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昔々といってもそんなに昔じゃない。
むしろ現代、SNSや動画配信が当たり前の令和の日本。
山あいの町に1人の青年が住んでいた。
名を桃太楼(ももたろう)。
その名前から連想するものはひとつ。
「桃から生まれた桃太郎」である。
しかしこの桃太楼、伝説の英雄とは似ても似つかない。
バイト漬けのフリーターで、スマホが手放せない筋金入りのネット民。
特技は鬼退治ではなく、アニメ一気見と動画サイトのコメント欄での連投だった。
けれど、家には奇妙な宿命があった。
「代々、鬼ヶ島の鬼を退治する」こと。
祖父母から突然届いたLINEはこうだった。
「鬼がまた暴れてる。 行ってきなさい」
既読をつけた桃太楼は深くため息をついた。
「いや、マジで? 俺、彼女と今期アニメの最終回見直す予定なんだけど……」
彼女の名は美咲。
アニメや漫画に人生を捧げるオタク女子であり、桃太楼のよき語り相手。
休日は秋葉原か池袋かコミケに出没する、筋金入りのオタ活パートナーだ。
そんな彼女と過ごす時間を差し置いてまで、鬼ヶ島なんぞ行きたくはない。
だが、血筋と世間の目と祖父母の圧力には逆らえなかった。
こうして桃太郎楼の「しぶしぶ鬼退治」が幕を開ける。