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21
「……今回のプロジェクトの進捗、ここが甘い。明日までに修正して提出するように」「……はい。承知いたしました、いるま部長」
会議室に響く、いるまの冷徹なまでに正確な声。
なつはピシッと背筋を伸ばし、上司であるいるまに頭を下げる。
仕事中のいるまは、隙のないスーツ姿と鋭い判断力で「氷の仕事人」なんて噂されるほどの超シゴでき上司だ。
……でも。
「――ただいま。あー、疲れた……」
「お疲れさまです、いるまさん。……じゃなくて、おかえり、いるま」
玄関のドアが閉まった瞬間。
いるまはネクタイを乱暴に緩め、キッチンで夕飯の準備をしていたなつの背中に、迷わずダイブした。
「なつぅ……なつ不足……。今日、会議中一回も目が合わなかった。ひどい、寂死(さみし)ぬ……」
「……当たり前だろ、仕事中なんだから。ほら、離せよ、部長」
なつが苦笑いしながら肘で突くと、いるまはなつの首筋にぐりぐりと頭を擦り寄せる。
「家では『部長』禁止。……ねぇ、なつ。今日はすっごく頑張ったから、ご褒美。……膝枕して?」
「……っ、……もう、……わかったよ。いるまさん、わがまま」
「『さん』もいらない。敬語も外して?」
「……ん。……わかった。……いるま、お疲れさま。……よしよし」
ソファに座ったなつの膝に、いるまは満足そうに頭を乗せた。
なつが不器用な手つきでいるまの髪を撫でると、昼間の鋭い眼光はどこへやら、いるまはふにゃりと蕩けるような笑顔を浮かべる。
「あー、生き返る……。会社での俺、なつの前でだけは全部脱ぎ捨てたいんだよ」
「……知ってる。……お前のそんな姿知ってるの、俺だけだしな」
「そう。俺のこの情けないところも、甘えん坊なところも、全部なつだけのもの。……ねぇ、今日の晩ごはん何?」
「お前が好きなハンバーグ。……あ、いるま部長、玉ねぎの微塵切り、手伝ってもらってもいいですか?」
「……だから、家では敬語禁止だってば!」
「あはは、ごめん。……いるま、一緒にキッチン立とうぜ」
オンとオフの切り替えが激しすぎる二人の、甘くて少し可笑しな夜。
なつは、自分にだけ見せるいるまの「特別」に、今日も静かに胸を熱くさせていた。
コメント
1件
もう、このオンオフのギャップが激しすぎて笑っちゃうけど、すごくいいなあ…!「氷の仕事人」って呼ばれるいるま部長が、家に帰った瞬間「なつ不足で寂死ぬ」って駄々こねて、膝枕してもらってる姿、最高に可愛い。仕事中は一度も目が合わなかったって嘆くところ、ちゃんと会議中もなつさんのこと見てたんだなって伝わってきて、その執着と甘え方がもうたまらない。なつさんが「お前のそんな姿知ってるの、俺だけだしな」って言うセリフ、二人だけの関係性がぎゅっと詰まってて、すごく胸にくるものがある。玉ねぎの微塵切りを手伝ってもらう流れも、日常のすぐ隣にこんな甘い時間があるんだなってほっこりした。続きも絶対読みたい!