テラーノベル
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昨日用事をすっぽかしたことについて叱る大人はいなかった。 静かに退部届を貰い、記入し、提出した。 まあ、軽く「なんで?」「もう少し続けてみたらなにか見えてくるかも」とは言われた。こんな会話やめよう。貴方たちに私の気持ちを動かす力はないんだから。
この日を堺に君と私はまた元の関係に戻っていった。ただ、あの日の出来事が私たちの関係を複雑で曖昧なものにした。
放課後空いた時間は課題をしたり学校を徘徊したり学校でぐだぐだする日々だった。 君は学校終わりはすぐに帰るし、私も特にやることないし、お互い変わらないまんまだった。
ある日、帰りが一緒になった日があった。傘がなくて立ち尽くす君を横目に折り畳み傘を出そうとすると私も持っていなかった。目が合うと君はにやりと不敵な笑みをこぼした。2人で雨の中に飛び込んで”濡れることがどうした?”なんて顔をしながら校門を抜けていく。君の後ろを必死に追いかける私もなんだか人間という生き物を満喫出来ている気がした。ここから近い君の家までがむしゃらに走り続けた。
君の家には誰もいなくて必要以上に静かだつた。壁に飾られた写真や君がよく持ってくるお菓子のストックが見えた。透けたシャツや雨を吸ったぬいぐるみキーホルダーがやけに重く感じた。
「お風呂入る?」
そう聞かれ、 私はシャワーだけ借りることにした。上がると君が用意してくれたであろう半袖の服があった。着替え終わって君のいるリビングに行くと近所の猫にいつものお菓子をあげていた。
「嫌いなら言えばいいのに」
2人は黙り込んで、雨の音をじっくり聞いた。
「どうせ家行っても誰もいないでしょ?泊まらせてよ」
君はそう言うとにこにこしながら支度を始めた。その間君の居ない家族写真を眺めたり、君の大嫌いなお菓子を猫にあげていた。少し雨が止んできたので私の家に向かうことにした。
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