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アオノミライ ~ネコロマンサーと掃除機が、絶滅どうぶつの魂を今日も集める!~ 【能力の無駄づかい編】
第13話 - 第2話-1 ギガントピテクス3 『バットが火を噴いた ③』
10
2,067文字
2026年05月08日
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「なあグエンさん。復讐には手を貸せないが、他に望みはないか?」
「故郷の中国へ観光しに行きたいです」
「却下だ。遠い。国内にしろ」
望みを聞いておきながら、何を言ってんだコイツという目を向けるマキネをよそに、リクトは淡々と話しを続行する。
「グエンさん。魚は好きか?」
「いえ、あまり。草食系なんでフルーツのほうが……」
「まあいい。グエンさん。外来生物の殲滅を手伝ってくれ。まずはブルーギルだ」
ブルーギルは元々、北米の中部・東部に広く分布する魚である。
食性は幅広く、水質汚染などにも適応力がある。
卵と稚魚を親が保護しているため捕食者は手を出しづらい。
こうしたことからブルーギルは短期間で個体数を増やせるため、移入先に定着し、世界各地に分布している。
日本においてブルーギルは、特定外来生物に指定され、各地で導入の阻止や駆除が進められている。
「なるほど。グエンさんの鬱憤晴らしに良さげっすね。でも、依頼主をこき使っていいんすかね」
「だ、大丈夫です……」
リクトには逆らうまいと、グエンは心に誓ったようだ。
目の前をハリセンが行ったり来たり。
グエンが反論できる余地はない。
「湖に移動する。グエンさん。一旦、ぬいぐるみから出てくれ」
すごい勢いでハリセンを数回振りながら、リクトは頭上を見据える。
「除霊ですね。わかりました」
「ちょっと痛いぞ」
ちょっとどころではない。振りおろしたリクトのハリセンが火を噴いた。
四つん這い状態のグエンの後頭部に強烈な一撃が決まる。
すぐさま、恍惚とした表情のグエンの臀部から霊がプリっと放たれた。
若干赤みを帯びた霊は、すいすいスウ~っと消えてゆく。
「今の音聞きました? ガコン、プリって。グエンさんの目から火花出たし。あ~腹痛て! ってか、ハリセンがぶっ壊れてるし。リクトくん、手加減しろってばさ。あれじゃグエンさん死んじゃうってばさ。あ、もう死んでるか。グヘヘヘ。あ~あ、ぬいぐるみの首がふっ飛んじまったじゃねぇか!」
無残な姿になったぬいぐるみを抱きかかえ、のたうち回って笑うマキネ。
除霊は誰が何度見ても笑ってしまう瞬間だ。
ひとりを除いては……。
ブタ鼻混じりで笑い転げるマキネに冷たい視線を送りながら、リクトは予備のぬいぐるみを地面に置く。
絶滅生物図鑑をめくる手を止めた。
「マキネ。少し下がってろ。超大物が来る」
「え? 何を呼ぶんすか?」
「来い、アルゲンタビス・マグニフィセンス」
とき置かずして、漆黒の羽を纏ったアルゲンタビス(巨大なコンドル)が現れる。
大きな影がリクト達を覆った。
さすがのマキネも腰を抜かし、尻もちをつく。
大きな脚で大地をガッチリと掴むアルゲンタビス。
八メートルという大きな翼を広げた。
先端の曲がった大きなくちばしを開き、リクトを威嚇する。
「落ち着け」
リクトは一ミリたりとも動かず、アルゲンタビスを睨みつける。
大破したハリセンを遠くに放り投げると、黒い液体の入ったボトルをちゃぷちゃぷと揺らしす。
悪そうな顔で、一歩前に踏み出した。
リクトはボトルと紙皿を持った手を上に掲げる。
「お前に危害を加える気はない」
「ウソつけ! 手に持っている『焼き鳥のタレ』を下に置け。話しはそれからだ」
驚くほどのバリトン・ボイスで返事をするアルゲンタビス。
「わかった。実は頼みがあってな」
リクトは、真顔でボトルのフタに手を掛ける。
「頼みとは? いや、だから、タレのフタを閉めろって……」
「俺を湖まで運んでもらいたい」
「なぜこの俺がお前を運ばなければならんのだ?」
リクトを見下ろすアルゲンタビスの目つきが鋭さを増す。
「強要はしないが、話しを聞いて欲しい」
リクトの言葉に対するアルゲンタビスからの返事はない。
しばらく続く、リクトとアルゲンタビスのにらみ合い――。
痺れを切らせたマキネが頬を掻きながら、ふたりの間に割って入る。
「リクトくん。ぬいぐるみに憑依できる時間は結構短いんで、早めに切り上げてくださいな。持って三時間くらいっす」
ぬいぐるみに憑依できる時間は動物の大きさ等に左右される。ねずみほどの大きさであれば、二十四時間というところだ。
「マキネ。お前は漁に使う網、除霊用クリーナー、救急箱、ぬいぐるみを数体用意してくれ。準備ができたら現地《湖》に来い」
リクトは言いながら、湖の呼称、他に必要そうな物を記したメモをマキネに渡す。
何かあった場合に危険が及ばないよう、マキネを先に湖に向かわせたのだ。
「ラジャっす!」
マキネは短い足を一心に動かし、ジャリを蹴散らしながらダッシュで走り去った。
「さて、話しの続きだが」
リクトは「怪鳥を絞めるのは初めてだ」とブツブツ言いながら火を起こすと、刃物や串などを準備する。とどめに焼き鳥のタレを紙皿に数滴垂らした。
脅しはこのくらいにして、しっかりと説明するか。
リクトは、アルゲンタビスに事情を話し本気の説得を始めた。
アルゲンタビスの説得、いや脅迫に成功したリクトは、とある湖へと向かった。
#バトル
#成り上がり
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