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コメント
2件
きゃー若井さんなんていい人なんだ😭✨️ いじめも頑張って乗り越えれるといいね! 続き待ってます💕
まだ 涼架ちゃんイジメられるの!? 滉斗の気持ちがもっと涼架ちゃんに通じます様に💙💛
[シンデレラの結末]
涼架side
若井君の胸の中で、私はしばらく泣き続けた
彼の優しい温もりに包まれて、少しずつ荒い呼吸が落ち着き、嗚咽も溜まっていく。
私は、若井君のジャージの胸元をぎゅっと掴みながら涙で濡れた顔をそっとあげた
「ごめんなさい…」
再び謝罪の言葉を口にしようとする私の唇に、若井君は人差し指をそっと当てた
「謝らないでって言っただろ。もう、いいから」
彼の声は穏やかで、まるで壊れてしまった私の心を優しく包み込むようだった
若井は、涼架が無理して笑うことも強がることもせず、ただ心の中にある感情をそのまま見せてくれたことに、深い安堵を覚えた。
私は、静かに頷くと保健室の隅に置かれた自分の鞄を指差した
「あの…カバンの中に…ギターの修理のお金…入ってるから…」
震える声でそう言うと、涼架は若井から目を逸らした。
「もらって…ください」
その言葉には、これまで涼架が一人で背負ってきた苦しみと若井、これ以上迷惑をかけられないという、彼女なりの精一杯の決意が込められていた
涼架は、そのお金を渡すことで若井に借りていたものを返し再び一人に戻るつもりでいたのだ。
しかし、若井君は私の言葉にゆっくりと首を振った
「そのお金は、受け取れない」
涼架は、若井の意外な返事に顔を上げた。
「どうして…?」
若井は、涼架の目に映る戸惑いを読み取ると優しく微笑んで言った。
「このお金は、涼架が一生懸命頑張ってくれたお金だろ?そんな大切なもの、俺がもらえるわけないだろ」
彼の言葉に、私の瞳から再び涙が溢れ出した
若井君は、私の涙をそっと拭いながら続けた
「ギターは、また治せばいい。でも、涼架の笑顔はお金じゃ買えないんだから。だから、もう無理しないで。ね?」
若井君の優しい言葉は、私の心に染み渡り、もう何も言葉を返すことができなかった
若井は、涼架がようやく自分を許そうとしていることを感じ取り、そっと保健室のベッドに腰を下ろした。
「シンデレラの物語、知ってるだろ?」
若井君は、穏やかな声で私に語りかけ始めた
私は、こくりと頷いた
「シンデレラもさ、最初は継母や姉たちにいじめられてつらい毎日を過ごしてた。
ガラスの靴を見つけるまでは、ずっと一人で誰にも自分の本当の気持ちを言えなかった。
きっと涼架みたいに一人で頑張ってだんだろうな」
若井君の言葉は、私がこれまで抱えていた孤独をそのまま言い当てた
私の瞳から再び涙が滲み出る
それは、悲しい涙ではなく自分の苦しみを理解してくれたことへの安堵の涙だった。
「でもさ、シンデレラは最後には王子様に見つけてもらえて幸せになるんだ。
自分を苦しめた人たちから解放されて、心から笑える居場所を見つけるんだ」
若井君は、私の手に自分の手を重ねた
「だから、涼架も幸せになっていいと思うよ」
若井君のまっすぐな言葉に、私は顔を上げた
私は、シンデレラを演じることを強要された時物語の結末を考える余裕などなかった
ただただ、つらいいじめの時間を乗り越えることしか頭になかった。
「涼架は、もう十分頑張った。もう、誰かのために無理して笑わなくてもいい。これからは、自分自身の幸せだけを考えて、心から笑ってほしい」
若井君の瞳は、真剣そのものだった
彼の言葉は、これまで私が、自分に課していた 『シンデレラの呪い』を解き放つ、魔法の呪文のようだった。
次回予告
[繰り返される悪意]
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