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[繰り返される悪意]
涼架side
保健室で若井君と話してから数日後、私は少しずつ元気を取り戻していた
若井君は、私が一人にならないように休み時間や放課後に頻繁に声をかけてくれた
文化祭まであと一週間となり、クラスは劇の練習で大忙しだった。
あの出来事があってから私は劇の練習に参加しないままだったが、いじめグループが私を放っておかなかった
昼休み、私が教室の窓から校舎を眺めているといじめグループの一人が近寄ってきた
「ねぇ、涼架ちゃん、そろそろシンデレラの練習しないとまずいじゃない?みんな涼架ちゃんのために時間空けて待ってるんだから」
彼女は、周りの生徒に聞こえるようにわざと大きな声で言った。
「今日、放課後に体育館でリハーサルするから。ちゃんと来たよね、シンデレラ」
な「主役がいないと出来ないんだから」
他のいじめっ子たちも集まってきて、口々に『頑張ってね!』『楽しみにしてるからね!』と声をかけてきた。
その言葉は、まるで涼架が劇のヒロインになったかのように見せかけているが実際は、涼架を逃さないための罠だった。
私は、断ればまた何をされるか分からないと言う恐怖と若井君との約束を守りたいと言う気持ちの間で揺れていた
私は、か細い声で**『…わかった』**と答えるのが精一杯だった
放課後、私は体育館へと向かった。
体育館の扉を開けると、そこにはいじめグループの女子たちだけが待っていた。
彼女達は、私を見るとニヤニヤと笑った。
「来た来た!さぁ、シンデレラの練習始めようか。本番まで時間ないからしっかりやらないとね」
いじめグループの女子たちは私を取り囲むように円を作った。
リーダー格の女子が、まるで本物の監督のように手を叩いた。
「まず、継母と姉からの罵倒に耐える練習からね。シンデレラって何も言い返せないだよね」
彼女の言葉に、他の女子たちもクスクスと笑い始めた。
私はこの場から逃げ出したい衝動に駆られたが、足がすくんで動けなかった
「シンデレラは、継母に言われたこと何でもやらなきゃなんだよね。ほら、床に落ちてるゴミ拾いなよ」
一人の女子が、ポケットから飴の包み紙を取り出し、わざと床に落とした。
私は、言われるがまま屈み込んで拾う。
すると、別の女子が、
「ねぇ、シンデレラって本当にトロいよね。こんなんじゃ、王子様にも愛されないよ」
と突き刺さるような言葉を浴びせてきた。
彼女達の罵倒は、エスカレートしていった。
「あんたみたいなチビ、一生幸せになんかなれないんだから」
「ドジでノロマのくせに、どうしてそんなに能天気なの?」
「笑ってれば許されると思ってんでしょ?吐き気がする」
劇の練習という名のもとに、彼女たちは涼架のコンプレックスやこれまで必死に隠してきた本心を抉るような言葉が次々と浴びせる。
私は、耳を塞ぎたかった。いっそのこと、このまま気を失ってしまいたかった。
すると、一人の女子が嘲笑ながら言った。
「ねぇ、シンデレラってさ、若井君に媚びてるって噂、本当?若井君趣味悪いよね」
その言葉に私の体は硬直した。
若井君にかけてもらった魔法の呪文が解けてしまったようだった。
次回予告
[王子様の魔法]
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