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「合コン?」
大学内、あまりに意外な言葉に思わず口を走らす。一人の男はそうだ、と言うかのように笑み、首を縦に振った。
「お前モテないだろ?」
「うっさ」
否定はしない。彼女いない歴=年齢だ。
と、そんな様な不満げな顔をしているとその友達はまあまあ奢ったるからさ、とヘラヘラする。それに対抗し、言ったな?1万は抜かすぞ、と返した。
…。
心底嫌そうな顔である。
「あ〜、とそれは置いといて、大学近くの居酒屋で20時な!!」
とりあえず了解、と返しておく。念を入れ、いつもの通りそれだけで充分か?と聞いてみる。
すると、あっ…と何かを思い出したように発する。
「そういや、1人面識ない奴いるけど大丈夫か?」
面識ないやつって誰?と問いてみると、
「んー、なんか適当に誘っちゃったんだよね。断られると思ってたから」
と、適当な返事を返される。
「はぁぁ、お前も面識ないのかよ。適当に誘うな。」
心底呆れたように思った言葉を運ばせ、ごめんごめんと言うそいつを睨みつける。
「そんなカッカすんなって!悪いやつじゃ無いから」
「お前、そいつの何知ってんだよ」
なんも知らねぇwとバカを晒しながら歩む音が無くなるのを待った。
約束の時間、20時になろうとする頃、俺は店の前に立ち止まる。
「ちょっとギリギリすぎたな。」
やりたいことを溜め込みすぎたせいか、時間に余裕を持てずに駆け込む。すでに、店内は人に溢れていた。酒の匂いが少し匂っている。
「おーい!!相田(あいだ)ー!こっちこっち!!」
聞きなれた声が聞こえてくる。俺は声の方向に歩いていく。
「遅かったな!!まだ女子軍は来てないみたい」
女子軍て…と思いつつ席に腰掛ける。並んだ顔を見ていくと明らかに知らない人がいた。
「あー、君って…
「あー!!そういえば聞いてなかったな名前!!」
1発殴る。そいつはぐぇ、と情けない声を漏らす。名前くらい聞いとけ。
「日暮 瑞貴(ひぐれ みずき)。同じ大学生です。」
「あー、いやいや!こっちこそ急にごめん!俺は相田 悠(ゆう)。よろくね」
軽く自己紹介をする。もっとふざけたやつかと思っていたものだから落ち着いた人で安心する。
今日どんな感じなんだろうねー。
そうやってのんびりと会釈をしていると女性の声が近づいてきた。相手の方々だろう。
「あ、こんばんは。ごめんなさい、少し遅れてしまいました。」
急に頭を下げられたので反射的にいやいや!時間はたっぷりありますし、と返す。
「じゃあ、早速始めましょう!!」
と、主催者ぶって声がけをする。お前が仕切るんかよ!!とツッコまれる。
全員が集まって何分がたっただろうか。酒もまわってきて男も女も狙った人に話しかけている。もちろん俺は空気になった。呪いかなこれ。
「はぁぁ、俺じゃ場違いだったかな」
溢れ出た言葉を噛み締めながらチラッと横を見る。
「って、あれ」
日暮も孤立していた。モテそうなのに。仲間意識を持ちながら機嫌よく近づく。
「日暮、お前女子と話さないのか?」
「え?」
よく見るとスマホを片手に持っていて、それから視線を逸らすと俺を真っ直ぐ見つめた。
「あまり接し方が分からなくて」
意外にも女性経験がないようだった。少し喜びが浮かぶ。
「そうか!じゃ、俺と話そ!暇だし!!」
「相田さんと?でも、合コンに来たのに…」
相手にされないからいいんだよ、と悲しげに言うと憐れまれるような目で見られる。俺は自分のグラスを手に取り、日暮のグラスに近づける。
「乾杯しよ!今日は来てくれてありがとな!」
「えっ、はい。こちらこそ…」
グラスとグラスは弾くようないい音を立てる。日暮は落ち着かない様子でグラスを見つめていた。