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ヨルコに対して、なにか他人とは違う感情を抱いていた名良(なら)。
過去に覚えた感じの感情で、その感情にはいい思い出もあるが
結末は苦い思い出だったので、その感情には蓋をしようと思っていた。
友達。イサさんはただの友達。女友達
そう言い聞かせて。
「そう。イサさんはただの女友達だ。うん。女子の友達がひさしぶりだから変な感じになってるだけだ。うん」
心で思っていたが、考えすぎて無意識に口に出ていた。するとその声が届いたように
「紺堂くん、おはよー」
とヨルコの声がした。ドキッ!っとして胸を抑えて立ち止まる。
「…。…ビックリ…したぁ〜…」
「ご、ごめん。驚かせちゃった?」
名良は顔を上げて、息を吐いてから
「大丈夫大丈夫」
と言いながら歩き出す。
「おはよー」
「あ、…おはよう」
「どうしたの?なんかいつもと違わない?」
と心の細やかな変化をヨルコに見抜かれて
「そ、そう?いつも通りだと思うけど」
と自分を騙すように繕う名良。
「そおかなぁ〜…」
と言いながら名良の顔を覗き込むヨルコ。
前屈みになることでヨルコの綺麗なピンク色の長い髪が揺れ、シャンプーの香りが名良の鼻に届く。
さらに、覗き込むということは少し前屈みになるということ。
名良より視線が低くなるので、名良から見るとヨルコが上目遣いでこちらを見ていることになる。
ただでさえ大きな目がさらに大きく見え、その綺麗なピンク色の瞳に吸い込まれそうになる。
名良は大袈裟すぎるくらいに顔を逸らす。
「なんで顔逸らすの」
「え。いや、なんとなく。虫飛んできた気がして」
と言いながら、いない虫を払う仕草をする。
「…ふうぅ〜ん?」
「てかあれなんだね。今日はツインテールなんだね」
ヨルコのいい匂い、目に吸い込まれそうになったことを隠そうと思って咄嗟に思ったことを
頭の中の検査場を通さずに口にした。しかし頭の中の検査場を通さなかったせいで変なことを言った名良。
しかし気づいたときには時すでに遅し。口から出ていた。
「そうなの!どお?似合う?」
とピョンッっと名良の前に出て聞くヨルコ。
「ま、…まあ、。似合うんじゃ、ないかと」
「なにその言い方」
と笑いながら名良に背中を向けるヨルコ。そしてもう一度名良のほうを向いて
「でもありがと」
と言った。その一連にもれなくキュンとする名良。そのキュンをかき消すように自分の胸を拳で叩く。
「うっ」
思いの外強く叩きすぎて、ダメージを負った。
「えっ。大丈夫?」
「大丈夫大丈夫…」
胸をさする名良。
「そお?でも初めてだね。登校中に会うの」
「あ、たしかに。こんな目立つのに見かけたこともない」
「目立つ?」
「目立つね。他の高校は校則緩いとこもあるけど
うちは厳しくもないけど、緩くもないから、みんな黒髪だし。
いて茶髪。そんな高校の制服でピンク髪は目立つよ」
「そっかそっか。まっ、いつも飛んで行ってるからねぇ〜。見かけなくて当然かと」
と言うヨルコに
「そんな大急ぎで学校来てるの」
と笑う名良。
「いやぁ〜…あ、飛んで行くってそうなるか」
と言うヨルコに「?」と思う名良。
「まあぁ〜、急いではないんだけどぉ〜、飛んでは行ってる」
「なんだそれ」
と笑う名良。
「急いでないのに飛んで行く意味ってなに」
「あぁ〜…。…たしかに。ふつーに行けばいいのにね?めんどくさいからかも」
「いや、急いで行くほうがめんどいでしょ」
「…たしかに」
「イサさんって意外と抜けてるんだね」
「抜け、失礼な」
「いやだって、急いでもないのに飛んで行ってるって言うし、それに気づいてもないし」
「違いますー。ほんとーに飛んで行ってるんですー」
「なに?ヘリコプターとかで来てるめちゃセレブとか?」
「めちゃセレブではないけどそんな感じー」
「じゃ今度注意深く空見とくわ」
「あ、それはちょっと困るかも」
「なんでよ」
「えぇ〜〜…とぉ〜…」
と悩むヨルコ。
「あ!ほら!」
と思いついたように言い
「スカートだからさ?見えちゃうじゃん?」
とスカートを押さえるヨルコ。
その様子に変なことを想像し、口元を押さえながら視線を逸らす名良。しかしすぐに
「…いや、そんな低空飛行なの?」
と疑問が口から出た。
「…あ。たしかに。そんな低空じゃないから見えないか。でもダメ」
「なにそれ」
と2人で笑った。
「いつも雲善(うんぜん)くんと学校来てるよね」
「いつもではないけど、ま、多いかもね」
「家近いの?それとも学校前とかで会うの?」
「学校前とかだね。登校中にだいたい雲善に気づかれる」
「風善(ふうぜん)くんと恋弁(れんか)も一緒?」
「一緒だね。それこそ家近いらしくて」
「そうなんだね。幼馴染なんだよね?」
「そうそう。えぇ〜っと。今日都(きょうと)さんとその話したりするの?」
「するよぉ〜。いろいろと」
「いろいろと?たとえば?」
と名良が言うと、ヨルコは名良のほうを向き
「それはヒミツ〜」
といたずらな笑顔で言った。名良はそのヨルコの笑顔がめちゃくちゃ輝いて見えた。
そんな話をしながら学校へ向かった。
教室に入ると雲善はまだ来ておらず、琴道(ことみち)が糸と嶺杏(れあ)と話していた。
「珍しい」
思わず呟く。
「たしかに」
ヨルコが同意すると、糸がヨルコに気づいてヨルコに手を振る。ヨルコも振り返す。
琴道は嶺杏と話していた。ヨルコと名良は席に座る。そして同時に教室内の時計を見て
「今日ちょっと早かったかな」
と言う名良と
「今日ちょっと遅かったなぁ〜」
と言うヨルコ、同時だった。同時だったことに2人とも気づいて、お互いのほうを見る。
すると目が合ったヨルコが「同時だったね」と言わんばかりに笑った。
その笑顔とそのシチュエーションにドキッっとする名良。名良がドキッっとしていると
「はーい!おっはよー!」
と大きな声がしてさらにドキッっとなる。
「よお名良」
声の主は雲善で、名良の頭に手を置きながら自分の席に行った。
「イサさん、おはようございます!」
「雲善くん、おはよー」
「イサさん、今日もめちゃくちゃ可愛いですね」
とストレートに言う雲善に
こいつ…すげぇハートしてんな
と思う名良。
「ありがとう」
とお礼を言うヨルコ。担任の先生が入ってきて朝のホームルームが始まる。
朝のホームルームが終わり1時間の授業に。
先生が黒板に書いている間に、ヨルコが名良の机の端に付箋を貼った。
名良はその付箋に気づき、机から剥がし見る。
紺堂くんも素直に“可愛い”って言ってくれていいんだよ?
と書いてあった。思わずヨルコのほうを見る名良。
先生がもうこちらを向いていたので、ヨルコも先生の話を聞くように、まっすぐ前を見ていた。
その綺麗な鼻筋、横から見ても大きな目、綺麗なピンク色の瞳
その瞳を守るようにカールした長くピンク色のまつ毛、ぷるんとしているツヤのある唇。
その唇を見た瞬間、勝手にドキッっとして視線を逸らした。
かわ…いいけどさ…
と思う名良。しかしなんて書いていいかわからず、悩んでいたら1時間目が終わった。
2時間目の授業が始まり、先生が黒板に書いている間にヨルコの机の端に付箋を貼った名良。
ヨルコは付箋を剥がして読む。
まあ いずれ機会があれば
という堅い文に思わずクスッっと笑うヨルコ。そんなこんなで午前の授業中が終わりお昼の時間へ。
「さてさて。尋問の時間といこうではないか」
と唐突に言う雲善。琴道、風善、名良は無言で「?」状態である。
「琴道くん」
「あ、オレ?」
驚く琴道。
「そうですよ。ちみしかいないでしょうに。同じクラスは名良とちみだけなんだから」
「はあ」
「さてさて。尋問タイムだ」
「はあ」
「福留さんとぉ〜、ずいぶんと仲良くぅ〜、っしてるじゃないの」
「…はあ」
「付き合ってんの?」
と言う雲善に
子どもか
子どもかな?
兄ちゃん…
と思う3人。
「ねえねえ」
「いや。ふつーに付き合ってないです」
「え、じゃあ好きなの?」
と言う雲善に
子どもか
子どもかな?
…。兄ちゃん…
と思う3人。しかし
「え。好き、じゃないん、じゃ、ないでしょうか」
と歯切れの悪い琴道に、名良も風善も「え?」という表情になり
聞いた雲善は、もちろんニヤァ〜っとなった。
「詳しく聞こうか」
と聞き出す気まんまんの雲善。
「fool畑任三郎だと思った」
と言う風善に
「fool畑任三郎ってなに」
と言う名良。そこから尋問が始まった。
「え、そもそもだけどさ。福留さんとなに話すの?」
「え。いや、まあ、音楽の話とか」
「音楽!?」
「そんな驚く?」
「いやぁ〜。長い付き合いだけど、琴道が音楽に詳しいなんて知らんかったから」
「長い付き合いって。まだ1ヶ月だけど」
「え。陰でドラムとかやってる感じ?」
「いやしてない。そもそも音楽も詳しくない」
「は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする雲善。
「音楽の話してるゆーたやんか」
なぜか関西弁になる雲善。
「うん」
「は?わけわかめ」
「どーゆーこと?」
と風善が聞く。
「いや、アニソン」
「え。福留さんってオタクなの?意外すぎるんだけど」
「いや、福留さんはヲタじゃないよ。オレの見てるアニメほぼ知らなかったし」
「は?なに?わけわかめすぎるんだけど。増えるワカメよ」
名良も風善もよくわからずにいた。
「いや。最近のアニソン、…ま、アニメの主題歌ね?オープニングとエンディング。
最近のオープニングとエンディングさ?バンドとか、すでに有名なアーティストが担当することがあるのね?」
「へえぇ〜」
「たとえばZZzzz夢の中zzzZZ(ずっと夢の中)とかI want to be jellyfishとか
replicestとかうん(アーティスト名)とか」
「マジ?最初の人以外全員知ってる」
「そういえば1年の頃そんな話したね」
「そうそう。それでそのアーティスト好きなの?みたいな話をしてる」
「ヤバ。オタクでもキッカケになることあるんだな」
「兄ちゃん、オタクの皆さんに失礼」
「え?まあ、そうか。ごめん琴道。オタクの代表者として琴道に謝る」
「え。やめて?オレがヲタクの代表者だなんて、先人の皆様に申し訳なさすぎる」
「あ、そっちなんだ」
「あとヲタは大概魔法使いだから別に失礼ではないと思う」
と先人に辛口な琴道。
「で?琴道は福留さんにそのアニメをおすすめしたり
熱く語ったり「原作貸しますよー」とか言ってるわけか」
「はいはいイチャイチャイチャイチャ」と言うような言い方で言う雲善。すると
「え。全然アニメの話はしてないよ」
とさらりと言う琴道。
「は?福留さんはオタクじゃないんでしょ?」
と整理を始める雲善。
「たぶん」
「琴道はそう感じなかったんだよね?」
と聞く風善。
「うん」
「で、アニメの主題歌が有名アーティストが担当してて
福留さんはそのアーティスト知っててその話題で話してるんでしょ?」
と言う雲善に
「うん」
頷く琴道。
「で、琴道はそのアーティストについて詳しくもない」
「うん」
「でもその主題歌のアニメの話もしない」
「うん」
「…。…え。なんで?いい話のタネやん」
「いや、普通に同担拒否だし」
「…なんだっけ、ドータンキョヒって」
と言う雲善に
「同じ人を好きな人を遠ざけるみたいな。
同じ担当、同じキャラを好きな人と仲良くするの拒否って覚えたら覚えやすいよ」
と言う風善。
「なるほど」
「でも、同じキャラを好きにならなければいいだけの話じゃないの?」
と言う風善に
「いや、オレ基本的に作品自体を推してるから。いわば箱推し?いや、その世界自体を推してるから
いや、最近になって「推す」って言葉が一般人に浸透して、「推す」っていうことが軽い感じに扱われてるから
「推す」って言葉も使うの好きじゃないんだよね。「愛」だから。
わかる?かつてのヲタクの先人の皆様の「推す」という言葉には純粋な「愛」があった。
ま、「オレの嫁」とか言ってる先人も多くいたけど。
でも最近使われる「推し」って言葉には「愛」がない。いや、ある人もいるだろうけどさ?
そもそもなに?「推し活」って。活動?は?
先人の「推し」の純粋な「愛」を借りると「愛する活動」だからね?意味がわからない。
「愛する」に「活動」つけんなよ。って話。婚活ってさ?結婚するための活動でしょ?
ってことは、当たり前だけど、結婚してない人が結婚するための活動ってことじゃん?
それに当てはめると、愛する活動って
愛することを知らない人が愛することを知るための活動ってことじゃん?
だからオレは「推す」という言葉はもう使わない。そんな軽くないから」
と熱弁する琴道に
「うん。重いわ」
と呟く雲善。その後も琴道の熱弁は続いた。午後の授業が始まり
雲善はお昼も授業を聞いていたような感覚で、なおかつお昼ご飯を食べてお腹が満たされ余裕で寝ていた。
お昼ご飯を食べてお腹が満たされて眠くなって寝てしまうというのは糸も同じ。
しかし後ろの席の嶺杏にイスの底をつま先で蹴られ、はっっと目を覚ますが
またうとうとして寝そうになる。その繰り返し。
そんなこんなで午後の授業が終わり、雲善と風善は部活に。
中間テストが近くなってきたが、琴道は一応、授業をちゃんと聞いていて
テスト勉強をせずとも赤点は取ることはないくらい
そしてテスト前は、しっかりは詰めてテスト勉強はしないが、平均点くらいは取れるくらいの学力。
名良も、特別頭は良くないが、今まで赤点は取ったことがないほどの学力。
ということで帰ることにした。家に帰り、着替え
キッチンへ行き、飲み物を飲むために冷蔵庫を開いて飲み物を飲み
夜ご飯まで部屋で過ごし、夜ご飯の時間になり
家族全員で夜ご飯を食べ、リビングで寛いでいた。するとキッチンから
「え。ないんだけど」
という声がする。しかし聞き流してテレビを見ていた。
「お母さん、ゼリー知らない?」
「え?ゼリー?どんなの?」
「ダレモン(ヨダレモンスターの略)のやつ」
「知らないけど」
「お兄ちゃん」
と呼ばれて振り返る。
「ん?」
「ゼリー。知らない?」
と言うのは名良の妹、名美(なみ)だった。名美は現在13歳の中学2年生。
「ゼリー?」
と言ったがすでにわかっていた。帰ってきて着替えて、キッチンへ行き
飲み物を飲もうと冷蔵庫を開けたときにゼリーがあったので食べたことを。
「…」
黙っているとすぐに気づかれた。
「買ってきて」
「は?」
「買ってきて。楽しみにしてたんだから」
「は?めっちゃふつーの味だったぞ?特筆して美味しくも変わってもない。
なんならちょっとキモかった。硬いゼリーとほぼ液体のゼリーがあって」
「勝手に食べといて文句とかマジあり得ない。いいから買ってきて」
「明日でいいっしょ」
「今。Now」
結局名美の圧力に負けて買いに出た。
近場のコンビニに入り、ゼリーを探すためにデザートのコーナーを探していると
「お。こんどぅーくんじゃん」
糸がいた。
「女楽国(にょたくに)さん」
「ちーす」
「なにしてんの?」
「ま、こっちのセリフでもあるけど。お姉ちゃんがコンビニ行くって言うからついてきたのだよ」
と糸が飲み物が置いてあるほうを見る。名良もそちらを見ると、糸の姉らしき人がいた。
「で?紺堂きゅんはなにをしに?Youはなにしにコンビニへ?」
「妹のゼリー食べて、めっちゃ怒られて買ってこいって言われて」
「勝手に食べたん?」
「食べた」
「そりゃーいかんね」
という話をしながら棚を見ていたら、学校から帰ってきて食べたゼリーを1つ見つけた。
「あぶな」
と言いながら手に取る。
「あ、ダレモンのゼリーね。今人気だからね。あってよかったね。奇跡じゃん」
と言う糸。
「あ、そうなんだ?人気なんだ?全然知らなかった」
「私も食べたよ」
「あ、そうなんだ。なんか…」
キモかったって言ったらマズイか
と思い
「変わってるよね」
と言った。
「あぁ〜硬さが違う2種類のゼリーね」
「そうそう」
と名良が言うと、糸がゼリーのパッケージの上部を爪でトントンとして
「見てみ?」
と言う。なので見てみた。
「…うん。ダレモンね。さすがに知ってる」
「いやいや、そこじゃなくて」
と言って、糸は名良の持っているゼリーを横に傾けた。
すると蓋に描かれているダレモンの口からヨダレが垂れるように柔らかいゼリーが垂れていた。
そのゼリーの蓋部分にはダレモンのイラストが描かれているのだが
体の部分が透明になっていて、中のゼリーが見えており
ゼリー部分は、大半が固めのゼリーで、その固めのゼリーの蓋のダレモンの口辺りが口の形で穴が空いており
その穴にほぼ液体のゼリーが入っていて、傾けると
口に溜まっていたヨダレを模したほぼ液体状のゼリーがだらぁ〜っと垂れて
ヨダレを垂らしているように見えるというデザインになっていた。
「うえっ」
思わず声が漏れた。すると糸は笑った。
「まあ、気持ちはわかる。でもそれが今流行ってるんだってー。
なんかいろんな味あって、ヨダレだけ他の味と入れ替えて動画撮ったりして投稿してるらしい」
と糸に言われて気づいた。
「あ。マジだ。昼食べたのと色違う」
「あ。妹ちゃんに怒られるやつだ」
「え。怒られるかな」
「たぶんね」
「マジか…。めんど」
「めんどって」
と笑う糸。
「何味だった?」
「グレープ」
「おぉ〜。じゃ、他のとこも行ってみる?」
「え?」
「糸様が付き合ってあげよう」
ということでとりあえず、もしなかったときのために、念の為オレンジ味のゼリーを買ってコンビニを出た。
「お姉ちゃん。私クラスメイトの子とコンビニ行ってくる」
と糸が姉の紡に言う。
「ん?」
と糸の姉、紡が糸の横の名良を見る。
「彼氏?」
と糸に言う紡。
「違うよ。単にクラスメイトで男子の仲良い子」
名良がペコッっと頭を下げる。紡もペコッっと頭を下げる。
「コンビニってこことは別のってこと?」
「そそ」
「まーいいけど、気をつけてよ?」
「はいはーい」
と言って糸と名良は別のコンビニに向かった。
「紺堂きゅんはさ?」
きゅん
と引っかかるがツッコミはせず聞き続ける名良。
「何人兄弟?」
「何人兄弟?」
「うん」
「妹が1人だけ」
「あ、そうなんだ?長男」
「だね」
「へえぇ〜。私はさ?末っ子なんだよねぇ〜。お姉ちゃん1人にお兄ちゃん1人」
「そうなんだ」
「仲良(なかい)?」
「んん〜…。いや。良くはないかな。こーやって兄を走らせてるわけだし」
「でも行ってあげる辺り優しいよね」
「…。そうかな」
「そうだよ」
「でも、行かないとめんどくさいからっていうのだと思う。優しさとかではなく」
「なるほどぉ〜。そっちかぁ〜」
と笑う糸。コンビニとコンビニの距離はそんなに遠くなく、すぐに着いた。
「同じコンビニがこんな近くにあるのなんでなんだろうね」
「たしかに。ま、コンビニだからじゃない?」
「おぉ。コンビニだからか」
「便利だからね。コンビニエンス。その名の通り」
「…。え。そうなの?英語なの?コンビニって」
「コンビニはわかんない。和製英語かも。でもコンビニエンスは英語だね。便利とかって意味」
「え。紺堂きゅんって頭良い系男子?」
「残念ながら良くはないですね」
と話しながらスイーツコーナーに行くと、ゼリーが2つだけ残っていた。オレンジとグレープ。
「危ねぇ〜。あった」
「よかったね。またオレンジある。人気ないのかな。私のお家においで」
「そんなペットショップで売れずに大きくなった子みたいに」
と名良が言うと糸が笑う。
「紺堂きゅん、おもしろいこと言うね」
2人はレジで会計を済ませ、コンビニを出た。そして帰り道を歩く。
「紺堂きゅんってもっと静かな、そんな感じのタイプの人だと思ってた」
とゼリーを食べながら言う糸。
「あぁ。ま、顔がね。陰キャタイプの顔というか。目つきも悪いし」
「そお?いいんじゃない?キリッっとしてて」
「キリッ…っとしてんのかな」
「それも個性個性」
とあっけらかんと笑いながら言う糸。
その様子がどこか名良のかつての幼馴染、子那恋(しなこ)に似ていて、思い出しそうになって頭を振る名良。
「紺堂きゅん家こっちなの?」
「いや、送ってったほうがいいと思って。付き合ってもらっちゃったし」
「え。優し。なんなん?」
「なんで怒るの」
「怒ってはないけど」
なんて話しながら糸を家の前まで送り
「じゃ。送ってくれてサンクスぅ〜」
「はい」
「また学校でねぇ〜」
と手を振って家に帰る名良。リビングに行って
ソファーに座ってテレビを見ている名美の前のローテーブルにレジ袋を置く。
「遅いわ」
「買ってきてやって文句かよ」
「勝手に食べたお兄ちゃんが悪い」
と言いながらレジ袋を覗く名美。
「おえっ。2個ある。なんで?」
「いや、行ったコンビニにオレンジしかなくて、文句言われるって言われたから」
「言われた?誰に?」
「同じクラスの子」
「え。女?」
「言い方」
「え。彼女?なわけないか」
腹立つな
と思いながらも
「なわけない」
そもそも恋愛をやめていた名良にとっては「なわけ」なかった。
「だよねぇ〜。え。その人に感謝しなきゃ」
「オレにだろ」
「あざすあざすー」
と言う妹に
仲は良くないよな
と思う名良。お風呂に入って部屋に戻り、スマホの画面をつけると
雲善、風善、琴道と名良、4人のLIMEグループの通知に加えて糸から
糸「ありがとぉ〜ねぇ〜」
バンドマンの男の子のキャラクターが「ありがとー!」と言っているスタンプ。
と送られてきていた。それに加えて、ヨルコと続いているメッセージの返事が来ていた。
ヨルコ「妹さんのためにわざわざ?優しいね」
そのメッセージを通知欄で見て、先程の糸にどこか子那恋と似たところを感じてしまい
呼び起こされそうな感情を、ヨルコのメッセージに対して思いそうになり
「違う違う違う違う」
と呟きながら部屋を歩き回る名良だった。
#創作
龍

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あ〜〜〜第18話読んだよ! ヨルコ、めっちゃ“彼女感”出てきたな…!? 付箋で「可愛いって言っていいんだよ」って送るとこ、完全に距離詰めてるやつ。名良くんの心臓がいくつあっても足りんわ(笑)。 琴道の「推し」論もツボった。真面目にヲタク語ると急に重くなるの、なんかリアル。 最後、糸さんを昔の幼馴染と重ねて慌てる名良くん、ここからどうなるんだろ。次もすごく気になる🔥