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「まぁいい。これより」
「最終実験を開始する」
空気が止まる。
「……は?」
きょーさんが眉をひそめる。
「何言ってんだ」
男は構わず続けた。
「君たちのデータは、ほぼ揃っている」
「能力の発現、負荷、連携」
「すべて優秀だ」
その言葉に、嫌な予感が強くなる。
「だが」
男の目がわずかに鋭くなる。
「まだ足りない」
「最も重要なデータが残っている」
「……それは何?」
俺が聞く。
男は迷いなく答えた。
「極限状態における“結束”」
その一言で全員が理解した。
「……ふざけんなよ」
きょーさんが吐き捨てる。
コンタミが言う。
「俺たちを戦わせる気か」
男は否定しなかった。
「状況は用意する」
「選ぶのは君たちだ」
その言い方が妙に引っかかる。
「……選ぶ?」
レウが小さく聞き返す。
男は頷いた。
「脱出するか」
「この施設を破壊するか」
「どちらでも構わない」
「ただし」
視線が鋭くなる。
「その過程で得られるデータが必要だ」
全て、完全に実験として見られている。
「……舐めてんのか」
きょーさんが拳を握る。
今にも飛び出しそうだ。
でも──
その時、俺は動かなかった。
「……おい」
コンタミが声をかける。
俺は男を見たまま動かない。
「……なんだよ、どりみー。」
きょーさんが言う。
「さっきから黙って」
その時俺は小さく言った。
「……似てる」
空気が止まる。
「何が」
レウが聞く。
らっだぁは、少しだけ目を細めた。
「この状況」
小さく言う。
「……前にもあった気がする」
背筋が冷える。
「は?」
きょーさんが眉をひそめる。
「どういうことだよ」
らっだぁは首を押さえてる。
「分かんない……でも」
頭を抱える。
「嫌な感じがする」
その様子は明らかにおかしかった。
レウが小さく呟く。
「……記憶が戻りかけてる?」
その可能性は高い。
でも──
「っ……!」
俺は膝をつく。
「おい!」
コンタミが支える。
呼吸が荒い。
明らかに異常だった。
「……やめろ」
らっだぁが小さく言う。
「それ以上……」
誰に言ってるのか分からない。
でも、その声は震えていた。
その時──
白衣の男が、静かに言った。
「思い出し始めたか」
全員がそっちを見る。
「……何をだよ」
きょーさんが睨む。
男は淡々と答えた。
「失敗の記録だ」
その一言で、空気が凍る。
「……え?」
コンタミが呟く。
男は続ける。
「この施設は一度、大きく崩壊しかけている」
心臓が強く打つ。
「原因は明確だ」
視線が、らっだぁに向く。
「001の能力暴走」
その瞬間、らっだぁの体がビクッと震えた。
「……やめろ」
小さな声。
「やめろ……」
でも止まらない。
男は続ける。
「時間干渉の制御に失敗」
「複数回の巻き戻し」
「結果──」
「施設全体の不安定化」
頭の中で、何かが繋がり始める。
「……それって」
俺が言う。
「まさか──」
その時、らっだぁが叫んだ。
「やめろって言ってんだろ!!」
その声で空気が一気に揺れる。
時間がわずかに歪んだ。
全員が息を呑む。
「……思い出すな」
らっだぁが言う。
震える声。
「思い出したら……」
その先は言わなかった。
でも、全員分かってしまった。
これは──
良くない。
その時、男が静かに言った。
「最終実験、開始だ」
ブゥン──
低い音。
床が光る。
空間が歪む。
「っ……!」
強制的に、
引き離される感覚。
「待て!」
きょーさんが叫ぶ。
でももう遅い。
視界が白くなる。
その最後に見えたのは──
苦しそうに顔を歪める、らっだぁの姿だった。
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