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わからない
いふside__
気づいたら授業が終わっていた。
チャイムが鳴り、
周りが一斉に立ち上がるまで、
俺はノートを見ていた。
板書は取れている。
字も、いつも通り。
ちゃんと聞いていたはずなのに、
先生の話は、ほとんど覚えていなかった。
電車の中でスマホを見る。
ほとけからの連絡は、ない。
今日も、俺が先に行くつもりやった。
ほとけのために早く着いて、
鍵を開けて、
電気をつけておきたかった。
いふ)…ん?
ドアを開けると、
見慣れたほとけの靴があった。
……
いふ)ただいま。
返事はない。
リビングの電気はついていて、
ほとけはソファに座っていた。
なんでか今日は、
いつもより近く感じた。
いふ)早かったんやな。
言ってから、
余計なことを言ったかもしれん、と思った。
ほとけ)(コクッ)
今日は、
なんとなく、
もしかしたら――
ほとけ)(口を開く)
一瞬、喉が動くのが見えた。
今、声になりかけた。
俺は、何も言わなかった。
急かしたらあかん。
焦らせたら、きっと出なくなる。
わかってるはずやのに。
ほとけの指先が、
膝の上で強く握られる。
もう一度、口が動いた。
……でも、音は続かなかった。
いふ)大丈夫、ゆっくり治そう。焦らんでええよ。
思ったより声が低くて、
自分でも驚いた。
ほとけ)(コクッ(涙目))
いふ)……なんで……
いふ)!!ごめん。ごめんな。
いふ)…(涙を拭く)
謝るみたいに溢れる涙。
俺は、どうしたらよかったんやろ。
抱きしめる?
声をかける?
それとも、励ます?
正解が、わからん。
前は、
声があったから、
わかったつもりでいられただけかもしれん。
いふ)無理せんといてな。
やっと出た言葉は短くて、
長くは続かなかった。
俺、笑えてるやろか。
手を伸ばして、
触れるのをやめる理由もなかった。
声が出なかったことより、
期待してしまった自分が、
少しだけ――
ほんの少しだけ、怖かった。