🖤💚　猫の日の異変

阿部ちゃんが猫になってしまって、1週間。

世間には、体調不良で療養という事にしてもらっている。

オフの日は予定を入れないようにして、阿部ちゃんとのんびり過ごす。メンバーも理解してくれて、外に誘わないでいてくれる。

日なたで一緒に蕩けたり、阿部ちゃんが動き回るのを眺めているだけでも時間は過ぎる。

🖤「早く戻れるといいね」

たびたび抱き上げて、顔を寄せる。

元に戻る方法や、猫になった原因は調べてみるけど一向に掴めない。

手掛かりがないまま日だけが過ぎ、良くも悪くも生活に慣れていってしまう。

どうしたものか。

不安にさせないようにと阿部ちゃんの前では思い悩むような顔は見せていないつもりだったが、猫になっても察しが良いのは変わっていなかったようだ。

ある日、仕事から帰ったら鍵があいていた。

嫌な予感がしてドアを開けるとキッチンに置いていた踏み台が転がっていて、駆け込んだリビングに阿部ちゃんはいなかった。

家中探したけどいなかった。

鍵を開けて出ていってしまったんだと、一気に血の気が引く。

土地勘はゼロではないはず、でももし犬にでも吠えられて逃げて迷子になっていたら、事故に遭っていたら、側溝とかに落ちてしまったら……

最悪の事態ばかりを想定してしまって、心臓が痛いほど鳴る。

まず誰に連絡したらいいのか考えようとするけど、パニックで頭も回らない。

不意にスマホが鳴った。

佐久間くんだ。