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幼馴染の罪滅ぼしと恋心

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幼馴染の罪滅ぼしと恋心

37 - 完璧彼氏と迎えるクリスマスイブ 6

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2024年09月22日

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「……うそ」


視界の先には仕事で忙しいと言っていたはずの大樹が居た。

右手にブランド物の手提げを下げて、左手はコートのポケットに入れていて……その腕には私が見た事が無い綺麗な女性の腕が絡んでいる。


あの人は誰? 今まで大樹の家に押しかけて来たタイプじゃない。もっとずっと大人で、スーツ姿の大樹と並んでいるのがとても似合う女性。


心臓がドキドキする。気分が悪くなって足が進まなくて……。


「あの男、この前青山さんのところに来たやつだよな」


私の様子の変化に気付いた須藤さんは、私の視線を追ったみたいだった。


大樹はとっても目立つし印象的だから、須藤さんもしっかり覚えていたみたいだ。


彼はしばらく大樹の事を見ていたけれど、からかいを含んだ声で私に言った。


「あれ浮気だな。それとも向こうが本命か?イブに一緒に居るんだからな」


「……!」


「まあ男なんてそんなもんだからな、残念だったな」


須藤さんは何でもない様にそう言うと私を置いて歩いて行く。


でも私は直ぐには足が動かなくて、楽しそうな笑顔で遠ざかって行く大樹と見知らぬ女性の姿を見えなくなるまで見送った。


大樹が浮気なんてする訳ない。昔も今もこれからも。


私だけを好きだって。

私にだけは本当の事を知って欲しいと言っていたのだから。


あの女の人はきっと会社の人なんだよね?


ブランド物の手提げはあの人の荷物を持ってあげてたんだよね?


腕を組んでたのは……あの女の人がふざけてやっただけで、大樹は優しいから断われなかったんだよね?


そう自分に言い聞かせてながらも、思い出してしまう。


ここ最近忙しいって言って顔も見せてくれなくて、電話も早く切られてしまっていた。休日出勤の日に車がなくて……こんなの考え過ぎだよね?


きっと、さっきのシーンが私には強烈過ぎたから変な考えばかりが浮かんでしまうんだと思う。


今は仕事に集中して若生屋さんの件を解決しなくちゃいけないのに。帰社してパソコンに向かってからももちっとも集中できないでいた。


何度もミス入力をしてはやり直しで時間ばかりが過ぎて行く。


それでも必死にやっていたのに、いつの間にか近付いて来ていた須藤さんが私を蔑んだ目で見て言った。


「女って本当に感情的だよな。男に裏切られたら仕事も出来なくなるのか?」


「……ちゃんと手配しています」


「さっきからミスばかりで最低の効率だけど」


「見てたなら手伝ってくれたらいいじゃないですか……こうなったのは須藤さんのミスなんですよ!」


イライラが募って我慢できなくなって思わず高い声を上げてしまうと、須藤さんは思い切り顔をしかめた。


「女のヒステリーは見苦しいな」


「……」


「相手に期待するから傷付くんだよ。こうして欲しい、ああして欲しい、理想を押し付けたって相手が応えてくれる可能性なんてほとんど無い。だったら初めから期待しなければいいんだよ」


期待しない? 私は大樹に……好きな人に何かを望んじゃいけないと言うの?


確かにいろいろ期待するのは私の勝手だけどし、それで応えてくれないからといって傷付くのは自己中だと思うけど。でも……


「私は期待するのを辞めません。相手に何も期待しないなんて、そんな関係寂しいとしか思えません。私は好きな人には期待したいし、私も相手の期待に応える為に頑張ってそれでずっと仲良くやっていきたい」


大樹が私を裏切る訳がないって、これからも信じていたい。


私の言葉に須藤さんは苦笑いを浮かべる。


彼のことだから、私の発言が馬鹿らしいと感じ呆れているのだろう。


でも言った言葉を訂正する気にはならなくて黙っていると、須藤さんの手が伸びて、私の机の上に散乱していた若生屋さんの注文書の束を掴み取った。


「あの?」


「残りは自分でやれよ」


「……手伝ってくれるんですか?」


須藤さんが? 信じられない……。


「これ以上ヒステリーを起こされたらたまらないからな。早く帰りたいんだろ?」


須藤さんはそう言って自分の席に戻って行く。私の手元に残ったのは元有った量の三分の一。


どうして須藤さんが手伝ってくれるのか分からない。


でもとにかく早く終らせて大樹と会いたくて、作業を再開する。


「まだ終らないのか?」


私の倍の量を分担したはずの須藤さんは、早くも処理を終えて余裕の表情で私を急かす。


「あと一件ですから黙っていてください……終りました」


ああ……ようやく終った!


「じゃあ後は確認して修正して終わりだな」


「はい」


須藤さんと手分けをして確認作業をしていく。


「青山さん、やっぱりやる気無いだろ?間違いだらけ」


「えっ……そんなはずは」


「また発見。相当動揺してるんだ」


「そんなことないです!」


「まあ頑張って話し合ったら? でも男は手に入ると急に冷めたりするし悲惨な結果になるかもしれないけど」


「いやなこと言わないでください……それよりも、もう注文書なくさないで下さいね」


「問題ない。俺は本来ミスはしないからな」



すっごい自信。でも自分で言い切るだけあって須藤さんの処理は完璧で修正の余地が無い。


こんなに正確に処理出きるのにどうして若生屋さんの注文書無くしたんだろう。


なんだかんだ言い合いながら確認を終わらせ、私のミスの多さに呆れる須藤さんに一応お礼を言って私はオフィスを飛びだした。

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