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本気になってはいけない恋

14 - 第14話  思い出したくない過去①

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2024年02月03日

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その夜、美咲のお店へ。


今まではこの店が居心地良かったのに、いつの日からか、少しだけ落ち着かない場所にも変わった。

ここにいたら、もしかしたら、また早瀬くんに会うかもしれないと、ほんの少し気にかかっている自分がいる。

それが自分でもどういう意味でかはまだよくわからない。

会いたくて気にかかっているのか、会いたくなくて気にかかっているのか。

実際、強引さに戸惑うだけで、他の誰よりドキドキしてしまう対象であるのも事実。

だけど会う度、違う顔・違う雰囲気で正直掴みどころがなくてどういう人なのかがよくわからない。


私に興味あるのか、興味ないのか。

強引なのか、強引じゃないのか。

遊びなのか、本気なのか。

正直、もう想いが届かない恋愛は・・・ツラい。

今以上意識してしまわないように、これ以上気持ちが大きくならないように、無意識に気持ちに少しずつブレーキをかける。

だけど、無意識につい探してしまう癖が少しずつついてる自分にも気付く。


「美咲~。最近・・・来てる?」

「ん?誰が?・・・あっ、もしかして樹くん?」

「そっ」

「最近ね~忙しいみたいであんま顔出してないね~」

「そうなんだ」


ここには私が来てない時も向こうは来てるのかなと確認してみるも、ここにも来てないようだ。


「あれ?あんたたち仕事で同じじゃなかったっけ?」

「あぁ。うん。でもまだ普通の仕事と並行して始めたばっかのプロジェクトだから。私もその話相談したいんだけど、会社でもなかなか会えなくて」

「へ~。樹くん忙しくしてるんだね~」

「そうみたいだね~」


そっか。

ここにも来てないことにホッとしてるような、ガッカリしてるような。


その時。


「久しぶり」


また背後から男性の声。


ようやく来たか。

なんだかんだ言って早瀬くんとここで会えることは、会社と違う雰囲気で胸が少し高鳴るのがわかる。


「まだここ通ってたんだ」


そう話かけてきた相手を見ると。


・・・早瀬くん、・・じゃない。


「なん・・で?」


思わずここで会うはずない人がいて驚いたまま声をかける。


「透子。元気してた?」


そう言って目の前で佇んでいる人は、早瀬くんではなく、私が思い出したくない忘れたい人。

随分前に愛しく想ってた人。

そして今、恋愛から遠ざかってしまった原因の人。


「今、大阪じゃ・・・」

「そっ。昨日から出張でこっち来ててさ。数日こっちいるから、久々にここ寄ってみた」

「まだ覚えてたんですね。この場所」

「もちろん。透子がよく連れて来てくれたとこだろ?」


そういえば、さり気なくこの人はこういうこと言える人だった。


「お久しぶりです。涼さん」


すると同じく顔見知りの美咲が挨拶。


「久しぶりだね、美咲ちゃん。たまにここのご飯が恋しくなるんだよね~。 修くんも元気?」

「涼さん相変わらず褒め上手。修も元気ですよ~。今ちょっと料理作ってて忙しくしてますけど。また後で挨拶させますね~」

「いやいや、気を遣わないでいいよ」


そんな風に美咲と仲良さげに話してるこの人は、北見 涼。

以前、同じ会社の先輩で憧れていた人。

会社に入ったばかりでまだ右も左もわからなかった頃。

今の部署に異動する前の営業部で、直属の先輩として、一から色々と教えてもらった先輩。

そして私が初めて心から好きになった人。


「透子も元気だった?」


昔と変わらない優しいその話し方。

私より年齢はもちろん雰囲気も精神的にも大人ですべてに憧れた人。


「はい。なんでまたここに?」


出来ればまた会いたくはなかった。


「こっち戻って来ると、やっばり透子との想い出がいっぱいで。つい、この店にも寄りたくなって」


涼さんへの気持ちは優しい先輩という対象から、いつの間にか憧れて好きな人へと変わっていった。

2年ほどそんな気持ちを育てていて、いつの頃か先輩も私の気持ちに応えてくれていた。

いつも優しくて憧れの人と恋人関係でいれた毎日は幸せで。

一緒にいた頃は嬉しくて親友の美咲にも紹介したくて、この店によく連れて来てた。


「透子は会いたくなかったかもしれないけど」


だけど、ある日涼さんの大阪支社への転勤が決まった時。

その話と同時になぜか二人の関係は一方的に終わった。

それはちょうど私が30歳になる前だった。

その頃の私は涼さんがすべてで、年齢的にも関係的にもそのうち結婚出来ると思って信じていた。

付き合い始めた頃は、まだ仕事も楽しいと思えるような時期でもなく、その時営業にいた私はなかなか仕事にも馴染めず上手く出来なかった。

だからこそ涼さんは私の心の拠り所ですべてだった。

ミスをしても涼さんがいつでも励ましてくれて助けてくれた。

だから、若かった自分は仕事はそこそこで、恋愛一色の人間で。

いつの日か涼さんと結婚する日を夢見てた。

結婚出来るなら、それでいいと思い込んでいた。


だけど。

涼さんは大阪へは連れて行ってはくれなかった。

遠距離恋愛や結婚どころか、別れを告げられた。

幸せだったからこそ、一人になった時の、描いていた夢が壊れた時のショックは大きい。

きっと仕事よりも涼さんに頼りすぎて、結婚しか夢見てなかった私が重荷に感じたのだろう。

結局自分にも仕事にも自信もなかった私は、引き止められる自信も理由を問いただす勇気もなかった。

そして少し経ってから、噂で新しい彼女も出来たって聞いた。

そんな簡単にこの恋が終わったのだと、自分はそれくらいの存在だったのだと思い知らされた。

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