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「だいぶ前、太齋さんに、浜崎くんと付き合ってた頃のことは話したと思うんですけど」

「本当はこの話にはまだ続きがあったんです。…言えなくて、黙っててすみません」


「オープンに話せるような内容じゃなかった、ってだけじゃん?謝ることないよ、人間誰しもひとつやふたつ秘密抱えて生きてんだし」


「……っ」


太齋さんの説得もあって


僕は、太齋さんに浜崎くんにされたことを話し始めた───。


─────────────────────


遡ること…高校2年生の夏


この頃に浜崎くんと付き合い始めるも、浮気をされ、それを指摘すると怒られて


それに嫌気がさして別れを告げると、蹴る殴るの暴力が始まった


昼休み、廊下で浜崎くんと鉢合わせると


「ちょっと来いや」と半ば強引に男子トイレに連れ込まれた。


するといきなり後ろからワイシャツの襟を掴まれ


そのまま勢いよく壁に押しつけられたせいで、背中と後頭部が壁とぶつかって鈍い音が鳴った。


「……いっ……」


痛みで小さく呻いたら、浜崎くんが怒りを顕にした。


「お前さ、なに俺から離れようとしてんの?」


「も、もう、やめようよ、こういうこと…ぼ、僕はもう浜崎くんと恋人になるのは…」


「お前はオレのもんなんだよ、恋人じゃなくてモノな?」


その言葉があまりにもショックで、もうそこに僕の知っている浜崎くんはいない、最初からいなかったのかもしれない、と悟った。


それからは地獄だったけど、あるとき、トラウマの根元とも言える出来事が起きた。


それは体育の授業終わりに、男子更衣室で制服に着替えていたときだった。


ズボンを履いてベルトを締め、ワイシャツとカーディガンを着終えたとき


更衣室のドアノブが回されガチャっと扉が開かれた。


入ってきた人物は、着崩した制服姿の浜崎くんだった。


嫌な予感がしたけれど、変に反応してもまた殴られるかもしれないと思い、気付かないふりをして着替えを続けた。


すると、浜崎くんは僕の背後から手首を掴んできて、床に押し倒されてしまった。


「……っ、な、にするんだよ、離してよ……!」


浜崎くんに馬乗りされると、恐怖で体が硬直して動けなくなった。


「黙っとけ、お前体だけはいいからな」


その隙に浜崎くんは僕のワイシャツのボタンを上から4つ目まで外し、中に手を入れてきた。


そしてそのまま脇腹を直に触られ、僕は思わず声を上げた。


「やめ゛ッ…っ!」


「はっ、体は正直じゃねぇか」


浜崎くんは僕の口を片手で塞いだあと、ワイシャツのボタンを全部外して前をはだけさせた。そしてそのままベルトに手をかけられる。


僕は必死に抵抗しようとするも、両手を頭上で押さえつけられて、ズボンを脱がされて、とても淫らな状態になった。


「っやだ、やだってば!!」


もう僕は泣きべそをかくしかなくて、すると浜崎くんはそんな僕を見て心底愉快そうに笑って自分のズボンも下ろし始める。


無理やり挿れられると危険を察知した。


「…… やめてったら!!」


僕は精一杯の力で抵抗し、浜崎くんの股間に蹴りを入れることに成功した。


すると浜崎くんは一瞬怯んだので、その隙を見てズボンを上げて体操着を抱えて更衣室を逃げるように飛び出した。


急いで男子トイレに駆け込んで、ワイシャツのボタンをとめて、ズボンのベルトとバックルを通して腰ギリギリまで締める。


さっきの感覚が忘れられなくて、過呼吸に陥りながらも、なんとか自分を落ち着かせて、早退をすることにした。


─────────────────────



「それをきっかけに、僕は転校を決めて……それからは全く会うこともなかったんです」


「でも、僕が大学生2年生になってから突如、目の前に現れたんです。それが…丁度、太齋さんのお店で再会したときでした。」


全てを太齋さんに話すと、


「…辛いこと、話してくれてありがとね」


と優しく僕の頭を撫でてくれた。


「太齋さん…こんなこと聞いても、引いたりしないんですか…?僕のこと…汚いとか」


「そんな心配してたの…?するわけないでしょ、被害者のひろくんをそんな目で見んのありえないって」


太齋さんがあまりにも真剣な顔で言うので僕は思わず固まってしまう。


「……っ」


今までこんなこと、親にもゲイ友達にも言えなかった


言葉にするだけでも空気が重々しくなる気がして


こんなこんな話、誰が信じるんだって感じだし


言ったところで きっと、変な目で見られるに決まってる


それこそ、こんなこと太齋さんに話したら


引かれちゃう、かな。


そう思っていた、でも、違った。


僕の話を真剣に聞いてくれて、慰めてくれた。


「ひろくん?」


「太齋さんがそう言ってくれた、だけで…心が少し軽くなった気がします……」


泣きそうになる顔を見られたくなくて、顔を手で隠そうとすると


太齋さんが僕の肩をギュッと抱きしめてきて


「泣きたいときに泣いていいんだよ、俺の見えるところで泣いてくれたら、いくらでも慰められるし」


僕は太齋さんの肩に顔を埋めた。


「……辛かったね、ひろくん」


その優しい声を聞いた途端、涙が溢れ出てしまうほど


顔を伏せて、太齋さんに縋るように咽び泣いてしまった。


それからしばらくして落ち着くと、太齋さんの肩から離れると、太齋さんが言う。


「ひろくんさ……もう1人で抱え込まなくていいよ。」


「当時は俺、大学2年ぐらいだったっけ?そのとき、ひろくんは高校生で…朝の電車とかですれ違うことはあったけど、全然そーいうの気付けなくて、今この話聞いて結構驚いてんだけどね」


「だからこそ、そばに居る今は、何かあったら俺に何でも相談してほしいな」


「で、でも…そんな、太齋さんに頼ってばかりじゃ、ダメっていうか…っ」


「…んーん、ひろくんは俺のこと、昔も今も助けてくれてるよ?」


「え…っ」


「俺がショコラティエになろうと思ったの、ひろくんのおかげってのは前も言ったでしょ?」


「確かに言ってましたけど…それってどういう…?」


「自分語りみたいになっちゃうんだけど、俺らって小学生の頃から家が近所で、よく一緒に遊んでたじゃん?」


「は、はい…そうですね」


「俺が中学生の頃、学校の調理実習で毎回火曜日にお菓子作る授業あってさ、ひろくんと学校終わりに公園で待ち合わせして一緒に食べてたの、覚えてる?」


「それはもちろん覚えてますよ…!いつも火曜日になると太齋さんの作ったクマのクッキーとかマカロン食べてましたし…懐かしいです」


「でしょ。まあそれで、ひろくんが中学一年のころだったかな」


「どんだけ歳が変わっても関係性だけは中高生になっても変わんなくて…ふふっ、そこは嬉しかったな」


太齋さんは続けて言う。


「俺が高二のときに、将来の夢を発表する授業があったんだよね。」


「それでショコラティエだって言ったら親とか周りのクラスメイトにバカにされたんだ」


「え、どうして……?」


「僕、今初めて知りましたけど、太齋さんのことだから、周りのからの応援もあってのものだとばかり思ってました…」


今初めて、太齋さんの口から聞いたエピソードに驚きを隠せなかった。


「まさか。真逆だったよ、クラスメイトにも「女かよ」ってからかわれて」


「本気で独立してお店を出すのが夢なんて親に言ったら、人生を棒に捨てるのかって怒鳴られたぐらいだし。」


「そんな酷いこと…第一、趣味なんて男も女も関係ないですよ…!」


「…ははっ、さすがひろくん。当時と全く同じこと言うじゃん、ウケる」


「えっ?」


「周りに進路変更しろだの『男のくせにスイーツが好きなんて気持ち悪い』とか言われる中で」


「ひろくんだけは『好きなことするのに男も女も関係ないと思いますよ…?だって、太齋さんのチョコレートって、凄く幸せな気分になれるし』って言ってくれたの今でも鮮明に覚えてる」


「た、確かに、そんなこと言ったような……?…っていうか、そんなことよく覚えてますね」


「そりゃーね、忘れたことなんかないよ」


「唯一俺の味方でいてくれたのってひろくんだけだったんだよ、…だから、その言葉だけで救われた気がしたんだ。」


「それで夢を追ってショコラティエ専門学校に入学して、今の俺があるわけだし、俺が店を開いたってこと一番に教えたのもひろくんだし、すげぇ感謝してるんだよ?」


「そんな、僕は別に大したことは…お店を開けたのも太齋さんが真っ直ぐに頑張ったからで……!」


「けど、真っ直ぐ進むための勇気は、ひろくんから貰ったんだよ」


「……勇気を…僕が…」


呟くようにそう言うと太齋さんは昔を見つめるような淡い瞳で笑いかけてくれる。


「店で俺の作ったガトーショコラ食べてくれたときにも、すげぇ嬉しい感想ばっかくれて…俺に自信を持たせてくれたの」


「だから、今度は俺がひろくんを救う番ってわけ。」


「でも、これ以上太齋さんに迷惑をかけるなんて…っ」


「も~分かってないなぁ…友達も恋人も、迷惑かけてなんぼじゃない?」


「……!」


「何よりさ…好きだから守りたいんだよ、ひろくんのこと」


「俺が勝手に、守りたいだけ。いいでしょ?」


その言葉が嬉しくて、僕はまた涙ぐんだ。


そんな僕を太齋さんは優しく抱きしめてくれた。


「ふふ、涙脆いとこは変わんないね~…全く」





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