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藤澤 side …
もしかして、僕のことが好きなのかな?
そんな淡い考えが頭をよぎった。そういえば、元貴が好きな人の話をしているとことか見たことないし、元貴が僕以外の誰かと二人でいるところとかそんなに見たことないし…もしかして…?なんだか体の熱が徐々に上がっていっている気がする。
「んー、これにしよ!」
静かにイヤリングを眺めていた元貴がパッと顔を上げる。突然のことに少し驚いたが、落ち着いて元貴に話しかけた。
「どれにするの?」
そう問いかけると、元貴はショーケースの奥側に置かれた1つのイヤリングを指さした。それは、このショーケースの中で1番の輝きを誇る、紫色の小さなアメジストが控えめに装飾されたものだった。
「もっと派手なやつもあるけど…これでいいの?」
そう問いかけると、元貴は、いいの、と呟いた。
「普段の生活に付けたいなーって思っててさ、あんまり派手すぎると服装とかも気にしなきゃでしょ?」
あー、と僕は首を上下させた。普段の生活に付けたい、それも僕とのお出かけでそれを買う、なんだか心がついつい踊ってしまう。元貴は、お会計してくるね、と言って、カウンターの方へと歩いて行った。
「おまたせ」
元貴が高級そうな紙袋を腕にかけてこちらにやってくる。
「どーする?そろそろ混みあってくる時間になるけど…」
「今日はもう帰ろっか!」
元貴は俺の隣を通り、デパートの出入口へと向かっていく。なんだろう。遠のいていくその背中に、少しだけ胸が苦しくなった。
「…涼ちゃん?」
元貴がこちらに振り向く。
「ぁ、ごめん!行こっか!」
僕は小走りで元貴の元へと駆け寄った。少し寒い冬の時期。外へ出ると、あっという間に空は橙色の夕焼けとなっていた。
今日もこうやって2人で帰る。今日は少しだけ早いけど、君と買い物が出来て本当に嬉しかった。心の中はまだ舞い上がったままで、なんだか今にも口から”僕の気持ち”が零れてしまいそうだった。
「やっぱ夕焼けって綺麗だね、俺夕焼け空好きなんだよねー」
空を見上げながら元貴が呟く。
…”好き”、か。人の好きは様々だ。だから好きという言葉は曖昧に使ってはいけない。僕の元貴への「好き」は本物の好きで、簡単には伝えられない「好き」だ。
「…僕も好きだよ」
もしも、この「好き」が君のことだったら、君はどんな顔をするのかな?元貴は、いいよね、夕焼け空、と空を見上げてはニコッと微笑んだ。
「今日も送ってくれてありがと」
いつの間にか元貴のマンションの前まで来ていた。もう終わっちゃうのか。まだ元貴と話していたい。もっと元貴のことを知りたい。
「じゃ、またね!」
元貴が後ろを向いて、マンションの中へと入っていく。なんだか、今ここで別れてしまったら、もう会えない気がした。
「元貴!!」
去りゆく背中がピタリと止まり、こちら側に振り向く。
「…また休み明けも、一緒に帰れる?」
曖昧な誘いだった。明日も一緒にいたい。明後日も、1年後も、来世も。元貴は少し困ったように笑ってから、僕の問いかけに答えた。
「…うん、きっとね」
これも曖昧な返答。それでも僕の心の中は物凄く満たされた。君に必要とされている気がして嬉しかった。
このまま時が止まっちゃえば良かったのにな。
久しぶりのこちらでの更新笑
ここからは涼ちゃん目線での話が
繰り広げられていきます!!
涼ちゃん目線で、
若井さんが涼ちゃんになる(?)真相を
お楽しみください…🤫
それではまた次のお話で^^
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コメント
6件
ここまで一気見してきました…すごすぎてことばでないですまじで、フォロー失礼します✨
あー!!最高です!更新ありがとうございます😖💕 続き楽しみにしてますっっ!!🕊️
初コメです!このお話の新しいのが更新されるの楽しみでした!! 涼ちゃん何があったのかな🤔これからも楽しみにしてます!!