テラーノベル
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「ん、ぁ……?」
不愉快極まりない眠りから目が覚めた。
勢いよく飛び起きれば、じくりと肩が痛む。
肩へと目を向ければ、何故か丁寧に包帯が巻かれていた。大方、連れ去られたときに巻かれたのだろう。ただ、その包帯には血が滲んでいる。その光景を見るだけで、どれだけ出血したのかが理解できた。
「あ”〜……くっそ…………」
辺りを見渡して、そう気持ちを吐き散らかした。コンクリートで囲まれた部屋に、鉄製の扉。じゃらりと手にかかる、重い感覚。
それを見て嫌でも理解してしまう。どうやら本当にあそこへ戻ってきてしまったようだ。
「……めんどくせぇ」
一度、ここには来たことがあった。
スパイとして紛れ込んでいたときに、担当の奴に連れてきてもらったのだ。確か、拷問室のような働きを果たす部屋だと教えられた。
そのため、ここに来たときは、一人の男が暴力に遭っていたのを鮮明に覚えている。
「次は俺、かぁ」
そのときはまだ予想していなかった。次、その目に遭うのは俺だと。正直、あんな惨めなもんにはなりたくない。仕事上、痛みには慣れているが、それでも進んで受けにいくようなものではない。暴力なんてまっぴらごめんだ。
そう思い、まずは逃げ出すしかないか、と考える。だが、手は手錠をされていて、なおかつ鎖に繋がれている。あまり使えそうにない。
どうしたものかと思い立ち上がると、じゃらりと鎖が音を立てる。それと同時に、鉄製の扉が重く開くのが視界に映った。
「起きやがったのか、このくそ野郎が!」
「……は?誰だお前」
そう俺に向けて毒を吐く奴の顔立ちは、どこか見たことがあるが、記憶が曖昧で思い出せない。誰だっけなぁ、こいつ。
「お前ッ……! 俺の仲間を撃って、死なせておいてッ……誰だ、だと!? ふざけるのも大概にしろ、このくそ野郎が!!」
「……あ”ぁ? なんだ。お前か」
どこか見たことがあると思ったら、どうやら俺が逃げてる最中に、殺した一人の仲間のようだった。
「お前ら、仲間が死ぬのは慣れてるだろ。なんで今になってそんなキレるんだよ」
「っ! あいつは……あいつはぁッ……!」
男が涙目になって、こちらを睨みつける。よく分からなかった。仲間の死はもちろん、人の死と隣り合わせの仕事だ。どうしてそこまで感情的になるのか。
「おっと……どうしたの、君」
そう思いながら眺めていると、また誰かが入ってくる。次は、黒いスーツを靡かせていて、青みがかった黒髪と目元の泣きぼくろが特徴の奴。
入ってきた途端、瞬く間に空気が変わった。目の前の、今にも泣き出しそうなそいつと違って、纏う圧が違うことをよく感じ取れる。
「ボスッ……!? お疲れ様です……!!」
「あはは、お疲れ様。そこの君、あまり俺の部下をいじめないでくれるかな?」
「は? いじめてなんかねぇよ」
どこか圧のある笑顔でそう言われながらも、その冗談めかした言葉に言い返してしまう。
「はは、そっか。ねぇ、君。ここの手伝いはもう不要だから、Nakamuのところへ行ってもらえる?」
「……はい、ボス。了解致しました!」
そう命令されると、泣き出しそうだったそいつはすぐに扉から出ていった。この部屋に残るは、ボスと呼ばれた奴と俺だけ。
「さて、シャークんだっけ? 質問に答えてもらおうか。君、どこの組織の者だ?」
先程の雰囲気とは打って変わっている。物腰やわらかな言い方が一瞬にして刺々しく、重い言葉遣いへと変じた。
「はっ、言う訳ねぇだろ」
だが、そんなものは慣れっこだ。怖気づかずに平然とした態度で、じっと睨みつけて言い返しをする。
「ふーん、そっか、言わないかぁ、残念。じゃあ、こうするしかないよね」
そう言ったかと思えば、そいつは俺の腹に蹴りを入れてきた。あまりに突然のことで避けることが難しく、その重い蹴りは見事に腹部へと命中した。あまりの痛みに立っていることができず、どさりと座り込んでしまう。
「う”ッ……!? くそッ、結局お得意の暴力かよ。さすがだな」
「……お褒めの言葉どーも、んで言うの?」
「こんくらいで言う奴のほうが少ねぇだろ、お前がなにしようとも絶対言わない!!」
「へー? はぁ……それもいつまでもつかなぁ」
そう口を開くと、今度は、一発、肩を負傷したほうの腕を蹴られた。よりにもよって、そこを蹴るなんてほんと趣味が悪い奴だな、なんて思う。
腕を蹴られた反動で、勢いよく動いた肩がじくりと痛んだ。
「ッ……」
だが、ここで屈するわけにはいかない。
絶対に言うもんか。
──
続
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