テラーノベル
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13
平和が崩れる音がした…。海は荒れ、風はやみ、地は揺らぎ、山は怒り、世界は少しずつしかし確実にその形を変えていく。
「…早くしないと世界は終わってしまう。」
「急ぎましょうか『リカルカ』様」
ここは……?俺は一体なにを…?
そうだ…。俺は、俺は漁に出てそれで……嵐に襲われて…。
思い出してきた。俺は、嵐に飲まれた船と共に海に落ちたんだ………。あの波にさらわれた俺は………。
ー聞こえるか人の子よー
声?だれかが俺に話しかけてしてるのか?
ー貴様に問う…。世界を変えることのできる力を有するなら貴様はそれを欲すか?ー
なんだ…?今俺は危機的状況に晒されてるはずなのに、何を問われているだ?
ー酷なことを人の子に告げる。お前はこの波によって命を散らした。これは事実だ。ー
俺…死んだのか?じゃあなんで今こうしてどこの誰かも分からないやつの声を聞けて…。いや、そんなことより仮に俺がその誘いを断ったらどうなるんだ?
ーどうもしない。ただ人の子はそのまま緩やかに死を待つだけだ。ー
では逆にその力を俺が望んだとして何がある?
ー過酷な試練が幾度となく立ち塞がり、酷く険しい道のりが待っている。だが、その間は人の子は新たな命を授かることが出来る。ー
つまるところもう一度生きるチャンスをくれる訳か。
ーどうする?緩やかな死を待つか、試練の待つ現世に戻り喘ぎ苦しむ死を向かえるか。ー
過酷だとか険しいとか言われてるが、生き返れるならそっちを選ぶ。
ー汝の人生にクリスタルの加護をー
「……て……さい。おき………ください!起きてください!!」
「うぅ…。」
「よかった目が覚めたのですね!」
「ここ…は?」
「『ハルモニア』の宿屋です。貴方は荒れる海岸の浜辺にて気を失っていたのです。」
「そうだったのか……。」
「お若いの。自身の名は言えるか?」
「俺は…俺は『ヴェルド』だ。」
「うむ。意識も確かなようじゃな。」
「それでは申し訳ないですがわたくしは別件でここを出なくてはならないので、これで」
「あ、あぁありがとう…えっと……。」
「わたくしはリカルカと申します。」
「ありがとうリカルカ。」
そういい彼女とその付き添いと思われる老人は宿屋をあとにした。
「…確か俺は死んだ、らしいが今こうしてリカルカとも話せていたし違和感があった訳ではなかった。そうなるとさっき聞いたあれは夢か?なんにせよ現状を把握するためにも海岸に行ってみないと何も分からないか。」
ベッドから起きて部屋を出て外を確認しようとすると、受付のおばさんに声をかけられる
「おや?もう起きてどこかに行くのかい?」
「あぁ…。少しの間だが世話になった。ありがとう。」
「そうかい。それじゃあもしこのまま旅をするならこれを持っていきなさい。」
そういい彼女から世界地図を受け取る。
「いいのか?こんなものまで」
「歳食うと世話焼きしたくなるもんよ。」
「何から何までありがとう。」
地図を受け取り宿を後にする。外に出るとそこは自分が知らない光景が広がっていた。湖の上の孤島、その上に街が建っていたのだ。さらに言えば街だけでなく城も見えることからここはどうやら小国ではあるが、確かに国のようであった。
近くのベンチに腰掛け先程貰った世界地図を広げて現在地を確認する。リカルカが少し話していたがこの国は『ハルモニア』という場所らしいので地図でその場所を探す。少しして見つけることができるがそこは自分が住んでいた場所から遠く離れた地であることが分かった。
「ハルモニア…。えらく遠い場所に俺は流されたのか。とりあえず俺が打ち上げられたらしい海岸に行って船がどうなってるかだけでも確認しないと。」
地図をしまい、腰を上げて海岸を目指してヴェルドは歩き出す。
ヴェルドが海岸を目指す同時刻、ハルモニア城内ではリカルカとハルモニア王との対談が行われていた。
「あれから2年か…。時が過ぎるのは早いな」
「そんな長い間わたくしたちをこの国に滞在させていただき改めてありがとうございます。」
「いや、気にするでない。君のお父上やさらにその前の代から私達の国と仲良くしてくれているのだ。受けた恩は計り知れぬ、故にこれくらいのことはさせてくれ。」
「本当にありがとうございます。」
「して、例の件は考えてくれたかね?」
「はい。本日はその件についてお話ししようかと思いこの場を設けていただきましたから。」
「そうか…。では、単刀直入に聞こう。今はなき祖国『ヴィーダ』復興を辞めハルモニアの傘下に下るかどうか。」
「わたくしたちにはやらないといけないことがあります。なき祖国ヴィーダ復興もそうですが、それ以上に失われたクリスタルを再度わたくしが管理することです。」
「…そうか。やはり旅立つのだな。」
「ハルモニア王が私たちの安全を願ってのご提案というのは大変理解できますし、そのお気持ちも痛いほど分かります。しかし、いつまでもその善意に漬け込んでいてはご迷惑をおかけするだけでなく、わたくし自身が腐ってしまうと考えたからです。」
「リカルカ様!ハルモニア王のご提案をそのような理由で…!」
「取り乱すな『ミザルカ』これは彼女が自ら選んだ険しい道だ。そこに他者である私たちがあれこれ言う権利はどこにもない。善意も押し付けるようなものであればそれはかえって迷惑になる。提案を受け入れられないならその言葉の通り受け取り、手を引くことが彼女達のためになる。」
「……大変申し訳ありません。少々私も取り乱してしまいました。」
「とんでもないです。むしろわたくしたちの方こそご提案を蔑ろにするようなことをしてしまい申し訳ないです。」
「気にするな。それがリカルカ殿が選んだ道なのであろう?本人が決断したのなら私はそれを微力ながら応援する。困ったことがあればその時は力になろう。それが友好国であるハルモニアとヴィーダのあるべき姿だ。」
「お心遣い大変感謝いたします。それではわたくしたちはこれで…。」
一例をしリカルカ達は王の間を後にする。その姿を見て大臣であるミザルカはグッと拳を握り下唇を噛む。そして「…亡き国の亡霊王女めが……。」そう呟き彼女の去る姿を見送るのであった。
コメント
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「序章 出会い」、面白かったです!冒頭の世界そのものが壊れていく地の文から一気に引き込まれました。死の間際に「生き返る代わりに試練」という契約を交わす――よくある転生ものとは一線を画す、神との直接交渉みたいな緊張感が好きです。そしてリカルカとヴェルドの邂逅、彼女の側には「亡国ヴィーダ復興」「クリスタル管理」という重い使命が透けて見えて、ただの出会い話で終わらない構造が巧い。大臣ミザルカの「亡霊王女」という捨て台詞も、今後の火種を予感させてドキドキします。続きが気になる1話でした!