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数日後。
金曜日。
週の終わり。
生徒たちは「やっと休みだ!」とはしゃぎながら帰っていく。
そんな中、若井は教室の窓際で頬杖をついていた。
ちらり、と時計を見る。
午後四時。
「まだかな。」
小さく呟く。
隣の友達が笑った。
「また大森待ってんの?」
「うん。」
「仲良いなー。」
「そう?」
若井は首を傾げる。
自分では特別なことをしているつもりはなかった。
ただ、金曜日は部活がない。
そして元貴も比較的学校に来ることが多い。
なら一緒に帰ろうかな、と思っただけだった。
最初は偶然だった。
けれど気付けば毎週のようになっている。
教室の扉が開いた。
「あ。」
元貴だった。
いつものように鞄を肩に掛けている。
「元貴!」
若井が立ち上がる。
元貴は少し驚いた顔をした。
「まだいたの。」
「待ってた。」
「なんで。」
「一緒帰るから。」
まるで当然みたいに言う。
元貴は小さくため息をついた。
でも嫌そうではなかった。
「帰ろ。」
「うん。」
二人は校門を出る。
夕方の空はオレンジ色に染まっていた。
歩くペースは自然と同じになる。
若井は相変わらずよく喋る。
「今日の数学やばくなかった?」
「寝てた。」
「寝てたの!?」
「だって眠かったし。」
「自由だなあ。」
若井は笑う。
元貴も少しだけ口元を緩めた。
そんな何気ない会話をしながら歩く時間が、いつの間にか当たり前になっていた。
ある金曜日。
駅へ向かう途中。
若井がふと聞いた。
「元貴ってさ。」
「ん?」
「なんで曲作るの?」
元貴は少し考えた。
今まで何度も聞かれた質問だった。
けれど、若井相手だと適当に答えたくなかった。
「……分かんない。」
「分かんない?」
「気付いたらやってた。」
若井は真面目に聞いている。
元貴は続けた。
「曲作ってる時だけ、頭の中が整理される。」
「へえ。」
「だから作ってる。」
若井はしばらく黙った。
そして笑った。
「元貴らしい。」
「若井、その言葉好きだね。」
「だって本当に元貴らしいもん。」
元貴は少し照れくさくなって視線を逸らした。
そんな反応を見て、若井はまた笑う。
金曜日。
一週間の終わり。
二人で帰る時間だけは不思議と特別だった。
ある日にはコンビニに寄り道した。
ある日には公園のベンチで話し込んだ。
ある日には雨で一本の傘を半分ずつ使った。
その積み重ねで、二人の距離は少しずつ近付いていった。
そしてある金曜日。
いつもの帰り道で若井が言う。
「来週も一緒に帰ろうね。」
何気ない一言。
元貴は少しだけ目を見開いた。
それから小さく笑う。
「学校来れたらね。」
「来てよ。」
「努力する。」
「約束。」
差し出された小指。
元貴は呆れたように見つめた。
「子供?」
「いいから。」
しばらくして。
元貴はそっと小指を絡めた。
若井は嬉しそうに笑う。
その笑顔を見ながら元貴は思った。
学校は相変わらず苦手だ。
人も得意じゃない。
けれど。
金曜日だけは。
若井と帰るために来てもいいかもしれない、と。
コメント
3件
なんか初心な感じがだいっすき。大森さんで一喜一憂する若井さんと、大森さんの恋愛ムーブが大好き
わあ、第2話……若井くんが「待ってた」って言い切るところ、すごく好きです。あの当然みたいな口調に、彼の中でもう元貴と帰ることが当たり前になってるのが伝わってきました。それでいて小指を差し出すシーンは、ちょっと照れくさそうな子供っぽさもあって、距離の縮まり方がとても自然で素敵でした。「金曜日だけは来てもいい」って思う元貴の気持ち、すごく分かります。ほっとする空気感がたまらないです🌷
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