「雪乃ちゃん…」
「あの森には通常より住んでるポケモンの数が多い気がします。危険が無いとも限らない。私が2人を護衛します」
「…帰れんくなるかもしれんのやで」
トントンが真っ直ぐ雪乃を見つめる。
「いいえ、必ず帰ります。そうですよね?」
雪乃は微笑んで、トントンを見つめ返した。
トントンはしばらく考えた後、「わかった」と頷いた。
「雪乃ちゃんが行くなら、俺も…」
「鬱先生とゾムはここに居ったってくれ。またモルペコが暴れ出すかもしれへんし」
「任せろぜ」
背後からゾムの声が聞こえて目頭を押さえる雪乃。耐えろ。
「…絶対に帰ってきてや」
隣りにいた鬱先生が、雪乃を見つめた。
「勿論です」
雪乃が安心させるように微笑めば、鬱先生は切なそうに顔を歪め、雪乃の頬に手を置いた。
そのまま顔が近付いて来るが、直前で鬱先生は凍った。
「よし、時間があらへん、すぐ行くで!買い出し組にも連絡しといたから、もうすぐ帰って来るはずや」
「…トントン、頼んだ。無事で帰ってきてや」
シャオロンの言葉に、トントンは力強く頷いた。
「よし、トン!蜂蜜の匂いを辿ってくれ!」
「プギー!!」
グルトンがクンクンと鼻を鳴らしながら、森の方へと歩き出す。
それについていくトントンと雪乃。
「気をつけてな…」
そんな2人の背中を、留守番組は心配そうに見送っていた。
「霧が立ち込めてきましたね…」
森の中をしばらく歩いていると、視界が悪くなってきた。
「そうやな…。トン、大丈夫か?」
「プギー」
トントンの方を振り返り、頷くトン。
雪乃は歩きながら、ポケモンの気配を感じていた。
そこら中に、いる。
ずっとこちらを見ている。
まるで監視するかのように。
「プギッ!」
突然前方にボトッと、何かが落ちてきた。
「な、何や…?」
よく見ればそれは、コクーンだった。
嫌な予感。
「、走って!!」
雪乃が叫ぶ。
背後から無数の羽音が波のように迫って来る。
「いやいや、この数のスピアーはアカンやろ!!」
ブゥーンと羽音を響かせ3人を狙うのは、スピアーの大群。
「プギィィィィ!!!」
トンが爆速で逃げる。
トントンも、雪乃も一目散に走り出す。
しかし視界の悪い森の中を逃げ切れるはずもなく。
不意に振り返れば、スピアーの“どくばり”が飛んできた。
ズサァッ、と急ブレーキをかけながら立ち止まり、モンスターボールを2つ同時に投げる。
「エーフィ、サイコキネシス!ブラッキー、まもる!」
ボールから出てきた2匹に指示を出し、スピアーのどくばりを防ぐ。
「雪乃ちゃん!」
「止まらないで!そのまま走ってください!」
振り返ったトントンに、雪乃が叫ぶ。
「でも、」
「大丈夫、ここは食い止めます」
雪乃は笑って言葉を続ける。
「もし危なくなったり、蜂蜜を見つけたら、思いっきり叫んでください。すぐに駆けつけます」
雪乃の言葉に、トントンは迷いながらも頷いた。
「無理したらアカンで!!」
そう叫びながら、トンと一緒に森の奥深くへ走っていく。
「さて…」
雪乃は大量のスピアーを前に息をつく。
「虫タイプは得意じゃないんだけど、頑張りますか」
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