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エム「猫語尾中」
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md side――――――――――
静かだった。
記憶テストの部屋を出たあとも
誰もすぐには話さなかった。
頭の中が、まだ整理できていない。
「……関わってたって、マジかよ」
きょーさんが壁を軽く蹴る。
苛立ちが隠れていない。
「しかも、研究側」
コンタミが苦笑する。
「笑えねぇな」
レウは何も言わず
ただ考えているようだった。
俺も同じだ。
被験体。実験。そして──
自分たちがそれに関わっていた事実。
気分が悪くなる。
その時──
「……誰か来るッッ!」
レウが小さく言った。
全員が顔を上げる。
足音が聞こえる。
通路の奥からゆっくりと響いてくる。
機械じゃない。
人の足音。
「……人?」
きょーさんが構える。
全員、自然と警戒する。
そして、姿を現した。
白衣の男。
年齢は分からない。
表情はほとんど動いていない。
冷たい目。
「……被験体001〜005」
その男が言った。
初めて聞く“人間の声”
「やっと会えたな」
その言葉に、全員の警戒が一段階上がる。
「誰だよ、お前」
きょーさんが低く言う。
男はわずかに首を傾けた。
「ん?説明が必要か?」
淡々とした声。
「この施設の責任者だ」
空気が凍る。
コンタミが小さく呟く。
「……黒幕ってやつか」
男は否定しない。
「そういう認識で構わない」
「ふざけんなよ」
きょーさんが一歩前に出る。
「俺たちをこんな目に合わせて──」
男は遮るように言った。
「誤解がある」
全員が止まる。
「君たちは“選ばれた”わけではない」
「“適していた”だけだ」
その言葉が妙に引っかかる。
「……どういう意味だよ」
コンタミが聞く。
男は端末を操作する。
空中にデータが表示された。
グラフ。
数値。
そして──
“適合率”
「能力発現実験の成功率は極めて低い」
淡々とした説明。
「ほとんどが失敗する」
「暴走、もしくは消滅」
011の姿が頭をよぎる。
「だが」
男は続ける。
「君たちは違った」
画面に、001〜005のデータが並ぶ。
すべて異常な数値。
「全員が高い適合率を示した」
「安定した成功例だ」
空気が重くなる。
「……だからって」
きょーさんが低く言う。
「それで実験体にすんのかよ」
男は即答した。
「合理的だ」
その一言で完全に温度が消えた。
コンタミが拳を握る。
「人をなんだと思ってんだよ」
男は迷いなく言った。
「データだ」
「より良い結果を得るための資源」
怒りが込み上げる。
でも、それ以上に寒気がした。
「それに」
男は続ける。
「君たちは“グループ”としても優秀だった」
「精神的結合が強い」
「相互作用により、能力の安定性が向上する」
頭が真っ白になる。
「……つまり」
俺が言う。
「最初から……」
男はあっさりと言った。
「被験体候補だった」
その言葉が重く落ちる。
「仲間だったから」
コンタミが呟く。
「利用されたってことか」
誰も否定しない。
できない。
その時
らっだぁが低く言った。
「……だから止めようとした」
全員がそっちを見る。
「これ続けたら」
「俺たちみたいなのが増える」
拳を握る。
「分かってた」
その言葉に、少しだけ空気が変わる。
でも、男は冷静だった。
そしてこう言った。
「だが失敗した」
その一言がらっだぁに鋭く刺さる。
男は続けた。
「結果として、施設は不安定化」
「実験は継続されている」
沈黙が続いた。
らっだぁ以外の4人は
全員同じことを思ったと思う。
『こいつら、なんの話をしているんだ?』
きょーさんが口を開く。
「…とにかく!!全部お前のせいってことだろ」
男はわずかに目を細めた。
「半分は正しい」
その言葉に、全員が固まる。
「だが」
視線がらっだぁに向く。
空気が一瞬止まる。
「001は特別だ」
静かな声。
「他の被験体とは異なる」
らっだぁが睨む。
きょーさんが言う。
「……何が言いたい」
男は淡々と続けた。
「能力は全て人工的に付与されたものだ」
「だが──」
「001、お前だけは違う」
その言葉に、全員が反応する。
「お前は本来──」
「その領域に最も近い素質を持っていた」
背筋が凍る。
「時間干渉など、本来人間が扱えるものではない」
「だが」
視線が鋭くなる。
「お前はそこに“届きかけていた”」
息が詰まる。
「我々はそれを──」
「引き出した」
静かな声。
「そして」
わずかに間を置いて言った。
「お前は、それ以上に進んだ」
「能力はこちらから与えたが、それは時間を数秒止める程度の力。だけど君は能力を最大化させた。」
空気が凍る。
「……は?」
きょーさんが呟く。
男は続ける。
「他の被験体は“完成形”だ」
「だが001、お前は違う」
「お前は──予測不能な変異だ」
(さっきからなにを話しているんだ?)
「能力が進化しすぎた」
「制御不能になるのは当然だ」
「だから、あの暴走に──」
「言うなっっ!」
らっだぁが言う。
「なんだ?ほかの4人は覚えてないらしいぞ?」
「これは話しといた方がいいだろう」
何を話しているのか分からない。
だけど、多分この話は
俺らが記憶をなくした理由に繋がっている気がした。
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