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「蝋燭に火をつけ終えたら、明かりを消してくれ」

「あ、はい」

つっけんどんな物言いで命令し、ポケットからライターを取り出して、蝋燭に手際よく火を灯した。カールは言いつけどおりに、室内灯をすぐに消す。

五本の蝋燭のほのかな火が、俺の作ったシフォンケーキを明るく照らした。

「カール、誕生日おめでとう」

「ありがとうございます」

(俺の心に触れることができるのは、おまえだけなんだ。お願いだから、少しでもいいから、近づいてほしい――)

「ほら、火を吹き消せ」

「はい……」

カールはケーキに近づき、腰を屈めて蝋燭に息を吹きかける。五本の蝋燭の火が一気に消されると、真っ暗な室内に早変わり。俺の心を明るく灯してくれるカールが、まったく見えない。

「お待ちください、すぐに明かりを」

「つけなくていい。そのまま話を聞いてくれ」

「ですが――」

「互いの顔が見えないほうが、本音で話しやすいだろう」

相手の心が見えない分だけ、知ろうとしてくれると信じて、暗いままで話をすることを提案する。

「私からの話はございません」

「俺にはあるんだ。さっき途中で、ぶった切られたからな」

怒りを押し殺したが、どうにも口が悪くなってしまう。これからいろんな真実を語らなければならない立場ゆえに深呼吸をして、ちゃんと落ち着いてからカールに語りかける。

「俺は、伯爵家次期当主の座を退いた」

「退いたとは……それはいつ?」

暗闇の中から聞き取れるカールの声は、少しだけ震えていた。俺の告げた事実で、カールは傷ついたに違いない。

「先ほどのパーティーが終わってすぐ、父に許しを得た。まぁ二年前から交渉していたことだから、やっとって感じだったが」

「二年前⁉」

驚いた様子が声と一緒に、雰囲気で伝わった。

「どうしたらおまえとずっと一緒にいられるか、いろいろ考えていたんだ」

「なにを仰っているんです。こんな私よりも伯爵家当主のほうが、大事なことでしょうに」

「そんなものより、俺はおまえが大事なんだ」

「つっ!」

本当は好きだと言って、強く抱きしめたい。こんな短いセリフじゃなく、俺の想いをさらけ出すべく口にしたいのに、うまい言葉が見つからなかった。

「いろいろ考えても、埒が明かなくてな。それで南方にいる伯母様に、相談を持ちかけた」

「伯爵様の姉君、リーシア様でございますね?」

叔母様の話を聞き、すぐに名前が出てくるところが、有能な執事様らしい。

「俺のことを、実の我が子のようにかわいがってくれるお方だからな。相談したら父上の説得の仕方や恋愛について、あれこれご教示くださった」

相談に行ったときのことを思い出しながら、流暢に説明した。叔母様からSMの極意本を手渡されたことをカールが知ったら、間違いなく度肝を抜くだろう。

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72

コメント

2

ユーザー

下手したら、全部がご褒美になってしまいますw

ユーザー

SMとか、最高すぎる!!🥰

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