テラーノベル
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飲み会開始から2時間くらいたっだろうか。
課長もなかなかの形相だ。飲みすぎではないか?
もう帰りたそうにしている社員がパッと見5人ほど居そうだ。俺ももう帰りたい。
隣を見ると、耳と頬を赤く染めて前や後ろに舟を漕いでいる大森先輩がいた。
(眠たいんだろうな…)
「皆さん帰りたいでしょう?もう帰られて大丈夫ですよ」
課長を介抱している社員のひとりが話し始めた途端「あ、じゃあ帰ります。失礼します」
「私も帰ります…」
続々と帰り始めた。
「2人も帰りなさい」
課長の介抱係の社員が帰れと諭すので、大森先輩を起こしてさっさと帰ろうと思う。
「大森先輩、もう皆さん帰られてるんで、俺らも帰りましょう、起きてください」
「ん〜、」
何、可愛いんだけど
トントンと大森先輩の肩を叩く。
「わかぃ…?あぁ、ごめん」
目を擦ってこちらを見る。
俺を見ている大森先輩の顔は、赤く火照っていて、顔の輪郭がぼやけるくらいふにゃっと柔らかい顔になっていた。
(いつもの大森先輩では考えられない顔だな…)
「ふふっ…なにぃ?帰ろっか…」
机に膝を付き、首を傾げてニコニコとご機嫌笑顔を見せる。
お酒飲ませちゃダメなタイプだったか。
魔性だな。
「はいっ!帰りましょう。」
(やばい。可愛い。こんなん聞いてない、)
先輩と二人で店を出て、タクシーを呼んだ。
大森先輩はフラフラウトウトして歩ける状態ではなかったので、眠らないよう声をかけつつ大森先輩の腰に手を回して、支えるように二人歩いた。
「大森先輩ッ、ほら、タクシー来ましたよ、乗ってください。」
「なに、わかい、僕を置いていくつもりか?」
「違います。大森先輩をタクシーで送り届けるまでが俺の仕事なんで、大森先輩をここに置いていくなんて、する訳ないでしょ、」
大森先輩をタクシーの後部座席に座らせて、
その隣に俺が座った。
「大森先輩ッ!まだ寝ないでくださいよ?って、ちょっと!大森先輩!」
すかさず大森先輩の顔を覗くと、長いまつ毛を見せて、クークーと寝息を立てていた。
いくら声をかけても起きない。
(もー、まじかよ…)
仕方ないので俺の家に大森先輩を泊まらせることにした。
「あー、すみません。ここまでお願いします。」
「……あいよ」
不機嫌そうなタクシー運転手。ぶっきらぼうな返事が返ってきた。
タクシーのエンジン音がなり、微弱な振動が体を包む。
なんだか俺まで眠たくなってきてしまった。
賑わう夜の街をぼーっと眺めていたら、
肩が急に重たくなって自らの肩を見る。
「ッ!…」
大森先輩の頭が俺の右肩を占領していた。
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