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もうこんな小説作れるのだいずたんだけですクオリティ高い😭😭😭⤴️⤴️
好きですありがとうございます
太陽が顔を隠し始めた頃
人間が目を覚ました。
ちゃんと目を覚ました。
僕は少し安心した。
一人ぼっちじゃなかったからだ。
やっぱりこの人間は
僕の味方なのかもしれない。
顔色の良くなった人間は
僕のことを撫でてくれた。
人間の手は大きくて暖かくて
僕のことを包みこんでくれた。
けどまだ信じるのは早い。
もう少しすれば人間の汚く
卑怯な裏側が見えてくるはずだから。
二度と同じ過ちをしないように
もう少しの辛抱だ。
だって人間は嘘をつく生き物だから。
僕は知ってる。
[もう大丈夫。
心配しないでください。]
[順調に良くなってますよ。]
[きっと明日には
痛くなくなりますから。]
医者という立場でありながら
嘘を吐き続けた
人間のことを知ってしまっているから。
ー猫の僕と嘘つきの医者ー
僕のご主人様はたくさんの人を救う
お医者さんだった。
患者さん一人一人を大切にし
他の医者からも
とても信頼されていた。
もちろん僕もご主人様のことを
信頼していた。
その時はまだなにも知らなかった。
イヌホオズキの咲く秋の始まり
一人の老婆が病院に来た。
ご主人様はいつも通り
診察をし患者さんとお話し始めた。
[もう大丈夫。
心配しないでください。]
ご主人様が患者さんに
そう伝えたとき胸騒ぎがした。
野生の勘的なものなのか
この老婆はもうながくはない
そんな気がしたからだ。
僕には医療的な知識は全く無いけど
なぜかそんな気がした。
ご主人様は分かるはずなのに
どうして伝えないのだろうか。
たくさんの人に
信頼されている医者でありながら
患者さんに嘘をつくのか。
僕はご主人様の考えていることは
少しも分からなかった。
そこから僕はご主人様の発言に
違和感を覚え始めた。
[このまま頑張れば
歩けるようになるからね。]
[順調に良くなってますよ。
あと一週間もすれば
退院出来そうですよ。]
[私のことを信じてください。
絶対に治してみせますから。]
ご主人様と出会って半年がたったが
僕はご主人様が嘘をつく理由が
全く分からなかった。
ご主人様が患者さんと話すときに
感じるあの違和感は
消えることはなかった。
なぜ信頼されているのに
そんなことを言うのだろうか。
正直に正しいことだけを
患者さんに伝えればいいのではないのか。
僕はそう思ってた。
僕はまだまだなにも知らなかった。
最近ご主人様は顔色が悪い。
いつもより食欲がないように見えるし
クマもひどく寝れていないのだろうか。
僕はご主人様に向かって
不思議そうに鳴く。
するとご主人様は
僕のことを抱っこしイスに座った。
[どうしたの??
僕は大丈夫だよ。安心して。]
そう言ったとき
いつもの違和感を感じた。
違和感を感じたということは
ご主人様のこの言葉は
嘘なのかもしれない。
ご主人様は嘘をついているのだ。
[…君には分かっちゃうのかな…。]
ご主人様は今にも泣きそうな顔で
僕のことを見た。
ご主人様の言葉の違和感は
やっぱり嘘をついている証拠だった。
まだ僕はご主人様が
嘘をついる理由は分からなかった。
だがそれはすぐ知ることになった。
暖かく過ごしやすい
春の終わりにそれは起きた。
僕は毎日
ご主人様の隣で眠り隣で目覚める。
ご主人様を起こすのが
僕の役目だった。
だが今日ご主人様が
目覚めることはなかった。
目覚めなかったのだ。
僕が必死に鳴いても
何をしても起きることはなかった。
僕が目覚めて少しすると
他の医者や看護師さんが
ご主人様の部屋にやってきた。
医者や看護師は悲しそうな顔をしながら
僕に優しい言葉をかけてくれた。
そうしている間に
ご主人様はどこかに
連れてかれてしまった。
ご主人様は最後まで嘘をつき続けた。
最後まで
僕に何も話してくれなかった。
なぜ嘘をつき続けたのだろうか。
自分が辛いのを隠し続け
自分が居なくなるその時まで
何も吐き出さない。
どうしてそんなことを
したのだろうか。
自分が辛くないように
自分に大丈夫と言い聞かせる。
言い聞かせることにより
安心することができる。
すべては自分のために
嘘をつき続けたのではないのだろうか。
僕はそう思った。
もしかしたらご主人様は僕を
心配させないように
してくれていたのかもしれない。
人を欺き嘘を吐き続けたご主人様は
医者というより
詐欺師なのではないのだろうか。
ただ僕や患者さんの気持ちを知り
どちらも心配させないようにしてくれた。
ご主人様がついていた嘘は
誰も傷つかない優しい嘘だったのだ。
誰かを傷つけてしまう嘘ではなく
誰も傷つくことない
魔法の言葉だったのだ。