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俺がカウンターに買い求めたい防具を並べていると、
「うちの店はまとめて買っても安くはなんね~ぞ。親方にシメられっからよー」
そのようにモヒカン男が言ってくる。
「いえいえ、値引きなんかしなくても十分お手頃じゃないですかぁ。 それじゃぁ、これらを買いますので調整をお願い出来ますか?」
無愛想だったモヒカン男の口角がすこし上がった。
シロは出入り口付近で丸くなっている。――可愛い。
「おう、まかせとけ。俺っちがビシッと調整してやっからよぉ。これで全部かぁ。計算すっぞ~」
革のアーマーベスト (胸部鉄板入り)
6,000ー
鎧下ウェア
3,000ー
革パンツ
4,000ー
コンバットロングブーツ
5,000ー
大バックルベルト
5,000ー
アームガード
1,000ー
硬革ヘルム
3,000ー
合計で27,000バース。こんな感じになった。
きっちり支払いを済ませると、
「まいど~。ここの裏貸してやっから取りあえず装着してみてくれ」
………………
一式を装着して出てくると、あっちこっちと触れながらメモを取っていく。
そしてチェックが終わると、
「んじゃ、装備を一旦外してくれ。半刻も掛からねーからよ。その間待っててくれ。もし客が来たら知らせてくれよ」
そう言い残しモヒカン男はカウンターの奥に引っ込んだ。
俺は串焼きを食べたり、水を飲んだり、シロをもふって戯れたりして時間を潰していた。
「おっし、出来たぞー。もっかい付けてくれるかぁ?」
モヒカン男は調整が終わった装備を渡してきた。
「おっ、なかなか良い感じじゃねー。動きずれーところはないか? 少しでも違和感があるなら言ってくれ」
しかし、装備した防具は全く問題なかった。
世紀末のくせに仕事は出来るようだ。
ちょっと関心していると、
「使ってる時でも何かあれば調整すっから持ってきてくれ」
「わかった。何かあったらまた寄せてもらうよ。ありがとう!」
「お~う、また来てくれなぁ!」
俺はお礼をいって店をでた。
外は、まだ雨が降っている。
いくぶん小降りになってるようだから、もうすぐ上がるのかな?
革装備は雨に弱いので、すぐにインベントリーへ収納した。
もうすぐ昼時だよな。
俺は撥水ローブのフードを被りそのまま裏通りを散策することにした。
シロは雨などものともせず軽やかに進んでいく。頼もしいやつだ。
そしてこの時、俺の目的はもう一つあった。
表はこの町一番の繁華街。
てぇことはですよぉ、この筋辺りにあるんじゃないか? ――真実が。
んっ、真実とは何かって?
それを今から探しに行くんだよ!
ローブで顔と身体を隠しジェダイの騎士を思わせるかっこなのに、考えてることは鼻の下を伸ばしたおっさんである。
でもね、しかたないっしょ。
こちとら若返っているんだからさぁ。
17歳だよ。17歳! みんな振り返ってみて欲しい。その時分にどんなだったか?
雨に濡れたエロ本や公衆トイレの落書きにすら興奮していたあの時期を。
…………なっ、男ならわかるよね! (女性の方はお近くの男性にお尋ねください)
そうして裏街道……いや違う! 裏通りを突き進んでいるわけですよ。
すると、ある一風変わったエリアに突入した。
んんっ、なんというかノスタルジックで懐かしい? この微妙な感じ。
お店のようだけど今は閉まっている。店周りは清掃されていてきれいなのだ。
「…………!?」
何とな~く当たりのようだね。
ピンクのネオンとかあったら分かりやすいんだけど。
よし、これより我が斥候部隊は敵地にて情報収集に従事する!
謎の一角に突入した俺たちはじっくり、そしてゆっくり通りを進んでいく。
すると、……おっ! なんと開いている店があるぞ。
更に近づいていくと……。
そこは、どうも茶屋のようだ。食事処でもあるらしい。
もちろん潜入!
ドアを開けると、「いらっしゃいませ~」と気怠げにウェルカム。ここの女将だろうか席に案内してくれる。
シロも入店して大丈夫かと聞いてみるがその女将は、
「ここまでだったら大丈夫よ~」
と意味深げなことを言ってくる。
「…………」
この先があるのだろうか? いや、きっとあるのだろう!
よし調査だ。徹底して調査するしかない。
シロはお店の前でブルブルしたあと、マットの上で足を蹴るようにして汚れをとって入店してくる。
――シロちゃん賢い!
「若いお客さんねぇ、うふっ可愛い。はい、これがメニューね」
そう言って渡された木の板には文字が箇条書きで並んでいた。
上から順に紅茶・オレン果実水・バネネの実・エール・ワイン・炙りベーコン・柔らかい干し肉・オークステーキ・山芋白パン?・オーク睾丸輪切り塩焼き?・オーク強壮剤? などなど。
そして一番下に『お大尽定食』 (人員追加可能) ???
「…………」
俺はゴクリと生唾をのみ込んだ。
俺はオレン果実水に炙りベーコンを、そしてシロにはオークステーキを頼んだ。
そして、食事をしながら女将さんに話を聞いてみることにした。
「この辺りの店はどのくらいから開けているの?」
「まぁそれぞれなんだけどぉ、夕方五の鐘がなって以降かねぇ」
「主にどんな店があるの?」
「昔はねー、そのままズバリという店ばかりで多少の時間と料金の違いしかなかったのよねぇ。それがね、隣の国に勇者が現れてからはこの辺りもすっかり影響されちゃってねぇ、いろいろ出てきてるわよぉ」
「へ~、勇者ですか……。どんなお店が流行ってるの?」
女将は顎に人差し指をあてながら、
「そうね~、若い女の子がただ台の上で服を脱ぐ店だとかぁ、裸でお酌してくれる店でしょ~。それから、行くといろんな女性たちが待っている『お見合い酒場』なんかもあるわねぇ。あとは昔と同じで遊女を選んでチョメチョメする女郎屋などだねぇ」
「これも隣の国からみたいだけど、お風呂ってわかるかしら。桶にお湯を入れてそこに二人で入るんだって。まるで貴族様みたいよね~。あっ! でも、それで病気が減ったとかも聞いたわね。まだまだあるみたいだけど、ザッとはこんなところね」
そして、女将は色っぽく腰をフリフリ科 (しな) を作ると、
「この店 (うち) はもともと案内茶屋だったのだけれど、メニューにもあるように『お大尽定食』もやってるから一人飯が寂しくなったら来てちょうだいね。お昼からでも用意できるし、ご飯を頂いた後も……ねっ!」
「ゆ、勇者のおかげでいろいろと変わったんですね!」(汗)
「そうなのよ。女が服を脱ぐところなんか見て何が面白いのよぉ。まったく勇者は何を考えているのかしらね~」
「…………」
えっ、まぁ、その…………勇者 乙!
そんな感じで、夕方よりこの界隈はすこぶる賑わっているらしいのだ。
我が『斥候部隊』はこの件に関して再調査を行なう必要があるものと具申する!
ただ、突入においてはしっかりと作戦を練る必要があるだろう。
この作戦において失敗はけして許されないのである。