テラーノベル
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淡さを帯びた窓に、ネオンが光る夜の景色が映る。少し不都合な足音も、静寂の中では美とも言い表せる音を織り成す。
「……寝ていますか。」
S.C.H.A.L.Eの仮眠室、空虚な部屋に残る書類の山を無視し、一つのノートを手に取る。
簡素な表紙のノート。それでも、先生の手元に無防備に置かれていたノートには、私以外でも興味を示すのでしょう。
「…………。」
それが、間違いと表現するべきなのでしょうか。乱雑ともいえる殴り書きの文字に、ストレスの捌け口となったノートの破れ方。自暴自棄のような、はたまた排他的な内容は、理解をより早めることとなる。
“ありがとう、セリナ。”
その翌日の朝、ふと聞こえてきた言葉。トリニティの生徒と会話していた際の、曇り一つ無い晴天の笑顔。あの内容を残すとは感情的には考えたくもない。
だが、人は自分を偽るものだ。
利益を得るため、恐怖を避けるため、もしくは何かを隠すため。目的は違えど、嘘は単純で有用な仮物とも成る。
“……そろそろリナリア学園の跡地だったかな。”
腕時計を見るなり、また歩き出す先生。私の心の何処かから来る探究心は、幼児の抑えきれない感情を思わせる。
“……アキラ?”
「……!?」
突然の事に、思わず声を上げかける。直感だったのだろうか。目視もせずに、私に気づいていた。それよりも、先生に話しかけられたことの衝撃が大きかったのだろうか。汗が一滴額を伝い、眉毛に触れる。
“……本当にごめん、今は忙しいんだ。”
先生は申し訳なさそうな顔をして、走っていった。普段走らないからか、少し走りがぎこちない。
「………。」
無理な言い訳だった。さっきまで歩いていたのに、私に会った途端。
私は、ノートの最後のページの内容を反芻する。誰かへの悪口だろうか、支離滅裂な暴言が書かれたページ。その対象の名前はかき消されて見えなかったが、これが仮に私だとするなら……。
……考えるのも嫌になってきた。そんな自分を、怒りを買う要因の少なさから否定して宥める。それでも、自身の心の混濁は否定することはできなかった。静けさに満ちる中、私は一つの溜息をついていた。
コメント
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あ、これやっべぇですね…えげつない曇らせ…アキラちゃん壊れてしまいそう