コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
二次会の会場で、雅史からさっきの若い女の子のことを紹介された。
担当店のアルバイトの子が、たまたま新婦の友人だったらしい。
「岡崎さんの奥様って、一度会ってみたかったんですよ。岡崎さんって、既婚者だって知ってたんですがあまり家庭的な雰囲気がなかったので」
名前を仲道京香というらしい。
佐々木の花嫁の舞花と同じように、アイドルみたいに可愛らしい外見は、きっと雅史のタイプだ。
「いつも主人がお世話になっております。これからもよろしくお願いしますね」
当たり障りのない挨拶で済ませておく。
その後も雅史は京香たちとお酒を飲み、楽しそうに過ごしていた。
私は騒がしいパーティーの中心から少し離れて、降り出した雨を窓越しに見ていた。
バッグのスマホが、メッセージを受信したことに気づく。
《夜分に失礼します。次の木曜日、こちらに来られる予定だったと思いますが、僕は私用で休みます。代わりに以前いた久里山が担当するので、彼に次の指示を受けてください》
〈久里山さん、辞めたんじゃ?〉
《僕が頼んで、短期間でまたやってもらうことになりました。用事が済み次第また僕が担当するので》
〈わかりました。いつものように届けておきます〉
_____なんだ、木曜日は会えないのか、せっかくおしゃれしたのにな
薄いピンクに細いラメで縁取った指先を見る。
結婚式だからという理由だったけれど、少しでも綺麗になった私を見て欲しかった。
それにしても私用ってなんだろう?
別居していた奥さんと子どもとまた一緒に暮らすようになって、奥さんは仕事に復帰してうまくいってると思ってたのに。
少し影がある遠藤耕史の、その影の理由を知ってから特に気になるようになった。
こんなに真っ直ぐに奥さんや子どものことを愛してる男性は、身近にいない。
落ち着いた話し方や、ときおり見せるドジな所のギャップ、清潔な装いや知識が豊富な会話をする遠藤。
そんな彼を好きだなと自覚することはあっても、それ以上の感情はなかった。
奥さんや子どもと幸せに暮らして、あの影の部分がなくなったらいいなとか、それくらいの感情だ。
成美に話したら“それは恋というより推しだね”ということだった。