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暫く三人で会話をしていたもののリリナがエリスの話題に飽きてきたのか、部屋へ戻ると一人船内へ向かって行く。
残されたアフロディーテとシューベルトは再び会話を再開させたのだけど、二人の会話から更にとんでもない事実を知る事になる。
そして、その事実を知ったギルバートは、より一層エリスを守らなければという思いを強くした。
もっと探りを入れたかったギルバートだったが、見張り兵として別の仕事を頼まれてしまった為、新たな持ち場へ就く事へ。
そして、日が落ちて辺りも暗くなり始めた頃、自身の為に配給された食料を持ってエリスの元へ向かって行った。
「なかなか顔を出せなくて悪かった。変わった事は無かったか?」
「ギルバートさん……。はい、大丈夫でした」
狭く暗い空間に一人残されていたエリスは心に不安な気持ちを抱えていたものの、ギルバートが顔を見せてくれた事でその不安は一気に吹き飛び笑顔になる。
「お仕事の方、大丈夫なんですか?」
「ああ、交代で休憩を取る事になっているから問題無い」
「そうですか。それで……何か、分かりましたか?」
エリスのその質問にギルバートはどう答えるべきか一瞬言葉を詰まらせる。
全てを包み隠さずに話してしまう方がいいのかもしれないが、この後また彼女の傍を離れなくてはならない事を考えると、それは今では無いような気がしたギルバートは、
「いや、流石に奴らも警戒しているのか、大した話をしてはいなかったから特に収穫は無かった」
大した情報が得られなかったと嘘を吐いた。
エリスと共に食事をとったギルバートは再び持ち場へ就く。
深夜、任された仕事を終えて甲板に出て来たギルバートは、暗闇に紛れて誰かと密会しているシューベルトの姿を捉えた。
気付かれないよう距離を取り、相手が誰なのかを確認すると、ちょうど翳っていた月が顔を見せた事で光が差して相手の顔が映し出された。
そこに居たのはシューベルトの側近の男。
恐らくエリス捜索についての指示でもしているのだろう。
会話の全てを聞き取る事は出来なかったもののシューベルトたちはエリス捜索の範囲を更に広げようとしている事を悟り、早めに新たな対策と復讐へ向けての行動を起こさなければと決意を固めた。
翌日、ルビナ国へ着いた舟から上手く降りる事が出来たギルバートとエリスは、再び情報収集を始める事にした。
エリスは嫁いでから久々に故郷へ戻って来た事もあって、懐かしさを感じているのか行きたい場所があると遠慮がちに口にした。
「行きたい場所?」
「その……お父様とお母様が眠るお墓へ、行きたいんですけど……無理でしょうか?」
エリスのその言葉に、ギルバートは胸が締め付けられそうになった。
彼女は嫁いでからというもの軟禁状態だった事もあって、故郷へ戻る事すら出来なかった。
それが今、久しぶりに故郷の地を踏み、大好きだった両親と過ごした日々を思い出したのだろう。
大切な人に会いに行きたいと思う事は当然なのだ。
ただ、国によって王族の墓ともなれば簡単に立ち入る事が出来なかったり警備が厳重だったりする事もある。
ルビナ国がどうなのか分かりかねるギルバートは多少懸念しつつも、エリスの願いを叶えてやりたいと思い彼女の意思を尊重した。
「そうだな、きっとお前の両親もお前が顔を見せれば喜ぶだろう。どこにあるんだ?」
「王都からは少し離れているので、馬車で向かわなければならないんですけど……」
「分かった。では御者を探そう」
「はい」
エリスの希望で彼女の両親が眠る墓地へと向かう為、市場へ行って供える花束を購入してから御者を見つけた二人は馬車に揺られていく。