テラーノベル
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会社の近くにある居酒屋で飲み会があるらしい。
俺は新人。勿論飲み会なんて参加したことがない。この飲み会は、新人歓迎会的な意味合いもあるのだろうか。
1人遅れて店の暖簾を潜り、店へ入った。
店に入ると、揚げ物の匂いと酒の匂いが充満していて、少し顔をしかめる。
「うおーい!若井くん!大森くんの隣に来なさい!今日は沢山飲んで帰れよ〜!」
店中に響き渡る課長の声。
「あっ、はい。」
トコトコと大森先輩の隣の席に座る。
課長はもう既に出来上がっているらしい。
顔が赤色……と言うより土色だ。
俺の配属の部署は20人ほどの人間がいる。今日飲み会に参加している人数は15人ほどだそうだ。そして、その中で新人は俺1人。
俺含め新人は5人ほどいるはずなのだが……
他4人は帰ってしまったらしい。
「おい、若井くん!何が食べたい?なんでもいいぞ?食べたいやつを頼みなさい」
「……あぁ、じゃあ、烏龍茶を下さい」
「烏龍茶?ハッハッハ!烏龍茶か、そうかそうか、分かった、店長!烏龍茶をひとつぅ!! 」
本当にうるさい。
どこから出てるんだよ、そんな声。
烏龍茶が来るのを待つ間、大森先輩と話でもしようと思って隣を見ると、ビールジョッキを両手で持ち、薄い唇でこくこくとビールを流し込む大森先輩の姿があった。
その姿があまりにも妖艶で、色気があり、赤く染まる頬がなんだか愛おしく思えてきてしまって、思わず視線を逸らす。
普段きっちりして真面目な人のこんなとこ見ちゃったらいつも通りの会話なんてできない。
可愛すぎる。嫌でも意識してしまう。
男でこんな可愛い飲み方するやついないだろ。
なんでこんなに可愛いんだよ。
自分のこの思考に驚きながらも、大森先輩と会話をしようと試みた。
「お、大森先輩、」
「…わかい?なんか言った?」
「!大森先輩はっ、その…ビールですか?」
分かりきっていることを聞いてしまった。
「うん…そうだよ、わかいは?」
「俺ですか?烏龍茶です。」
「そっか、お酒飲まないんだね」
「はい、結構弱くて…笑」
「ええ、意外かも、強いのかとばっかり思ってた」
「ふふ、そう言う大森先輩こそ、全然酔わないタイプだと思ってました、」
「多分だけど、お前よりは強いぞ」
そんな他愛もない会話を続けること早3分。
「お待たせ致しました、烏龍茶でございます。」
地味に待っていた烏龍茶が来た。しかもジョッキで。
すかさず烏龍茶の入ったジョッキを手に持ち、胸のドキドキを胃に押し込むように烏龍茶を流し込んだ。
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