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「俺と、彼奴が一緒だと?」
「あーえっと、えーっと」
確実に詰んだと思った。でも、この失態をどうにかカバーしようと必死に頭は言葉を探してくれていた。
(あー地雷分だ! 分かってる、これは確実に地雷!)
リースとアルベドが一緒、きっとリースには同類みたいに聞えたんだろう。それは、さすがに怒るだろうと、私は青ざめるしかなかった。この後なんて言われるか考えるだけでも恐ろしい。
そんな風にあたふたしていれば、リースは大きなため息をついた。
「何処をどう見たら、俺と彼奴が一緒に見えるのか……聞きたいところだが」
「だが?」
「……似ている部分はあるんだろうな、と自分でも思っているからな」
「へ、へえ……って、え!?」
まさかのリースの発言に私は耳を疑うしかなかった。
リースの口から、アルベドと自分は似ていると言ったのだ。そりゃあ、驚く以外何もないだろう。どういうことなのかとリースを見れば、心底嫌そうな顔をしていた。私と目を合わせないのは、その顔を見られたくないからなのか、せめての抵抗なのか。まあ、どちらでも良いんだけど、リースは自己理解をしっかりしているんだなあと感心してしまった。
(じゃなくて、そこじゃなくてね!)
「え、えっと、似てる?」
「そもそも、お前が言い出したんだろ……自覚があるって言ったんだ。似ている、同類の匂いがする。そんな気がしているから、俺は彼奴のことが嫌いなんだ」
「あの、怒らないなら……何処が似てるとか、聞いても?」
「答えたくはないな。俺の口から彼奴の話をしたくない」
「で、ですよねえ……」
さすがにそこまでは教えてくれないようで、リースはむすくれて言う。わかりきっていたことなので、別に落ち込むことも何もない。
私はそう考えながら、もう一度リースを見た。リースは結構素直になったし、嘘をつかないアルベドと共通点があるのかも知れない。そんな共通点とか、似たり寄ったりな部分を探していたら切りが無いけれど、だからこそ、これは使えると思ったのだ。
「ねえ、リース」
「何だ、エトワール。その、キラキラした目は」
「キラキラしてる? そんな風に見ては無いんだけど……」
リースが可笑しなことを言うので、自分で鏡を見て確認したかったが、生憎明りを付けていない状態な為、そもそも、互いの顔を見るのも目を凝らさなければならなかった。夜だし、明りを付けるのも何だかなあと思ってのことだったが、これはこれで良いんじゃないかとも。
と、それは置いておいても、ヘウンデウン教の事とか、こんな夜に話すないようじゃないかも知れないけれど、聞きたいことがあったのだ。
(何か使える手があるかも知れない……)
「あのね、リース。リースってユニーク魔法使える?」
「ユニーク魔法?」
「え、知ってるよね」
「ああ、勿論だ。だが、何故いきなりそんな話を?」
と、リースは不審がるように言う。確かに、何の脈絡もなしに言われたらそうなるのも無理はないが、私は聞いておきたかったのだ。アルベドもあるとはいってくれたけど、どんなユニーク魔法かは教えてくれなかった。
ブライトは、リースはユニーク魔法が使えるらしいと言っていたため、どんなものが使えるのか聞きたかったのだ。リースなら教えてくれる。そんな確信があった。
「そ、それで使えるの? 使えないの?」
「それは、今聞く話なのか?」
「うん。だって知っておいた方が良いじゃん。まあ、人にべらべら話せるようなものじゃないかもだけど、今後のために、参考に!」
「さ、参考にって……テストの対策みたいな」
リースは乗り気じゃないようで、若干引き気味な顔で私を見た。そんな顔されると、さすがに傷つく。
私はそんな感情も乗せながら、お願いとリースを見る。リースはようやく私と目を合わせ、そのルビーの瞳に困惑の文字を浮べながら私を見つめ返した。
「俺は、ユニーク魔法を使えない」
「え?」
「えって、何だ。教えただろう。もう良いだろう……」
「え、いやいや嘘でしょ!? だって、ブライト言ってたもん。リースは使えるって……ああ、断言じゃなかった。使えるらしいって言ってたのに。え、え? 嘘でしょ?」
そう私が見れば、リースは、恥ずかしいから見るなと言うように顔を覆った。
(待って、当てが外れたんですけど!?)
私の頭には疑問、疑問、疑問と埋め尽くされていって、ショートしかけていた。てっきり、リースは使えるものだと思っていた。皇族だし、攻略キャラだし。でも、使えないとなるとまた話は変わってくる。
(でも、確かにユニーク魔法的なものを使ったのって、ゲームの中では終盤の一回だけだったような……)
推しの事はしっかり把握しているはずなのに、何故かそこだけもやがかかってしまっていた。実際ユニーク魔法の名前も出ていないし、覚えていないのは仕方がないことなのだが、それでも何故か、はっきりと思い出せなかったのだ。もしかしたら、この世界的に知られたらあれだから、と転生するときに記憶を消されてしまったのかも知れない。そうとしか考えららレ無い。
まあ、それは良いとしても、使えないとはどういうことなのか。
「え、本当に使えないの? 微塵も?」
「何でそんなにショックを受けているんだ。受けるのはこっちだが……」
「でもでも、だって、リースだよ?」
「俺は使えて当然みたいな、その顔やめてくれ。傷つくだろう……」
そんな、少しよそよそしく言うリースを見ていると、これはマジな奴だと、私は肩を落とす。別に、使えないことがあれというよりかは、何というか期待外れみたいな。勝手に期待して、勝手に期待裏切られて落ち込んでいるだけなので、リースに非はないのだが。
暫くの沈黙の後、リースは何処か諦めたように口を開いた。
「使えないわけじゃないのだろうが……俺は、俺自身のユニーク魔法を把握していない」
「そ、それの方が意味分からないんですけど」
「俺もよく分からない」
と、リースは言う。
自分が分からないのに、ユニーク魔法を使えるというまた矛盾した言葉に私は何て返せば良いか分からなかった。結局使えないのか、使えるのかどっちなのかと。
どっちにしても、今は、ユニーク魔法に頼れないと言うことなのだろうか。
リースは、五元素だったら、火の魔法を得意としていたし、その得意に合わさるものなのだろうとは、予想が出来る。でも、彼自身分かっていないというなら、無理に引き出すのはダメだと思った。
ゲーム感覚になっているけれど、これは使えるか使えないかで、大きく今後の戦いにも関わる事だと。だって、あっちには、魔法を斬ることができる魔法を使うグランツがついてしまったのだから。
(じゃあ、ユニーク魔法も斬れちゃうじゃん……あんまり意味ないかも)
思えばそうなのだが、グランツが見切ることが出来なければ、ユニーク魔法を当てる隙はあると思ったのだ。
「そんなに必要なのか? ユニーク魔法が」
「え、ああ、うん……まあ、そうだね」
「戦いのためにか?」
「……嫌だけど、そういうこと。でも、使えなくてもリースが強いのは知っているし、頼りにしているから、ね!」
と、私はわざとらしく笑顔を作った。リースは、不満げに私を見た後、「そうだな」と素っ気なく返す。きっと何を言っても私に届かないと思ったのだろう。私も、何か言い返されなくてよかったなあと心底安心していた。
そして、何故か気になってしまったことを口走る。
「ねえ、リース。廻っていう名前の子……知らない?」
「廻? こっちの世界の住人じゃない……名前だな。あっちのか?」
「う、うん。そう。何か夢にその子の名前が出てきて、何か引っかかるの。何か忘れているような。忘れているというか、知らないといけないような」
そう私が言えば、リースは少し考えるような仕草をする。
まあ、リースに言ったところで、私の過去なんて知らないだろうから、何も言えないけれど。
「そういえば、エトワール……巡の両親だったか、墓参りにきているところは見たぞ」
「え?」