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×××がキルアとバスケ🏀中に
アレルギーで倒れちゃった⁉︎
パート2
それは、×××が学校に復帰したその日から始まった。
家を出る前。
「忘れ物ないな?」
「……ハンカチは?」
「エピペン確認。……もう一回確認」
「キルア、それさっきも見たよ」
そう言っても、キルアは真剣な顔のまま。
「“念のため”だ」
結局、登校中もずっと隣。
距離、ゼロ。
段差があれば手を伸ばし、
人が多ければ自然に前に立つ。
「……私、そこまで虚弱じゃないんだけど」
「俺が安心できねぇ」
即答だった。
⸻
学校に着くなり、ゴンが目を丸くする。
「えっ、キルア今日ずっと×××の隣じゃない?」
「当たり前だろ」
「授業中も?」
「当たり前だろ」
「休み時間も?」
「当たり前だろ」
ゴンは一度×××を見て、
一度キルアを見て、
にやっと笑った。
「……へぇ〜?」
×××は苦笑しながら小声で言う。
「ね、ちょっと過保護すぎない?」
「全然」
キルアはノートを取りながら、
片手でさりげなく×××の袖を掴んでいた。
まるで
ちゃんとここにいるか確認するみたいに。
⸻
昼休み。
「食べる前に体調どうだ?」
「変な感じしないか?」
「少しでも違和感あったらすぐ言え」
「水、飲め」
「……キルア」
「ん?」
「お母さんみたい」
一瞬固まってから、キルアはそっぽを向く。
「うるせー」
でも耳は赤い。
⸻
放課後も当然、一緒に帰宅。
玄関に入った瞬間、
「まず座れ」
「え」
「今日は疲れてるはず」
カバンを取られ、
ソファに座らされ、
お茶まで出てくる。
×××は思わず笑ってしまった。
「……過保護すぎて、逆に元気出るんだけど」
その言葉に、キルアは一瞬だけ目を細める。
「……笑ってくれるなら、それでいい」
⸻
その生活は、一週間続いた。
登校も、学校でも、帰宅後も、
視界から×××を外さないキルア。
ゴンは毎日言う。
「キルア、さすがにそれやりすぎじゃない?」
するとキルアは迷いなく答える。
「足りねぇくらいだ」
×××はそのやり取りを見ながら、
嬉しさと照れと、ちょっとした可笑しさで胸がいっぱいになる。
夜、並んで座っていると、
キルアがぽつりと言った。
「……もう平気そうだな」
「うん。キルアのおかげ」
そう言うと、キルアは少しだけ間を置いてから、
そっと肩を抱き寄せる。
「……また何かあったら、俺が守る」
近すぎる距離。
近すぎる温度。
×××は苦笑しながら、
でも幸せそうにその胸に寄り添った。
「過保護なところも、好きだよ」
「……それ言うな」
そう言いながらも、
キルアの腕は、さらにしっかり回された。
それからというもの。
キルアの過保護は、抜けなかった。
どころか、完全に生活の一部になった。
毎朝。
×××の家のインターホンが鳴る前に、
ドアの前にはもうキルアがいる。
「起きろ、×××」
カーテンを少し開けて、
まだ眠そうな×××を覗き込む。
「……おはよ」
「顔色よし。声よし。問題なし」
確認事項みたいに淡々と言うけど、
その目はちゃんと優しい。
「自分で起きれるってば」
「却下」
即答だった。
結局、髪を整えるまで隣にいて、
忘れ物チェックまでされてから登校。
——もはや毎朝のルーティン。
⸻
学校でも、相変わらず距離が近い。
席が隣なのは当然。
移動教室も当然一緒。
休み時間も、気づけば隣。
×××が立ち上がれば、
キルアも無言で立つ。
ゴンはそれを見て、ある日ついに言った。
「ねぇ……二人ってさ」
ニヤニヤしながら、指をさす。
「もう夫婦じゃん」
×××は笑いながら返す。
「やめてよ、ゴン」
でも——
キルアは、
まったく照れなかった。
「……何が?」
真顔。
「朝一緒に起きて、
一緒に登校して、
学校でもずっと一緒で、
帰ってからも一緒でしょ?」
ゴンが畳みかける。
「それ、夫婦じゃん!」
キルアは少し考えてから、
本当に不思議そうに首を傾げた。
「……当たり前じゃねぇの?」
×××もゴンも、完全に固まった。
「え?」
「いや、×××の体調見るのも、
そばにいるのも、普通だろ」
本気の顔。
照れも動揺も、一切なし。
ゴンは思わず声を上げる。
「キルアが!照れてない!!」
「え、そこ?」
「そこだよ!!」
×××は思わず吹き出した。
「キルア、ほんと変わったよね」
そう言うと、キルアはちらっとこちらを見て、
ほんの少しだけ口元を緩める。
「……変わってねぇよ」
「大事なもんが、はっきりしただけだ」
その言葉に、×××の胸がじんわり温かくなる。
ゴンは二人を見比べて、
肩をすくめた。
「……もう何言っても無駄そうだね」
「正解」
キルアは当然のように×××の手首を掴む。
「次、移動教室だろ」
「はいはい」
そう返しながら、
×××は少し照れた顔で歩き出す。
——過保護で、べったりで、
でもそれが自然で、幸せで。
周りが驚くほど、
キルアにとっては「当たり前」な毎日だった。
最近のゴンは、
二人を見る目がちょっと違った。
「……ねぇキルア」
昼休み、×××が席を外した瞬間。
ゴンは腕を組んで、じっとキルアを見る。
「なに」
「それ、さすがにやりすぎじゃない?」
キルアは首を傾げる。
「どれ」
「×××が立つたびに一緒に立つとこ」
「水飲んだか三回聞くとこ」
「保健室の場所、毎日確認してるとこ」
指折り数えられても、キルアは平然。
「必要だからな」
ゴンは深くため息をついた。
「……あのさぁ」
そこへ×××が戻ってくる。
「どうしたの?」
ゴンは×××を見て、
急に声のトーンを落とした。
「体調は? 無理してない?」
キルアと同じことを言っている自分に気づき、
一瞬固まる。
「……あれ?」
×××はくすっと笑った。
「ゴンまでキルアみたいなこと言ってる」
「えっ」
ゴンははっとして、
キルアを見る。
キルアは無言で、
「そうだろ?」みたいな顔をしていた。
⸻
放課後。
三人で歩いていると、
キルアは自然に×××を内側に寄せる。
するとゴンが、
無意識に反対側へ回った。
「……あ」
三人同時に止まる。
ゴンは気まずそうに頭をかく。
「いや、その……車来てたから」
キルアは一瞬ゴンを見て、
ふっと小さく笑った。
「……お前も、保護者だな」
「え?」
「同じこと考えてた」
ゴンは一拍置いてから、
観念したように笑う。
「……もうさ」
「二人まとめて守る側になるしかない気がしてきた」
×××は目を丸くする。
「え、ゴンまで?」
「だってキルア、
×××のことになると周り見えなくなるでしょ」
「……否定できねぇ」
即答。
ゴンはその返事にちょっと驚いてから、
優しい目で×××を見る。
「でもね」
「それだけ大事にされてるって、
ちゃんと伝わってる?」
×××は少し照れて、
でもはっきり頷いた。
「うん。すごく」
その様子を見て、
ゴンは満足そうに息をつく。
「じゃあ、いいや」
「過保護でも、べったりでも、
二人が幸せなら」
キルアはちらっとゴンを見る。
「……ありがとな」
「なにその顔」
「完全に親じゃん」
「自覚あるよ?」
ゴンは笑って、二人の背中を押した。
「ほら、帰るよ。
ちゃんと送ってあげなよ、キルア」
「言われなくても」
そう言って、
キルアは自然に×××の手を取る。
ゴンは少し後ろを歩きながら、
その様子を見て、ぽつり。
「……ほんと、
大きくなったなぁ」
「なにか言った?」
「なんでもない!」
夕焼けの中、
ゴンは完全に見守る側になっていた。
——二人が並んで歩く、その背中を。
最近、×××はふと立ち止まって考えることが増えた。
学校の廊下でも、
教室でも、
休み時間でも。
気づけばいつも、キルアがすぐそばにいる。
半歩前に立って、
視線は周りを確認して、
まるで——
(……ボディーガードみたい)
誰かが近づけばさりげなく位置を変えて、
人が多ければ自然に距離を詰めてくる。
それが嫌なわけじゃない。
むしろ、安心する。
でも。
(私、守られすぎじゃない?)
(甘やかされすぎ……?)
そんな考えが、胸の奥に引っかかる。
⸻
昼休み、ゴンがぽつりと呟いた。
「相変わらず、二人くっついてるね」
「……そうかな」
そう返しながらも、×××はキルアを見る。
今も、無意識みたいな顔で隣に座って、
飲み物を自分のほうへ引き寄せている。
「……キルア」
「ん?」
「私さ……」
言いかけて、少し迷う。
「私、ひとりでも平気だよ?」
その瞬間、キルアの動きが止まった。
ゆっくり、×××のほうを見る。
驚いた、というより、真剣な目。
「……知ってる」
即答だった。
「×××が弱いとか、思ってねぇ」
その言葉に、×××は少しだけほっとする。
「でもな」
キルアは視線を逸らして、
低い声で続けた。
「守れるなら、守りたい」
「甘やかしてるって言われても、
そばにいられるなら、それでいい」
あまりにも素直で、
不器用で。
×××の胸が、きゅっとなる。
「……重くない?」
恐る恐る聞くと、
キルアは小さく笑った。
「重いなら、やってねぇ」
そう言って、×××の手にそっと触れる。
「嫌なら、言え。ちゃんと聞く」
その一言で、
×××の悩みはすっと軽くなった。
「……嫌じゃない」
「むしろ、嬉しい」
そう正直に言うと、
キルアの表情が一気に緩む。
「なら、問題ねぇな」
⸻
その様子を少し離れたところで見ていたゴンは、
腕を組んでうんうん頷いた。
「うん。話し合えてえらい」
「完全に保護者の感想じゃん」
×××が言うと、ゴンは笑う。
「だってさ、
守る側も守られる側も、
ちゃんと納得してるならいいんだよ」
キルアは当然のように言った。
「俺は×××の味方だ」
「ボディーガードでも、なんでもいい」
×××は苦笑しながら、
でも幸せそうにその腕に寄り添う。
(守られすぎかもしれないけど)
(それ以上に、大切にされてる)
そう思えたから。
二人は今日も、
並んで、同じ歩幅で歩いていった。
昼休み。
いつものように、キルアと×××は並んで座っていた。
距離は近い。
近すぎるくらい。
そこへ、ゴンが何でもない顔で言った。
「ねぇ」
二人同時に顔を上げる。
「そろそろ、付き合えば?」
——一瞬、時間が止まった。
「……は?」
キルアの声が裏返る。
×××は一瞬で顔が熱くなる。
「な、なに急に……!」
「急じゃないよ?」
ゴンはきょとんとした顔。
「だってさ
朝一緒に来て
学校でもずっと一緒で
帰りも一緒で
体調管理までしてて」
指を折りながら、
「それ、もう付き合ってるでしょ?」
沈黙。
キルアは視線を彷徨わせ、
耳まで真っ赤。
「……っ、ち、違……」
「ちが……わなくは……」
×××も言葉に詰まる。
二人とも、
否定しきれない。
ゴンは首を傾げる。
「え?」
「じゃあ……付き合ってないの?」
その瞬間。
「「え?」」
重なった声。
——教室のあちこちから。
実はその会話、
完全に筒抜けだった。
前の席の女子、
後ろの席の男子、
窓際グループ、
廊下にいたクラスメイトまで。
全員が一斉にこちらを見る。
「……付き合ってなかったの!?」
「うそでしょ!?」
「もう夫婦だと思ってた!」
「保健室公認カップルじゃん!」
ざわっ。
×××は固まる。
「え、あの、ちが……」
キルアは一瞬フリーズしてから、
勢いよく立ち上がった。
「……っ、うるせぇ!!」
顔、真っ赤。
ゴンは目をぱちぱちさせてから、
ゆっくり納得したように頷く。
「あー……なるほど」
「二人とも、
自覚がないタイプだ」
クラスの女子がにやにやしながら言う。
「じゃあ今日から公認ね」
「もう扱い変えないから」
「席もこのままでいいよね?」
男子も口々に。
「誰も割り込まないから安心して」
「守備固すぎて入れねーし」
×××は完全に顔を覆った。
「ちょ、ちょっと……!」
キルアは×××を見る。
照れてる。
でも、嫌そうじゃない。
少しだけ迷ってから、
キルアは小さく言った。
「……別に、否定する理由もねぇし」
×××がそっと顔を上げる。
「キ、キルア……?」
キルアは視線を逸らしながら、
でも手は自然に×××の手を握った。
「……守るのは変わんねぇから」
その瞬間、
「「はい決まり〜!」」
クラス全員、拍手。
ゴンは満足そうに笑った。
「よし。
今日から二人は
**公認カップル(未定義)**ね」
「未定義ってなに!?」
でも誰も気にしていない。
それから。
席替え? → 常に隣。
移動教室? → セット。
昼休み? → 二人席確保済み。
誰もからかいすぎない。
誰も邪魔しない。
ただ、温かく見守られる。
×××は小さくため息をついて、
キルアに囁いた。
「……もう逃げ場ないね」
キルアは照れたまま、
でも少し嬉しそうに答える。
「……悪くねぇだろ」
その手は、
前よりもしっかりと繋がれていた。
——付き合ってるかどうかはさておき。
クラス全員にとって、
二人はもう立派なカップルだった。
教室は、まだざわざわしていた。
「公認だよね」
「もう付き合ってるでしょ」
「いや、正式じゃないらしい」
そんな声があちこちから飛び交う中、
キルアはずっと黙っていた。
×××の手を握ったまま。
ぎゅっと。
逃がさないみたいに。
×××はその横顔を見て、少し不安になる。
(……もしかして、困ってる?)
そう思った、その瞬間。
「……もうさ」
キルアが、顔を上げた。
教室が、しん、と静まる。
「周りがどう思ってるとか、
正直どうでもいい」
一拍置いて、
キルアは顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「もうそういうことでいいだろっ!!」
どん、と心臓を叩く音みたいに響く。
「俺は×××が好きだし、
守るのも一緒にいるのも、
最初からそのつもりだった!」
一瞬の沈黙。
次の瞬間——
「「うわああああ!!!」」
「公開告白きた!!」
「ついに!!!」
教室、大騒ぎ。
×××は一瞬呆然としてから、
すぐに笑顔になる。
胸がいっぱいで、
でも迷いはなかった。
「……うん」
そう言って、
両手でキルアの手を握り返す。
「私も、キルアが好き」
「一緒にいたい」
キルアの目が、はっきりと見開かれる。
「……いいのか」
「いいに決まってる」
そう言った瞬間、
「「おめでとーー!!!」」
「拍手!!拍手!!」
「やっとかよ!!」
拍手、歓声、机を叩く音。
ゴンは満面の笑みで親指を立てた。
「はい、成立!」
「保護者として安心しました!」
「保護者言うな!」
でもキルアの声は、
どこか嬉しそうだった。
×××は照れながら言う。
「……キルア」
「ん?」
「これからも、守ってくれる?」
キルアは少し照れて、
でも真剣に頷く。
「当たり前だ」
「でもな」
そう言って、
×××の頭にそっと手を置く。
「守られるだけじゃなくて、
一緒にいろ」
その言葉に、×××の目が潤む。
「うん……!」
教室は、
完全に祝福ムードだった。
誰も冷やかさない。
誰も邪魔しない。
ただ、
「よかったね」
「お似合いだよ」
そんな声が、優しく飛び交う。
キルアは×××の手を離さず、
少しだけ胸を張った。
——もう隠す必要はない。
守りたい人を、
堂々と好きだと言える。
それだけで、
世界が少し明るく見えた。
正式に「付き合ってる」って空気になった翌日。
教室に入った瞬間、
×××は違和感を覚えた。
……静かすぎる。
いつもなら誰かしら話しかけてくるのに、
今日はみんな、ちらっとこちらを見てから
そっと視線を逸らす。
席に着くと、前の席の女子が小声で言った。
「……おはよ」
「お、おはよう?」
その声がやけに丁寧。
キルアが席に着いた瞬間、
後ろの男子が慌てて机を引く。
「ご、ごめん!近かったよね!」
「……別に?」
キルアはきょとん。
×××は小さく囁く。
「ねぇ……なんか、みんな距離取ってない?」
「……気のせいじゃねぇ?」
そう言いながらも、
キルアの周りだけ謎の安全地帯ができていた。
⸻
休み時間。
誰も割り込んでこない。
席を移動しようとすると、
「そこ、二人で座るでしょ?」
「空けといたよ」
自然にカップル席が用意される。
昼休みには、
いつの間にか二人の机の周りに人が集まる。
でも——
近づきすぎない。
騒がない。
冷やかさない。
「体調どう?」
「無理してない?」
完全に見守り隊モード。
ゴンはそれを見て、
腕を組みながらうんうん頷く。
「うん、いいクラスだね」
「なんで保護者目線なの」
⸻
放課後。
×××が少し疲れた顔をすると、
それを見た女子が即反応。
「今日は早く帰ったほうがいいんじゃない?」
「キルア、送ってくよね?」
「言われなくても」
キルアは即答。
すると男子が真顔で言う。
「……じゃあ俺ら、遠回りするわ」
「え?」
「邪魔しないように」
×××は思わず吹き出す。
「そんなに気使わなくていいよ!?」
でもみんな、にこにこしている。
「いいのいいの」
「二人見てると和むし」
「安心する」
キルアは小さく呟く。
「……なんか、扱いが貴重品だな」
「それな」
⸻
帰り道、二人きりになってから、
×××は少し照れた声で言った。
「……なんかさ」
「公認になったら、
逆にみんな優しすぎない?」
キルアは少し考えてから、
肩をすくめる。
「大事にされてるってことだろ」
「俺も、だけど」
そう言って、
×××の手を自然に握る。
「嫌か?」
×××は首を振った。
「……ちょっと恥ずかしいけど」
「でも、嬉しい」
その言葉に、
キルアは安心したように笑う。
「なら、いい」
夕焼けの中、
二人は並んで歩く。
後ろから、
誰かが小さく言った。
「……ほんと、
丁寧に扱いたくなるカップルだよね」
キルアは聞こえないふりをして、
×××の手を、少しだけ強く握った。
——守るのも、甘やかすのも、
もう隠す理由はなかった。
それは、キルアと×××が知らないところで始まっていた。
放課後の教室。
「……ねぇさ」
黒板の前で、女子が小声で切り出す。
「二人さ、付き合ったはいいけど
ちゃんとデートしてなくない?」
「してないよね」
「毎日一緒にいるけど、あれ日常すぎる」
男子が腕を組む。
「じゃあさ……
ちゃんとしたデートさせたくね?」
一瞬の沈黙。
次の瞬間——
「それだ!!」
満場一致。
⸻
問題は、どうやって二人をその気にさせるか。
「キルア、自分からは言わなそう」
「×××も遠慮しそう」
そこで誰かがぽつり。
「……先生なら?」
一同、ゆっくりと教卓のほうを見る。
ちょうどそこに、担任が入ってきた。
「何だ、その全員そろって
悪いこと考えてそうな顔は」
一瞬でバレた。
でも事情を説明すると——
先生は少し考えてから、
眼鏡を押し上げて言った。
「……なるほど」
「では、偶然を装うか」
「「先生!?」」
⸻
翌日。
「今日は放課後、
クラス活動の一環で早めに解散する」
担任の一言に、
教室がざわつく。
「え、部活は?」
「今日はなしだ」
キルアは×××を見る。
「……珍しいな」
「ね」
その時点で、
もう罠は張られていた。
⸻
放課後。
キルアと×××が校門を出ようとした瞬間、
クラスメイトが一斉に動く。
「キルア!」
「×××!」
「今日、寄り道しない?」
「駅前でイベントやってるらしいよ?」
「え?」
二人が戸惑っていると、
後ろから先生の声。
「ちょうどいいな」
「二人で行ってこい。
感想文はいらん」
「先生!?」
先生はにっこり。
「公認カップルの校外学習だ」
完全に逃げ道なし。
⸻
駅前。
イベント会場は、
クラスの誰かが事前に調べていたらしい。
屋台、ゲーム、ちょっとしたイルミネーション。
×××はきょろきょろする。
「……これ、もしかして……」
キルアも察した。
「……仕組まれてんな」
でも。
×××が少し照れた顔で言う。
「……嫌じゃないけど」
その一言で、
キルアの警戒心は一気に溶けた。
「……じゃあ、デートってことで」
言いながら、
手を差し出す。
×××は嬉しそうに、
その手を取った。
⸻
一方その頃。
クラスのグループチャット。
「無事合流確認」
「手つないだ」
「尊い」
先生まで一言。
「節度を守れよ」
「先生ノリノリじゃん」
「保護者代表すぎる」
⸻
夜、帰り道。
「……ねぇキルア」
「ん?」
「みんなに、
大事にされてるね」
キルアは少し照れて、
でもはっきり言う。
「……それ以上に、
俺が大事にしてる」
その言葉に、
×××は胸がいっぱいになる。
遠くで、
誰かが小さくガッツポーズしていた。
——クラス公認。
先生公認。
二人の初デートは、
完全バックアップ付きだった。
イルミネーションは、思った以上に綺麗だった。
白と青の光が、静かに瞬いて、
人の声も少し遠くなる。
「……すごいね」
×××がそう言うと、
キルアは小さく頷いた。
「……だな」
普段なら軽口のひとつも言いそうなのに、
今は妙に静か。
光に照らされた×××の横顔を見て、
キルアは少しだけ息を吸った。
「……×××」
「なに?」
呼ばれて振り向いた、その距離が近くて。
一瞬、時間が止まる。
キルアは照れたまま、
でも迷わず、そっと顔を近づけた。
👄
💋
一瞬だけ。
触れるだけの、優しいキス。
×××は目を見開いて、
次の瞬間、ふわっと笑った。
「……キルア」
キルアは耳まで真っ赤。
「……嫌だったら言え」
「言うわけないでしょ」
二人で、同時に照れる。
——と、その時。
「📸」
小さく、でも確実なシャッター音。
「……ん?」
キルアが振り向いた瞬間、
街路樹の影から、
満面の笑みのゴンが親指を立てていた。
「見守り隊隊長として、
決定的瞬間、確保しました!」
「ゴン!!!!」
⸻
数分後。
【クラスグループチャット】
ゴン:
「※公認カップル・初デート報告※」
📷
(イルミネーション×シルエット×キス)
既読:一気に増える。
「え?????」
「うそ!!!!」
「尊い!!!!」
「公式すぎる!!!!」
「保存した」
×××のスマホが震え続ける。
「……ねぇキルア」
「見るな」
「もう見ちゃった……」
キルアは頭を抱えた。
「……あいつ、仕事早すぎだろ」
⸻
翌日。
昼休みの教室。
黒板には、
なぜか大きく書かれていた。
【本日の議題】
キルア&××× デート報告会
「誰が書いた!!」
「先生です」
「先生!?」
担任は平然としていた。
「報告義務があるだろう。
クラス公認なんだから」
×××は完全に顔が赤い。
「ほ、報告って……」
ゴンが司会席(勝手に)に立つ。
「では見守り隊より質問です」
「キスは何秒でしたか?」
「却下!!」
「イルミネーション、どんな気持ちでしたか?」
×××は恥ずかしそうに、でも正直に答える。
「……嬉しかった、です」
「よし!!」
拍手。
キルアは腕を組んで、
ぶっきらぼうに言った。
「……大事にしてる」
それだけ。
でもそれで、
教室はまた拍手に包まれた。
「はいはい、ごちそうさま!」
「次は写真撮るとき声かけてね!」
先生がまとめに入る。
「以上、
順調な交際報告でした」
「授業始めるぞ」
×××は机に突っ伏した。
「……もう一生からかわれる気がする」
キルアは小さく笑って、
机の下でそっと手を握る。
「……俺は、悪くねぇ」
「……うん」
イルミネーションの光みたいに、
二人の時間は、
クラス中に明るく広がっていた。
to be continued….