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私
にとって彼女は女神だった。
誰よりも美しくて、気高くて、清らかな存在。
彼女が微笑めば誰もが幸せになった。
その美しさを讃えるために、国中から詩人が集まった。
彼女を愛するために、世界中の男たちが集まってきた。
私は彼女に恋をしていた。
この気持ちだけは誰にも負けないと思っていた。
なのに、どうして……?
「ねぇ、あの人のこと好きなんでしょ?」
「えっ!?」
唐突な質問に驚いてしまった。
心臓がドキドキしてうるさいくらい。この音が聞こえたら恥ずかしいなぁ……なんて思うけど、それでも胸の音を止めることはできない。
だってこれから初めて男の人と二人きりでデートをするから。
いつもなら一緒に登下校しているけれど、今日だけは違う。
わたしと彼の初めてのデートだから――。
*
***
昨日の夜、彼氏ができたら何をしたい? という質問を友達にした時に返ってきた答えの一つがこれだった。
『お家デート』
正直言うとちょっと意外だった。
てっきり買い物とか映画とか行くのかと思ってたけど、まさかこんなところに連れ出されるなんて予想外だった。
ここはどこなのかしら?……そうね、まずは状況を整理しましょう。私は今日から2日間だけ泊まることになるお部屋へと案内されている途中だったわ。
私が住んでいる街には小さな美術館があって、そこに飾られている絵がとても素敵だから是非見てみたいと思ったのよ。
そうしたらこの人が一緒に行こうと言ってくれたんだけど、それがそもそも間違いの始まりだったのよね。
だってこの人のこと全然知らないもん! それにあの子のほうがかわいいし……。
こんなこと言ったら嫌われちゃうかなあ。
「好きじゃない」なんて言ったら傷つくよね? でも正直な気持ちだからしょうがないよねえ。
「ごめんなさい」って謝ろうっと。
だけどどうして? なんで泣いてるの? ああそうか。あたしのことが好きだったのか。
そういうことだったのか。
じゃあやっぱ言わないとね。
「好きでもない人と付き合うことはできないわ」って。
ほーんと最低だよねえ。
あたしってば超ひどい女じゃん? 好きな人にあんな顔させちゃったんだよお。
ホント悪いコトしたと思うけどさあ。
やっぱり仕方ないよねえ。
だってあたしはお姫様だからね! それは、少女にとっては当然の権利だった。
しかし、この国ではそれは許されなかった。
その権利を得るために、彼女は努力をしたのだ。
その結果が、今のこの状況なのだから。
『……』
「あーら、だんまり決め込んじゃってさぁ。せっかく助けに来てあげたっていうのに、失礼じゃない?」
目の前には、異形の怪物たちがいる。
人間ではない。獣でもない。人のふりをした化け物。
だから殺せ! 殺さなければ殺されるぞ! 血走った目の村人たち。
必死の形相で逃げ惑う狩人達。
彼らの叫びには一片の慈悲もなかった。
死ね。死んでしまえ。
お前らは害悪なのだから。
なぜ殺されないと思うのだ? それはな。
俺達が正義だからだよ!! 正義という名の狂気を振りかざして、 彼らは殺戮を続けた。
病名:泡沫花病 近年、ここ日本でおかしな病気が発見される。発病した人間は、ある感情を抱くと、周りでいきなり草花が生え始めるという。更に発病すると老化がとまってしまう。
明治になると近代化や都市化によって、妖怪など幻想世界の住人は居場所を追われていく。とはいっても現代でもなお、日本人は四季の移り変わりを楽しみ、地震や台風といった自然の脅威を畏れ、食事の際には手を合わせて恵みに感謝し、初詣に出かけて柏手を打つ。「宗教心が薄く、信仰に厚い」と言われる日本人の日常はファンタジーとの親和性が高い。
魔弾の射手……
狩人の矢……
猟銃の音……
引き金を引く音……
弾丸が放たれる音……
死を告げる音……
狩人が獲物を狙う音……
血肉を引き裂く音……
死の音……
死の音が聞こえる……
闇の向こうから……
命を奪う音が……
死にたくない! まだ死にたくはない!! 助けて!誰か助けてくれ!!! 叫びたいのに声にならない 苦しいよ 痛いよ 熱いよ 寒いよ 怖いよ 恐ろしく冷たい手が僕の首を絞めつける 僕はただ生きたかっただけなのに……
どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないの? 嫌だよ もう終わりなんて嫌だ お願いだから殺さないでくれ 何でもするから許してくれ 僕は何も悪いことなんかしていないじゃないか それなのになんで殺されなくてはならないんだよ 酷い 酷すぎる あんまりだ 神様がいるならなぜ救ってくれないのだ 悪魔がいたら何故奪っていくのだ 悪魔め お前らがいなけりゃ何もかもうまくいくのに 悪魔どもめ 地獄に落ちろ 悪魔共め いつか必ず報いを受けさせてやるぞ そうだ 絶対にこの恨みを忘れるものか 地獄の果てまで追いかけていってやる 覚悟しておけ 呪ってやる 祟ってやる 殺してやる 死んでも呪い続けてやる ああ 意識が薄れていく もうすぐ殺されるのか 悔しい 憎い 恨めしい だがその前に一つだけやっておきたいことがある それは……
今度こそ殺すことだ そうすれば永遠にあの悪魔たちを苦しませられる たとえどんな姿になろうと構わない 奴らが人間だった時と同じように痛めつけてやるのだ それはわたしたちの義務なのだから 今度の戦争では死人がたくさん出るぞ みんな死んでいく おまえの仲間も家族も恋人も わたしたちだって例外じゃない だが安心しろ 必ず生きて帰ってこよう なぜならわれわれには神の加護があるからだ おまえたちは自分の仕事だけやっていればそれでよい 余計なことを考える必要はない 何も考える必要は無い おまえたちが戦う相手は悪魔だからな 悪魔の数は減らない 戦いが終わった