テラーノベル
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夜更けのリビングは、暖房の音だけが静かに響いていた。カーテンの向こうでは、雪が音もなく降り続いている。
ソファの端に座るこさめは、マグカップを両手で包んでいた。
温かいはずなのに、なぜか指先が落ち着かない。
🎼☔️「……らんくん、眠くない?」
🎼🌸「まだ」
短い返事。
それだけで、こさめは少し安心する。
らんは向かいのソファに座ったまま、こさめを見ていた。
見つめている、というほど露骨じゃない。
でも、目が合うと、すぐに逸らされない。
🎼☔️「……どうしたの?」
🎼🌸「こさめが静かだから」
それは、いつもと逆だった。
らんが静かで、こさめが気にしているはずなのに。
🎼☔️「クリスマスだよ?」
🎼🌸「だから」
らんは立ち上がり、こさめの隣に腰を下ろす。
ソファがわずかに沈み、距離が一気に縮まった。
肩が触れる。
それだけなのに、こさめは息を吸い直した。
🎼☔️「……近い」
🎼🌸「嫌?」
即答できない。
その沈黙が、答えみたいなものだった。
🎼🌸「なら、動かないで」
静かな声。
強くもなく、命令でもないのに、逆らえない。
らんの指が、ソファの背にかかる。
こさめの背後を塞ぐような形になって、逃げ場がなくなる。
🎼☔️「……らんくん」
🎼🌸「なに」
名前を呼ばれるたび、胸がきゅっとなる。
それを知られている気がして、こさめは少し悔しい。
🎼☔️「見すぎ」
🎼🌸「見ていいでしょ」
当たり前みたいに言われて、言葉に詰まる。
らんは、こさめの表情をゆっくりなぞるように見ていた。
🎼🌸「目、伏せるとさ」
🎼☔️「……?」
🎼🌸「触れたくなる」
こさめの喉が、小さく鳴る。
その音を、らんは聞き逃さなかった。
🎼🌸「ほら」
🎼☔️「……なに」
🎼🌸「正直」
らんの指が、こさめのマフラーの端にかかる。
引かない。ただ、触れるだけ。
🎼☔️「……やめてって言ったら?」
🎼🌸「やめるよ」
即答だった。
だからこそ、こさめは言えなくなる。
🎼☔️「……言わない」
🎼🌸「だと思った」
少しだけ、距離が縮まる。
額と額が、そっと触れた。
吐息が混じる。
それ以上近づかないのが、余計に苦しい。
🎼☔️「……キス、しないの?」
🎼🌸「したい?」
問い返されて、こさめは黙り込む。
その沈黙すら、らんは愛おしそうに見ていた。
🎼🌸「今日は、ゆっくり」
🎼☔️「……意地悪」
🎼🌸「クリスマスだから」
理由にならない理由。
でも、嫌じゃない。
らんは、こさめの額に短く口づける。
唇じゃないのに、心臓が跳ねる。
🎼☔️「……それ反則」
🎼🌸「まだ序盤」
今度は、ゆっくり。
確かめるみたいに、唇に触れるキス。
一瞬で離れたのに、余韻が消えない。
🎼🌸「ここまで」
🎼☔️「……毎回、それ言うよね」
🎼🌸「続きがあるって思えるでしょ」
こさめは返事の代わりに、そっとらんの服を掴んだ。
らんは驚いた顔をして、それから静かに笑う。
🎼🌸「雪、まだ止まないな」
🎼☔️「……止まるまで、一緒にいよ」
その言葉に、らんは小さく頷いた。
ツリーの灯りが揺れる中、
二人は触れない距離のまま、朝を待つ。
触れない時間の方が、
一番、甘かった。
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