。

しかし何よりも違うのは、様々な機材が置いてあることだった。


錬金術の代名詞っぽい大釜もあれば、化学の授業で見たようなフラスコやビーカーもあるし、初めて見る器具なんかも置いてある。

私の錬金術は一瞬でバチッと終わらせちゃうけど、本来はこういう機材を使うんだよね……。


「錬金術師ギルドと相談して取り寄せたのデスガ、不足があればこちらもお申し出クダサイ。

もちろん、ご自身でご用意頂いても問題アリマセン。何せ、錬金術はアイナ様の方が専門なのデスカラ」


スキル任せが故に、自信を持って頷けないところだけど……客観的に見れば、絶対的にそうなんだよね。

それならここは、自信を持って返事をしておこう。


「分かりました、何かあれば相談させて頂きますね」


「はい、よろしくお願いイタシマス。

それでは最後に、お住まいの案内をさせて頂きマス。別の建物にナリマスので、移動をお願いしマス」


「……え? この建物とは違うんですか」


「はい。この建物は、あくまでも工房と店舗デス。

お住まいは、この建物の裏手にナリマス。

本来は別の物件だったのデスが、国王陛下より要望を承りマシテ、一緒にご案内させて頂くことにナリマシタ」


「なるほど、ここは住宅地と商業地の境目あたりの立地ですもんね」


「ハイ。この建物からは、裏庭から直接移動することがデキマス」


「なるほど。

……あ。でも最初は、玄関から見てみたいかも」


「それはゴモットモ。

玄関側が第一印象にナリマスので、アイナ様も第一印象から見ておくことにイタシマショウ」


元来た道を引き返して、馬車を止めていた通りまで戻り、そこから道なりに移動していく。

……それにしてもこの辺りって、大聖堂と王城の間という立地だけに……何だか豪邸も見え隠れするんだけど?


やっぱり、貴族や富豪なんかがたくさん住んでいるのかな?

でもこんな商業地の近くだし……ああ、地位が高い人ほど、もっと離れたところに住んでいるとか……そういうこともあるのかな?


とすれば、私の場合は住宅地側の端っこになるわけだし、とんでもなく高級な場所では無いんだろうな。

……それなら安心か。


「アイナ様、こちらの建物にナリマス」


「……え? どれですか?」


「目の前の、こちらの建物デス」


「え? 豪邸しかないんですけど」


「ハイ、こちらデス」


……目の前に広がるのは、大きなお屋敷。

えぇっと……これは、小学校か中学校くらいの大きさくらいはあるかな……?

庭では何だか、噴水が水をぴゅーぴゅー出してるし……。


「……居住スペースとは……言いませんよね、これ?」


「居住スペース、デスカ? どこかで情報が混線しているようデスネ?

私どもは、特にそのような言い方はしていないハズデスが……」


……そうすると、そう言い始めたのはレオノーラさんかエミリアさんかな……?

まぁ、今はとりあえず置いておいて――


「……えぇっと、それでは中も案内して頂けますか?」


「もちろんデスとも。

ご満足頂けるよう、必要な手配は済ませてオリマス」



私の満足ラインはもっと低いところにあるんだけど――


……いや、それにしてもこんな大きい建物、さすがに一人じゃ管理できないよね?

っていうか、三人でも無理だよね?

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

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