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夢の中で夫に愛された朝は、体全体が重くて怠い。
つい夢中になってしまってすみません……。
聞こえてきた夫の声を幻聴と片付けて、ベルを鳴らす。
鳴らさなくても起床の気配を察知して来てくれるノワールだけど、ベルを鳴らすシチュエーションに憧れがあるので、時々こうやってノワールを呼ぶのだ。
「肉体疲労を回復させるハーブとなっております」
鮮やかなルビー色はハイビスカスかルイボスティーかな?
香るのはミントとジンジャー。
甘みは蜂蜜だろう。
素敵に飲みやすい。
いろいろと見透かされている感じにも目を瞑りつつ、彩絲と雪華を呼んだ。
「お早う、アリッサ」
「目覚めは爽快かぇ、アリッサ」
美少女と美女が微笑を浮かべて歩いてくる。
朝から眼福だ。
ノワールに自分たちの飲み物を頼んだ二人は、ベッドの上で半身を起こす私の近くに座る。
「ノワールの淹れてくれたハーブティーのおかげで大分目が覚めたわ」
「それは上々」
「それで、ね。王城と神殿絡みの一件も落ち着いたことだし……本拠点候補地を巡ろうかと思っているの」
「御方様の提案?」
「ええ、そうよ」
「そろそろかなぁって、思ってたよ」
雪華がにっこりと笑う。
秘めやかな毒が仕込まれている黒い微笑だ。
「そうじゃのぅ。神殿も、王城も。アリッサの威を借りすぎじゃ」
「うん。御方様が心配されるのも無理はないと思うんだ」
「あら。二人には見透かされていたのね?」
「守護獣だからね! それじゃあ、私は王城に決定事項として伝えに行ってくるよ」
「では、妾は神殿じゃな」
私が足を運ぶ必要はないと、細めた眼差しが訴えかけてくる。
この二人も過保護なのだ。
苦笑する私の額と頬へ、それぞれ親愛のキスを残した二人が颯爽と部屋を出て行く。
「屋敷は留守の者が過不足なく守るので、ご心配なきよう」
「皆、のびのびとやってくれているからね。任せようと思います」
「移動はモリオンとホークアイで問題ございません。彼らは空も駆けますから」
王都では目立っちゃうからなかなか使ってあげられなかった。
目的地への移動は基本的に馬車になるだろう。
久しぶりに全力で走る彼らも満足するに違いない。
「食料や日用品などの準備は常に整えてございます。ただ服に関しては守護獣のお二方に相談しないといけません」
二人の拘りは凄いからねぇ。
必要最低限の服だけ持って、あとは現地調達でもいいと思うんだけど。
あーでも、下着なんかは王都製がいいのかしら?
「馬車で長時間移動する場合、こちらはどんな暇潰しをするの?」
「高位貴族は休憩が多いですから、おしゃべりを楽しむようです。冒険者などは武器や日用品の手入れ、読書、賭けカードゲームあたり。酔わないのであれば刺繍や編み物などもよろしいかと」
モリオンたちに乗っていれば酔いは考えなくていい。
刺繍か……向こうに負けない綺麗な刺繍もたくさんあるようだし、挑戦するのも面白そうだ。
一年掛けて刺繍の通信講座を修了させたけれど、それっきりだったしね。
ワンポイント刺繍ぐらいならできるけど、ワンピースの裾や襟への鮮やかな刺繍は無理っぽい。
「刺繍絵画とか、無謀かしら?」
「刺繍初心者でも時間をかければ作れましょう。本拠地のお部屋に飾るのもよろしいかもしれません」
嬉しい提案だ。
良い目標にもなる。
花瓶に生けられた白百合の刺繍とか、好みかも。
寝室なら親しい人しか入らないから、上手じゃなくても許される気がするしね。
「じゃあ、私は旅に出る準備として刺繍用品を購入すればいいかしら?」
「よろしいかと存じます。護衛にはフェリシアを、刺繍用品の目利きにはネイをお連れくださいませ」
「わかりました。皆、朝ご飯は終えているの?」
「はい。先にいただいております」
「じゃあ、お昼は三人で食べようかな……」
「朝食はよろしいので?」
「うーん。何だか胸が一杯だから、このハーブティーで十分」
「……御方様には諫言をせねばならないようでございますね」
ノワールの眼差しが鋭さを増す。
閨関係の制限を求めるのだろうか。
恥ずかしいが自分からは言い出しにくいので、ノワールを止めるつもりはなかった。
夫からの無言の責めを察知したが、今回もスルーしておく。
何事にも節度は必要だと思うわけです。
二人がいないので、ノワールに服を選んでもらう。
自分だとあまりにもたくさんあるから選ぶのに時間がかかるからね。
ノワールが選んでくれたのはハイウエストのジャンパースカート。
ウエスト部分の四つボタンがポイントで、後ろで結ぶタイプのデザインだ。
英国風といえばわかりやすいだろうか?
裾はフリルになっている。
色はブルーグレー。
ブラウスはふわりと胸元でリボンを結ぶ長袖。
色はピュアホワイト。
髪の毛は下ろして、一部をスカートと同布のリボンで結ばれた。
アクセサリーはイヤリングのみ。
スカートとリボンに合わせたら、珍しいゾイサイトのイヤリングになった。
長さの違うチェーンに三粒の雫が垂れ下がっている。
首を傾げれば微かにしゃらりと音がした。
バッグは丸形ポシェットタイプ。
ピュワホワイトの総レース。
それこそ、ハンカチ、ポケットティッシュ、口紅と小銭入れが入れば限界の小さなもの。
荷物はマジックバッグを背負ったネイがいるから、本当におしゃれ用のバッグだ。
ちなみに私が持つ丸形ポシェットの十分の一しかない、ネイのリュック型マジックバッグの容量は大型冷蔵庫並みらしい。
重さで計算されるので、糸など売るほど買っても限界には達しないだろう。
「守護獣のお二方が戻りましたら、御主人様の旅装支度をするように申し伝えます」
「よろしく……ほどほどにと、ね?」
「確かに承りました」
しっかりと全体を見てもらってから部屋を出る。
フェリシアとネイを連れた私は、手芸店を訪れるべく馬車に乗った。
と、扉を閉める直前にランディーニが中へ飛び込んでくる。
彼女も一緒に行ってくれるようだ。
王都一の品揃えと謳われている手芸店の入り口は小さかった。
個人経営の小綺麗な店、という印象だ。
しかし中は空間を拡張しているのだろう。
入り口からは想像もできない広さだった。
案内人がいないと絶対に迷子になる。
「御主人様のお求めは、初心者用の刺繍セットで、よろしいでしょうか?」
「ええ、それでお願い」
「全くの初心者でしたら、ステッチの練習セットを、お勧めします」
「向こうではワンポイント刺繍しかできなかったから……ステッチの練習から始めた方が良さそうね」
「では、こちらです」
フェリシアの肩に乗っているネイが案内をしてくれるようだ。
奴隷に売られる前に何度も来たらしい。
久しぶりの訪れに心なしか体が弾んで見える。
ネイは三姉妹の中でも特にインドア派らしい。
読書に続いて刺繍も趣味なのだとか。
「趣味と言えるのは、現在の待遇が良いからです。以前は小銭稼ぎとしか、考えられませんでしたから」
ネイの小さな手で紡がれるワンポイント刺繍のハンカチは、良い値段で貴族令嬢に売れたのだとか。
今後は他の姉妹のためでなく、自分のために使ってほしい小銭だ。
もっとも彼女のこと。
二人の姉や同僚へのプレゼントに使う予感しかしなかった。
「初めて訪れました。手芸店」
「そうだと思った。フェリシアの目、まん丸だもん」
「そうかな? 恥ずかしい。こういった女性らしい世界とは遠い生活をしていたからなぁ……」
「フェリシアも刺繍、やってみる? 動物の刺繍とか、上手に刺しそうな気がするわ」
「同感」
ネイの意見に賛同すればフェリシアは照れながら、私と同じステッチの練習セットを購入する。
「あとは、段階を踏んで練習できるように、初心者用、中級者用、上級者用も購入しておきますね」
「一度に買わなくてもいい気もするけれど?」
「最終目的が決まっているなら、買っておいた方がいいのです」
「なるほどねぇ」
達成感を得るとやる気が出る性分なので、ネイの意見には頷くしかなかった。
商売はさて置き、教室でも開くのですか? という量の刺繍に関する品物をあれこれと購入したけれど。
ネイのマジックバッグにはまだまだ空きがあったようだ。
手芸品店を堪能して帰宅すれば、彩絲と雪華が私の衣類を丁寧に詰め込んでいる最中だった。
全部持って行くそうですよ……。
正直そうきたか……と思いましたが、夫の指示だそうで。
専用のアイテムバッグ トランクケースタイプをもらって、二人とも大喜びしていました。
一応、移動している最中にその場その場で購入すればいいのでは? と申し出てみたけれど、それは当然大量購入するとのこと。
頻繁に服を着替えている気がするけれど、この先同じ服を二度と着ない贅沢な生活をしそうな予感です。
向こうでもそうだったなぁ、そういえば。
お気に入りの服は着なくても保管しておいてくれたけれど、基本的に一度着た服は処分していたみたい。
夫の友人の一人が、オークション形式で売れていますよ、毎回! って言ってたけど……うん。
深く考えちゃ駄目な奴だね。
夫はチャリティーオークションと何ら変わりありませんよ? とは言っていたんだけど。
ま、まぁ。
服に関しては二人に任せて、それ以外はノワールに任せておけばいいか、と結論づけた私の頭にふと浮かぶものがあった。
最近立て込んでいてすっかり忘れていたけれど、クエストのチェックをしておかないとまずい気がする。
王都を出るなら切りがいいしね。
そういえば今更なんだけど、クエスト報酬ってないのかしら?
ただの目標として捉えるなら別にいいんだけど、クエストって表現されると報酬が欲しくなるよね。
ゲーム脳だし。
……何か欲しいものはありますか?
ははは。
夫も目標=クエストの考えだったみたい。
今の所欲しいものは思いつかないので保留でお願いします!
拳を握り締めて脳内で叫べば、申し訳なさそうな反応があった。
別に気にしないでいいのにね。
思いつきを言っただけなんだから。
*王都での拠点を整えよう。をクリアしました。
*親しい人に料理を振る舞おう。をクリアしました。
*王都を堪能しよう。をクリアしました。
*王都ダンジョン攻略をしよう。のクエストがキャンセルされました。
新しいクエストが発生しました。
おぉ!
クエストのキャンセルは初めてだわ。
王都のダンジョンも行きたかったんだけどね。
他のダンジョンが気になるから機会があったらでいいか。
王都にはこの先何度も訪れることになるだろうし。
*クエストの優先順位が変わりました。
*王都を出てみよう。
カプレシア、タンザンコ、ラヌゼーイとダンジョンを回る他に、彩絲と雪華のテリトリーに行くのも面白いでしょうね。
オススメ市町村マップも参照してみてください。
達成報酬 プリッツダム王国商品券 100ギル分
*拠点を作ろう。
ほぼほぼラヌゼーイで確定だと思いますが、他にも琴線に触れる場所がありましたら、遠慮なくそちらに変更するとよいでしょう。
オススメ拠点マップ&資料を参照のこと。
達成報酬 プリッツダム王国商品券 1000ギル分
*商売をしてみよう。
屋台飯も良し、移動雑貨屋さんも良し。
許可は商業ギルドで取れますよ。
初めは絨毯一枚分の小商いからのスタートが無難です。
達成報酬 移動式素敵屋台
*釣りをしてみよう。
ギルドの依頼に結構ありますからね。
挑戦してみると面白いかと。
美味しい魚介も多いですよ。
達成報酬 高級釣り竿(レア物が釣れる確率が上がります)
*農業をしてみよう。
こちらもギルドの依頼に多いです。
草むしりや水やりは、農作物が報酬なので子供にも人気があります。
達成報酬 農作業一式セット
街に入る前にクエストチェックをしてくださいね!
今まで報酬を設定していなかった分、細かく新しいクエストを考えますから。
何とも夫らしい反応に、自然と微笑が浮かぶ。
早速報酬についても考えてくれたらしい。
それにしても商品券なんてあるんだね!
国内で流通している商品券とか凄くない?
これも夫の発案かしら。
どれも面白そうなクエストだ。
あちらで夫とやったのは釣りぐらい。
船での海釣りだったから本格的だったのかも。
ビギナーズラックで美味しい魚が釣れた記憶がある。
船上で料理もしてもらったし、戻ってからも魚三昧で幸せだったなぁ……。
夫が隣にいないのは残念だけど、女だらけの釣りも楽しそうだ。
道中で飽きたら川釣りをしてもいいかもね。
急ぐ旅路でもなし。
「アリッサー最初の目的地って、何処になってるの?」
「ん? 主人から聞いていない? カプレシア、タンザンコ、ラヌゼーイの順番で回るといいかもって言われているんだけど……」
「なるほどねぇ……了解。途中にある私と彩絲の故郷にも寄っていい?」
「勿論。楽しみだわ」
「蛇ダンジョンはさて置き、蜘蛛ダンジョンは大丈夫かぇ?」
苦手な蛇はいないが、苦手な蜘蛛はいる。
面白いドロップアイテムや採取できるアイテムがないならスルーしたいところです、ええ。
「全部のダンジョンを攻略するのはさすがに大変じゃない?」
「カプレシアなら氷ダンジョンと服ダンジョンか……」
「アリッサは氷ダンジョンを好むじゃろう?」
「服ダンジョンも気になるけどね」
砂漠にある服ダンジョンなら、露出度の高い服が多くドロップする印象がある。
夫が嫌がりそうじゃない?
貴女が着なければいいのです。
皆に着せてあげればいいのでは?
あ、行くのはいいらしい。
王都拠点の留守を守ってくれる子たちのお土産にもいいよね。
皆スタイルがいいからなぁ。
特にローレルは似合いそう。
人魚族だからねぇ。
リスっ子サイズの服もドロップすればいいのに。