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「お前、それはどっちなんだ……。」
汗で額に張り付く前髪をリヴァイはそっとかき分けた。「んん…。」とソイツが寝返りをうつと自分でも無意識に頬が緩んでいるのが分かる。もちろん、女にこう触れるのは彼の趣味じゃない。実は随分と前からハンジ・ゾエに好意を寄せていた。何故好きになったかなんて自分自身でも分からない。ただ地下上がりのゴロツキを普通の奴として、他の奴と変わらず接してくるアイツに惹かれたのかもしれない。最初はハンジが変わっているから気になってしまうと自分に嘘を付いていたが、太陽のような笑顔、嘘偽りの無い心、真剣に物事に励む表情をいつのまにか目で追いかけていた。だが、恋愛という物がハンジを縛り付けてしまうのなら、とうてい言えやしない。こんな残酷な世界だ。変に気を取られて死なれてしまうよりかはマシだ。
「好きだと言えたら楽だがな…。」ナデ
ーパチ…
頭と喉が痛い 。医務室に鎮痛剤を取りに行くかな…。
「へっ!?リヴァイッ」手に温もりを感じると思ったらまさかの布団ではなく、人の手。リヴァイの手によってハンジの手が握りしめられていた。……寝ている。何故リヴァイがこんな行動を取っているのかは疑問だが、さっき思わず言ってしまった。
「ぎゅっとして。」と
「好きだよ……。」と
思い返せば完全にやってしまった。この先どう接していけば良いだろうか。せめて自分が熱をいいことに言ってしまったと捉えて欲しい。リヴァイのことだ。引くに決まっている。今まで自分が他人にどう思われようがどうでもよかった。でも、リヴァイと出会って、話して、共に戦ってきて、初めて自分をしっかり見て欲しいと思ってしまった。地面に落ちている下着も……この方法は良くなかったが少しは意識して欲しかった。まさか看病人がリヴァイだと知らなければこんな恥ずかしことはしていない。7年間…。一緒に過ごしたんだ。きっと想い人はこれ以降、この人しか居ない。口が悪くて中々伝わりにくい話し方をするけど、誰よりも強くて、優しくて、仲間想いな人だ。好きになってもしょうがないだろう?私みたいな男っぽい女に好かれても君はきっと嬉しくもなんともないだろうけど、陰でだけは好きでいさせてくれ。
「………リヴァイ、好きだよ。」
頭をそっと撫でて、リヴァイの手と自分の手を引き離そうとする。……が、パシッとまた手を掴まれた。
「!?…え、リヴァイ起きてたの?!?」
「…………お前が起きた時の気配でな。」
人類最強を完全に舐めていた。人の気配など感じ取れないはずがない。つまり、さっきの言葉を聞かれた。焦りと不安で一気に熱が上昇する。
「チッ、寝ろ。また上がってるじゃねぇか。」ソッ
「へ……?」
これは無意識でやっているのか。リヴァイが自分の頬に有り得ない程優しく触れている。こんな時、誰にでもやらないで欲しい、私にだけ。と、独占欲が出てしまう自分が嫌いだ。こんなの惨めじゃないか。顔を上げてリヴァイを見つめる。すると、リヴァイは私から目を逸らし、小声で、
「……何て顔してやがる。」
そこからは一瞬だった。何か唇に温かく、柔らかいものが触れていると思ったら、リヴァイの端正な顔が真正面にあった。次に甘い吐息が自分の鼻をくすぐる。……今、リヴァイにキスをされている。やっと脳が追いつくと急に恥ずかしくなって、それ以前に何故リヴァイが自分にキスをしているのかが分からなくてパニックになった。
「りば、んむっ」
リヴァイは少しずつキスの角度を変え、己の舌を侵入させ、ハンジを完全に溶かした。最後には二人の間に透明な糸がつくられる。
「ハンジ、よく聞け。」
後頭部を掴まれ、強く引き寄せられる。そこには真剣な顔をした今までとは違う男だった。
そんな目で私を見ないでくれ……。
蒼の混じった灰色の目はいつでも自分の心を捕らえてくる。まるで心を見透かされる気分になる。
「なぁ、ハンジ。」
低くて甘い声が耳元で囁かれると思わず身体が跳ねてしまう。
「な、なに……」
すると肩を抱き、男は言った。
「俺も好きだ。」
この一言で今まで熱を出していたことを思い出した。