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「あ! 皐月、おはよー!」

「おぉ、おはよう。こんな時間に会うなんて運が良いな」


澄んだ空気に包まれる朝の登校時。紅本がいつもより二本早い電車に乗ると、恋人の未早が笑顔で隣の車両にやってきた。

「行動を見透かされてるみたいで怖いな。お前、実は俺のスマホにGPSでも仕込んでんじゃないか?」

「ねぇ見て、スマホで見つけたんだけど駅の近くに美味しいハンバーガー食べれるところあるんだって。学校終わったら行こうよ」

「え? あぁ、いいよ。でも今日は研究会の集まりがあるから、ちょっとだけ待ってもらうことになるけど」

「あぁ……、分かった。じゃあ俺適当に時間潰してるね。あと、終わったら本屋に寄りたいな。それと……」

電車が停まる。出勤中のサラリーマン達が我先にと一斉に乗り込んできた。

「うん、うん……」

その間も未早は淀みなく喋り続ける。仕方ないので彼をドア付近の手すりに追いやり、俺はドアに片手をついてバランスを保った。

「あ、楽器屋にも行きたい!」

「オーケーオーケー、分かった。ちょっと、後で詳しく聞くから……今は勘弁して」

コーナーに差し掛かり、電車が揺れる度に後方の大人達の全体重がのしかかってくる。俺は俺で、バランスを崩して未早をぺしゃんこにしないよう必死だった。早い時間に乗った方が混雑することを学んだので、二度とこの時間の電車には乗らないだろう。俺はまたひとつ賢くなった。もうそれでいいじゃないか。


とても長い四つの駅を乗り越え、学校の最寄り駅に降り立った。自分だけでなく、後ろの大人達も支えていた手のひらは真っ赤になっている。

未早から遠ざかったところでヒィヒィ言って学校に着いた。

「皐月。あれ、放課後BL研究会があるんだっけ?」

「あぁ。お前も寄ってくか?」

「ううん……」

未早は首を横に振り、それから俺の手を見た。

「何かそっちの手だけ赤くない?」

「呪われてるんだ」

「うん……? 研究会が終わったら、連絡ちょうだい」

未早はまたいつものテンションで自分の教室へ向かった。何だろう。所々話が噛み合わなかった。いや、いつものことなんだけど、いつもより二割増で話が噛み合わなかった。何かあったんだろうか。

少し考えて、ひとつの可能性に思い至る。周りをよく確認したあとスマホを取り出した。


まさか、これのせい……!?

現在の俺の待ち受け画像。それは今度アニメ化するBL漫画の主人公と恋人が裸で抱き合っているものだった。俺が気付かない間に未早はこれを見たのかもしれない。そして彼には刺激が強過ぎて混乱を招いてしまったのかも……。


なんてことだ。またやってしまった。俺は先輩として、歳上として、できるだけスローリーに手ほどきするつもりだったのに。どうして現実はいつも上手くいかないんだろう。



先輩にそのBL小説はまだ早いと思います

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