テラーノベル
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おめでとうございます!貴方は神に選ばれたのですね。
なるほど、圧迫の力…貴方の意思で一定量の圧力を好きな方向へかけられるようです。
悪魔を相手に戦う魔法少女にとって、アナタのこの力はとても有利に働くでしょう。
『魔法少女…?』
頭の上にそんな言葉と疑問符が浮かんでいらっしゃる様子を見る限り、何のことかよくわかっていないようですね?
_突然ですが、魔法少女をご存知ですか?
我々は魔法少女に最適な人物の勧誘をしています…例に挙げるとすれば、アイドル事務所のスカウトマンのような者です。
『あー、朝方やってる女児向けアニメ的なアレでしょ?女の子が悪に立ち向かうやつ』
そう考えたとすれば……随分とまあ、古い時代の話をしているんですね。
それは、ざっと180年ほど昔の話です。
それなら、現代における魔法少女とは何か?という疑問を持つでしょう。
現代における魔法少女は…神によって選ばれ、常人には無い特別な力を授かった20歳未満の男女…の総称。
彼らにはその力をもって自然発生するポータルを破壊、そしてポータルから生まれる悪魔を殲滅する義務が生じます。
『その力を持って一般人に害を及ぼす事はないの?害を及ぼした時の対処は?』
…と、まぁ普通の人であれば、この辺りでそんな事を考えるでしょう。
ご安心下さい。我ら国家魔法少女機関、略して魔女機関では、規則・義務に著しく反する魔法少女を処罰する仕組みがございます。
それが魔女裁判。
魔女裁判を通じて処刑するか否かを決めた後は、こちらの機関で処刑…ご遺族に死亡届と遺品をお渡し致します。
『こんなに頑張って、私個人に何の利益があるの?他人のために命なんて張れないよ!』
そう悲観していらっしゃる事でしょうが…
その体を張って国民の安全に努めていただいております故に、給金の方は確かな額をお約束しましょう。
死亡時には弔慰金として…この程度を。
さて、ここまでの説明を聞いて納得いただけましたでしょうか…?
よろしければ、こちらの契約書にサインを。
サインが完了しましたら、お嬢様は本日をもってこちらで責任を持ってお預かりさせていただきますので、ご安心下さい。
おや…サインの手が止まっておりますよ?
『サインしたくない』
『このまま生活したい』
そうですか…それは残念ですが、国家反逆罪としてご家族様も魔女裁判にかけられることになってしまいますが…よろしいので?
……あぁ、よかったです!
契約書へのサイン、ご苦労様でした。
これで本日をもってアナタも魔法少女の仲間入り…どうぞよろしくお願いしますね。
あ、そうそう。ひとつ忘れておりました。
魔法少女としての義務の話ですが…
反魔女機関派の妖精と名乗る少数テロリスト集団が存在します。
妖精に遭遇した場合は、彼らの甘言に惑わされる事なく、速やかな撃退および殺害をしてください。
もう一度言いますが、これらは義務です。
それでは…アナタの魔法少女としての今後の活躍に、国家魔法少女機関の職員一同、大変期待しております。
・ ・ ・
要塞国家…日本。
100年前、多くの国が突如発現したポータルにより滅亡寸前まで追い込まれる中、日本はいち早く対応措置を取った。
まず初めに国家の要塞化を決定し、他国からの悪魔の侵入を阻止した事が、日本存続か滅亡かのどちらかを決める…まさに瀬戸際だったと言えるだろう。
そして、その次に決定された機関。
それが現在の魔女機関こと、国家魔法少女機関の始まりである。
魔法少女を管理・育成する機関から派遣される魔法少女達によって、日本は今日も平和に歩みを進めているのだ。
「_と、本日はここまで…次回までに歴史課題レポートの要約をしておくように!」
教科担任の先生が時計をチラリと確認しながらそう声をかけると、丁度良く校内放送でチャイムが鳴る。
学級委員の声掛けで一斉に立ち上がり、一礼…タイミングも声量も、何もかもがそろわない「ありがとうございました」を口にしてクラスメイトは皆バラバラに席に座った。
「歴史課題レポート…」
俺は勉強が嫌いだ…歴史や数学なんかは始まった途端に居眠りをしたくなるくらい。
そんな俺に唐突に言い渡されたレポート要約の宿題…もはや拷問じゃなかろうか?
「次回ハ……エッ?明日ナンダケド…!?」
ショックで固まったのは俺だけじゃないらしい…あちこちからブーイングと不満の嵐が巻き起こっており、中には最初から諦めて「わかりません」の文字だけを書き込んで終わらせようとしている猛者までいるときた。
相変わらずヤベェ学校だなぁ、と溜め息を吐きながら教材を片付ける。
_ピピピ、ピピピ、ピピピピピピッ!
突如校内放送で流される電子音。
それは100円ショップで買うおもちゃみたいなタイマーのアラームに似た音だった。
[魔法少女機関より、出動要請]
その機械的な録音音声に全校生徒のうち数十名が密かに反応する。
残りの生徒達は、アラーム音の大きさに文句を垂れながらのほほーんといつも通りの時間を過ごしていた。
[魔法少女は直ちに義務を果たせ]
俺はトイレに立つフリをしてごくごく普通に教室を出ると、そのままの勢いで階段の非常口に体を滑り込ませた。
そして急いで階段を駆け上り屋上に出たら、制服の下に隠れている星のチャームのついたネックレスを引っ張り出す。
目を閉じて意識を集中させる…すると。
「……ウワァ、キッツゥ〜」
髪が伸びて、フワッフワのスカートのヒラヒラした長袖ショートドレス姿に変身。
…そう、今の時代は男も魔法少女に変身させられちゃうようなクソみたいな時代なのだ。
俺はちゃんと男だって言ったのに…女物の服でチャーム作りやがって。
…ゴミ運営が!作り直せよ!
「ヒスイ、ポータル向カイマス」
『南東と西に1つずつありますよ!』
後輩からの伝達に頷いて、近い方を選ぶ。
近い方のヤツは処理が面倒な悪魔ばかりで、今回チームアップした後輩が向かったら多分死ぬ。きっと死ぬ。割と簡単に死ぬから。
「オ…ワタシ、ハ…南東デ」
『了解しました!』
俺、と言いかけて慌てて訂正する。
どういうわけか、俺は自分から男だと言うまでは女に勘違いされる傾向にある…おそらくこの運家側のミスによる女物の装備もその原因の1つではあるのだろうけど…
まぁとにかく、戦闘前の余計な混乱を抑えるためにも短期チームアップのメンバーには女のフリをすることが多い。
「イタ」
ポータルを放置すればするだけ、危険な悪魔達は際限なく増え続ける。
だからまずはポータルの破壊が必須。
上空からポータルの中心部へ向けて風の刃を放てば、パキンッと簡単に核が壊れた。
「ン……」
残った悪魔達を殲滅して、辺りを見回す。
以上もなく、後輩の魔法少女にも異常はなく「速やかに帰還せよ」と命が出たのでその場から離れようとした時だった。
「こ、こんばんは…!いつもお疲れ様です」
「妖精カ…」
「魔女機関は危険なんです…えっと、その…私達の元へ来てくれませんか…?」
「断ル」
俺が即答すると、結婚式で新婦がつけるようなベールで素顔を隠した妖精は困ったように両手をぴたりと合わせた。
それだけで言えば、少し華美ではあるもののシスターのようなその装いも相まって善人に見えるが…
彼女がつけているベールは黒いし、その髪は血を連想させるような真っ赤な色…そして、彼女の扱う力は_
「であれば…少しでも魔女機関へ圧をかけるために、貴方を戦闘不能状態にさせてもらいます…ご、ごめんなさい……」
「ッ!」
合わされた手のひらがパッと上を向く。
すぐさま彼女の頭上には、人なんて簡単に覆い尽くせるくらいの大きな火球が生まれた。
頬を撫でる熱波に顔を顰める。
_彼女の扱う力は炎…俺との相性は最悪だ。
この妖精の構成員は一般市民に被害が及ばないように、魔女機関の関係者のみに焦点を絞って攻撃してくる。
…お陰で集中できるからいいけど。
「魔女機関は魔法少女を殺すんですよ」
悲しげな声が耳に届く。
ゴウ、と音を立てて火球が眼前に迫った。
「……_」
「!」
驚いた妖精の表情は、彼女の生み出した火球によってすぐ隠れてしまう。
ヂリ…と肌に鈍い痛みが走った瞬間、視界がぐるりと回って目を閉じた。
「……ン」
次に目を開けると、俺は学校の校舎裏に置かれている用具入れの中に立っていた。
テレポート…俺の力のひとつで、ああいう事態から逃げる際に重宝しているもの。
本来なら撃退すべきなんだろうけど。
魔女機関の最近のマインド的には「まぁ、逃げたところで別に…」っていう感じらしい。
「モウ、帰ロウカナ…」
用具入れから出て校舎裏を歩いていると、前から緑色のプラスチック製ジョウロを手に持った男子生徒が俺の袖を引いた。
俺が驚いて顔を上げると、見慣れた顔が明るくニッ!と笑顔を浮かべる。
「みどりじゃーん」
「ア…ラダオクン」
らだおくんは俺のご近所さんで、幼馴染でもあり、昔から俺なんかとも仲良くしてくれているすごく優しい、いわゆる良い人だ。
たまにポカするところも含めて、人から愛される人間なんだといつも思う。
…俺の、大好きな人だ。
「こんなとこで何してんの?」
「……壊レタ物、置イテキタノ」
用具入れには壊れた構内の備品を回収する箱がある…それ以外に言い訳が出てこなかったからアレだけど、用具入れにの箱にひとつも壊れた備品が無かったらどうしよう……
そんな俺の不安をよそに、らだおくんは用具入れにはジョウロを片付けると、俺の横に並んで歩き始めた。
「荷物は教室?」
「ウン」
「そしたら、荷物回収したら正門集合ね!」
「ワカッタ…!」
らだおくんは俺より1つ年上だから学年も1つ上で高校2年生。
成績も授業態度も特質した点はなく、きっと誰から見ても平凡でごく普通の、どこにでもいる一般生徒だろう。
その実、カリスマ性に溢れていたり、人の内側に潜り込むのがうまかったりするが…これはおそらく天性の才能なのだと思う。
「…」
正門の側でらだおくんを待ちながら、遠くの方で風に揺れている木々の輪郭をぼんやりと眺めた。
…らだおくんを好き、というのは言わずもがなトクベツな方の好きだ。
だから、こういう時にどんな顔をして待っていれば良いのか、時々わからなくなる。
「お待たせ…さ、帰ろー」
「ウン…」
「ん?…なんかあった?」
らだおくんの問いかけに対し、反射的に「なんでもないよ」と言いかけた口を閉じる。
ここでそんなことを言ったって、この質問をされた時点で何かがあったことはバレバレなので、素直に口を割ろうと思ったのだ。
とは言え、素直に「魔法少女なんだけど、義務を果たすのにちょっと疲れちゃって…」なんて言える訳もない。
「ンー…マタ妖精ガ出タンダッテ…」
「よ、妖精かぁ…」
仕方なくざっくりとした回答をすると、らだおくんは困ったように目を逸らした。
…今回現れた妖精は2名。
1人は俺の前に現れた炎の力を扱う妖精。
もう1人は、別の場所で義務を果たしていた魔法少女の前に現れた、光の力を扱う妖精。
「ナンデ力ガアルノニ魔女機関ジャナクテ、魔法少女ヤ職員バッカリ狙ウンダロウネ…酷イヨ」
俺自身に対して、正直なところどの口が言うんだという感じではあったが、本心ではあるので内なる自分のしらけた感情は無視してらだおくんを見上げる。
らだおくんは、少し疲れた表情で笑った。
きっと、俺と同じでこの手の話題には飽き飽きしているんだろう。
「ラダオクン、帰ッタラ遊ボ?」
「良いじゃん、この前の続きしよ」
「ウンッ!」
元気よく頷きながらも、俺の心は疲れ果てていて…今にも潰れてしまいそうだった。
「また後で」
「マタネ」
…妖精の話には続きがあった。
のちに光の妖精の誘いに乗ったことがバレた件の新人魔法少女は、光の妖精撃退後に早々に魔女機関に連行された。
そして、魔女裁判による処刑が家族諸共決定し…それはもう、済まされている。
その処刑された新人魔法少女は…圧迫の力を扱っていたそうだ。
まぐ
コメント
2件
女装&魔法少女的な感じが好きな私にとったら大好きな話で泣きました。ありがとうございます!!!!闇深魔法少女系いいですよね…!!登場人物大体女装しているの嬉しすぎます…衣装の想像が沢山出来て幸せです…!
登場人物rd運営も含め、だいたい女装してますヨロ。