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前書き
今回の話には、
『48.手料理』
『55.コンカチネイト』
『58.殺戮のエピック』
『68.出撃! オールスターズ ②』
の内容が含まれております。
読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います。
その後カーリーが観察した結果をまとめて報告したが、最初に話された善悪は聞き終えるまで放心状態であった。
善悪が脳死に陥った理由は多岐に及んでいた。
幼児期、特にコユキと親しく過ごした高校時代に彼女から齎(もたら)された数々の暴力、主に平手打ち等が彼の命を奪い始めていたらしい。
カーリーが記憶の改竄(かいざん)を試みた際に、やけにあっさりと施せたのもこれが理由だったそうだ、心身薄弱、既にそんな感じだったという。
トドメとなったのは今回の周回で、カーリーが居ない事で手探りで悪魔に向き合った事だった。
不意に家族を奪われて不安に苛(さいな)まれたコユキが、何の記憶も無く不安定な精神状態で訪ねてきた事で、善悪の命は急速に破壊されることになったらしい。
普通の人間だったら即死クラスのダメージを何度と無くその身に受けた善悪は、少しづつ、死んで行ったそうだ。
この言葉を聞いた善悪は、この一年半の間に自らがその身に受けた、数々の暴力を思い出していたのであった。
何度と無く受けたコユキの全体重が乗った平手打ち、農薬や刺激物による毒攻撃に寺の敷石に打ち付けられた頭、アスタロトの泥仕合にバアルとの我慢比べ……
そして忘れられない痛み、本堂でオルクスがコユキに抱かれていた際に感じた左側頭部からのヤバそうな音、そして恐らく大ダメージを受けたと思われるコユキ謹製の素麺……
そして本日、コユキに引っ張られる事で受けた頭部や頚椎(けいつい)に今も残る数々のダメージ……
走馬灯の様に蘇る痛みの記憶の九分九厘は、横に立つ幼馴染が原因だと言う事を今更ながらに思い出していたのである。
「ん、んん、まあ、納得したのでござる……」
「同情するわ、善悪」
善悪の呟きに惻隠の意を表すカーリーの言葉に、一切空気を読まないコユキの声が重なるのであった。
「んまあ、何で善悪が死んじゃったのかは理解したわよ、んでも納得出来ないのよね! アタシってば、今日まで善悪ほどのダメージ受けた事とか無いのよね? なのに何で死んだって言うのよぉぅ? 甚(はなは)だ疑問の残る所なのよぉー!」
憤慨しているコユキを諭(さと)すように観察者、カーリーは言う。
「貴女の場合は自我の喪失、心神喪失…… そう言ったでしょう? そうね、覚えているかしら? 貴女、自分の事を虫けらとか、善悪の事を閣下(かっか)だとか呼んでいたんだけどね、どう?」
「はあぁー? 善悪が閣下? ってか? 何それ? 有り得ないんだけどぉ!」
「やっぱりね……、コユキ…… 貴女は自分の人生のタペストリィーを欠けさせたまま、不完全な状態でここまで来てしまった様ね…… じゃあ、貴女の事を説明するわよ? 良い?」
そう言った後カーリーが話した顛末には、コユキは少なくない衝撃を感じたのである。
カーリー、彼女曰く、コユキが心神喪失に至る道、それに寄り添い続けていたのは、意地汚い食欲、それだった様である……